#24
「ホントに幽霊船って感じだな…」
灯台の方へと戻った俺達は、明智の言う幽霊船をすぐに見付ける事ができた。灯台から見えるぐらい近くに、黒いオーラを霧の様に纏った大きな船が停泊していたのだ。
「で、どうやって中へ入る?」
「問題は、そこなんだよなぁ…」
船が停泊しているのは、海岸から少し離れたところなので、乗り込むにはボートにでも乗っていくしかない。泳いで行くのは危険な上に、俺自身、水泳は苦手だ。伊達の質問に対するアイデアが思い付かなかった。
「ここらに見当たらない事を考えると、明智はすでに乗り込んでるんだろうし」
伊達はイライラしてるのか、タバコを取り出し、火を着けている。
「港へ行って、小舟を借りますか?」
「そうだねぇ。それしかないか…」
アレックスの提案に、伊達が渋々と言った感じに同意した。
「じゃあ、とりあえず、港の方へ向かうおうか。途中で真田達とも合流できるだろう」
仮にだが方針が決まったので、動き始める事にする。時間が経つ程、明智達の危険が増すからだ。
「そうだね。途中で襲われたら、その時に対処すればいいか。倒せる事は分かったわけだし」
伊達がタバコを携帯灰皿に捨て、歩き出した。アレックスもそれに続く。
「真田にも状況をメッセージしておくか」
港方面へ歩きながら、スマホを取り出して、真田へメッセージを送った。すぐに合流するのだから直接話してもいいのだが、同じ内容を明智にも同時に送信しておけば、手間が省ける。
「真田達が居たぞ」
先頭を歩く伊達が指差した先に、真田が立っていた。横たわっているロッキーの側に、エミリーとシーナが居る。魔法を使っているらしく、ロッキーの腹の辺りに強い光が輝いていた。
「大丈夫なのか?」
魔法をかけているエミリーに声をかける。光の強さからすると、かなり強力な魔法の様だが、傷口に届くあたりで光が拡散して弱くなっていた。
「ダメです!瀕死の時に使う魔法でも、出血を抑えるのが精一杯で…」
エミリーも消耗しているのだろう。額には汗が浮かび、息もあがっている。このままでは、エミリーの魔力が尽きるのは時間の問題だ。
「ダメ元で俺がやってみよう」
エミリーと場所を代わり、一度目を閉じて意識を切り替え、目を開いてロッキーの傷口を視る。霊視してみると、傷口から黒いもやが溢れていた。
「こいつは酷いな…」
「へへっ、俺はもうダメそうか?」
真っ白な顔色のロッキーが、力無く笑う。
「お前のしぶとさ次第かな」
傷口へ右手をかざして、掌に霊力を集中させると、掌が輝き出した。光を纏った右手で傷口から溢れる黒いもやを掴む。
「いけそうだ」
黒いもやは呪いそのものなので、霊体や霊的な存在なら触る事が可能だ。もちろん、幽体離脱の様に霊体を外に出して、直接、触れば危険なので、そんな事はしない。霊力を手袋代わりに纏えば、それで事足りる。
「ロッキー、ちょっと頑張れよ?エミリー、俺が合図したら傷口に浄化系の魔法をかけてくれ」
「おう…」
「分かりました!」
「じゃあ、いくぞ」
二人の返事を聞いて、掴んでいた黒いもやを傷口から一気に引き抜いた。
「ぐっ…!」
ロッキーは歯を食いしばって耐えている。
「エミリー、今だ!」
「はい!」
俺の合図で、エミリーが浄化系の魔法をロッキーの傷口に放った。傷口の周辺が光に包まれる。光が弱まる事は無い。
「これで回復魔法も効くはずだから」
それだけ伝えると、ロッキー達から少し離れた。次は、右手に掴んでいる呪いを始末しなければならない。
「さて…」
右手の掌に、さらに霊力を集中させる。今度は、火の属性の霊気を。霊的な炎で、呪いを灼き尽くすのだ。
「燃え尽きろ」
掌に発生した、俺達の世界であれば不可視の赤い炎で呪いを灼く。炎に包まれた黒いもやは、少しずつ光の粒子へと分解されて消えていった。何の属性も持たないマナへと還元されたのだ。
「さて、あとは明智の方か…」




