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#25

「ボートで乗り込むなんて、大丈夫なの?」


 港でボートを借りる事はできたが、ロッキーを連れて行くわけにはいかないのと、ボートの定員の問題で、メンバーを分けなければならなかった。回復魔法で傷が癒えているとはいえ、あれだけの血を流したのだ。安静が必要だろう。


「大丈夫じゃないと思うけど、他に乗り込む方法も無いんだよね……」


 真田の疑問に、伊達が答えている。真田の心配は、もっともだ。観光地の遊覧船よりも大きな船に、公園の池なんかにある様な手漕ぎボートで接近する事自体が危険を伴う。しかも、俺達は特殊部隊の様にゴムボートで強襲をかける訓練も積んでいなければ、相手の船も普通では無い。


「明智達が乗り込んで無ければ、船の横っ腹に風穴を開けて、沈めてしまう手もあるんだけどね……」


 俺の霊力による攻撃をフルパワーで放てば、船体に穴を開ける事は可能なはずだ。しかし、船を破壊して沈めてしまうと、乗り込んでいる明智とミナが危険だし、位置も確認できていないから、万が一という事もある。


「あの、サナダさん達の世界には、船は無いんですか?」


 エミリーが控えめに発言した。何か考えでもあるのだろうか?


「あるけど?」

「じゃあ、それは使えないんでしょうか?」


 エミリーの意図が分かった。エミリーは、俺達が自動車を持ち込んでいるから、船も持ち込めないのかと言いたいのだろう。たしかに、モーターボートやクルーザーを使えば、作戦の安全性と確実性は増す。しかし、それには大きな問題があった。


「俺達の世界の船を持ち込んだとしても、誰も操れないよ」

「え?そうなんですか……」

「いや、ナイスアイデアなんだけどね」


 俺達の中には船舶免許を持っている人間は居ないのだ。誰もモーターボートの運転の仕方を知らない。

 ガックリと肩を落とすエミリーを、真田が慰めている。


「それに、ボートで近付けたとして、どうやって中に乗り込むんだよ?」

「幽霊船の壁を登って、甲板まで行くしかありませんな」


 アレックスが両腕の上腕に力こぶを作って、真田に見せた。真田が溜め息を吐いて、こちらを向く。


「腕力で登ろうなんて考えてないよ。そんなのアレックス以外には無理だから。ボートを横付けしたら、壁を破って潜入する」

「なんですと!」


 俺の答えに、真田ではなくアレックスが声を上げた。


「そんな事をしたら、船が沈むかもしれませんぞ!」

「たぶん、大丈夫だよ。パイレーツセブンが魔力体だったんだから、船も同じだと思う。壁に穴開けても、自動修復するでしょ」


 悪霊の仲間は、大体、悪霊だ。幽霊船なんてのは、船の悪霊の可能性が高い。それなら船体も魔力で出来ているはずだし、魔力が尽きるまでは自動修復するはずだ。現に、パイレーツセブンのメンバーは、傷が再生していた。


「ボート、使わなくても良さそうだよ」


 突然、伊達が俺の肩を叩いてから、港の方を指差す。そちらへ視線をやると、幽霊船が桟橋に横づけされていた。


「おいおい、さっきまでの話し合いの意味無いじゃん」


 真田の言う通り、話し合いは全く無意味になってしまったが、桟橋から乗り込めば良いので問題は解決だ。


「明らかに罠だよね」


 伊達は苦笑いしながら、タバコに火を着けている。たしかに、こんな都合の良い展開は、俺達を誘い込む罠としか考えられない。警戒するのが当たり前だ。


「だろうね。でも、せっかくの豪華客船へのご招待、無下に断るのも悪いでしょ?」


 しかし、たとえ罠だとしても、俺達は乗り込むしかない。明智とミナが、あの中に居るのだから。


「豪華客船にご招待なら、ついでにディナーも付けて欲しいよねぇ」

「何言ってんだよ。あんな船で出された食事なんて、食べられないよ。腐ってそうじゃん」


 伊達の軽口に、真田も苦笑いをして返した。嫌そうな顔をしながらも、乗り込む気なのだろう。リボルバーのシリンダーを解放して、弾を確認している。


「じゃあ、ご招待を受けるって事で良い?」


 そう言って見回すと、伊達と真田だけでなく、全員が頷いた。

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