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#26

「やっぱり、船も魔力体か……」


 俺、真田、伊達、アレックス、シーナの五人は、幽霊船の中へ乗り込んでいた。消耗の激しいエミリーとロッキーは、船の外で待機だ。


「なんで分かるの?」


 リボルバーを構えて隣を歩く真田が、不思議そうに訊ねてくる。


「船が揺れてないだろ?それって、波の影響を受けてないって事だよ。そんな船、普通は有り得ないんだけど、魔力体なら物理的な影響をほとんど受けないからね」


 魔力体は物質化と違い、魔力が込められてない物体の影響は受けない。刃や銃弾が効かないのと同じ様に、波のぶつかる力が透過してしまうのだ。もちろん、海水にもマナが含まれているので、ほんの少しは影響を受けるのだが、船が大きいためにほとんど揺れていない。


「ふうん。よく分からんな」


 真田はこちらの世界でこそ、勇者の仲間として魔物と戦っているが、元の世界では魔法だの魔力だのという事に全く関係無い仕事に就いている。腑に落ちないのも仕方ないだろう。


「それにしても、幽霊船の中にしては明るいよね」


 伊達の言う通り、船内には所々にランプの様な光源があり、それなりに明るかった。遊園地のお化け屋敷の中みたいに、先が見えない程に暗いという事は無い。


「もとになった船の記憶のせいかもしれない」


 アストラル体は、ある意味では記憶という情報の塊なので、呪いの発生源になった者の船に関する記憶が再現されている可能性がある。


「何にせよ、明るいのは助かるけどね」


 後ろから言葉と共にライターの着火音が聞こえてきた。伊達がタバコに火を着けたのだろう。敵はアストラル系だから、こちらの気配に反応するので、タバコの匂いも喋り声も気にする必要は無い。


「怖いくらい静かですな……。乗り込んだ途端に襲われるものと思っておりましたが……」


 アレックスが怪訝そうに言った。


「そうね……。静か過ぎるわね……」


 シーナだけでなく、俺達も同意見だ。船に乗り込んでから、敵の動きが全く無いのが不気味に感じられる。


「たしかにそうだけど、襲って来ないんだから、今のうちに明智達を見付けちゃおうよ」

「そうだな」


 真田の提案が、現状で考えられるベストの選択肢だろう。それに、船内を探し歩いていれば、いつかは敵とも遭遇するはずだ。


「あそこに階段が見えますな」


 アレックスが見付けた階段は、上階と下階の両方へ行けるものだった。


「どうする?二手に分かれる?それとも、全員でどちらかへ進む?」


 伊達が紫煙を吐き出しながら、全員の顔を見回す。


「上も下も、どっちも怪しいよね……」


 真田は腕を組んで、難しい顔をしている。船を操る施設等は甲板より上にあるのが一般的だが、下層階にあるだろう船倉にも何か重要なものがある可能性は高い。


「二手に分かれた方が効率は良いわよね」

「ダメだ。それは、どちらかが襲われて全滅するのがお約束だから」


 二手に分かれる案を推すシーナを止める。仲間を探しに敵地へ侵入したのに、分散するのは得策では無いし、何より危険だ。


「なによ、それ……」


 シーナは少しだけ不満そうな表情をすると、腰のポーチからシガリロを一本取り出して咥えた。


「俺達の故郷では、アストラル系やアンデッド系の魔物と遭遇した場合、単独行動を取ったり、分散して行動すると死ぬっていうジンクスがあるんだよ」


 そう説明しながら、使い捨てライターをコートのポケットから取り出し、シーナの咥えているシガリロに火を着ける。愛用のライターは、無くしたり壊したりしたくないので、戦闘の可能性がある時は使わない。


「嫌なジンクスね……」


 シーナは、一呼吸分の紫煙を吐いてから呟いた。俺は苦笑いして、ポケットからシガリロの缶を取り出す。


「じゃあ、全員で動くって事でいいね?」


 俺とシーナのやり取りが終わったタイミングを見計らって、真田が纏めた。俺は真田に向かって頷きながら、シガリロに火を着ける。伊達とアレックスも異論は無いらしく、反論はしない。


「どっちへ行くか決めようか」


 俺達の反応を確認すると、真田は階段の方へ視線を向けた。

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