#13
「音を立てるなよ?」
俺が小声で言うと、真田とアレックスが頷くのが見えた。他のメンバーは背中側なので分からないが、誰も声を出さないので意図は伝わっているのだろう。
足音がどんどん部屋に近付いて来る。
「撃てぇ!」
突然、明智の怒鳴り声とフルオートの銃声が響いた。続いて、窓ガラスの割れる音もする。
「中に入れるなぁ!」
再び、明智の怒鳴り声が響き、金属制の物を床に落とした様な音も聞こえた。フルオートの銃声が止んでいるから、スペクトラのマガジンを交換しているのだろう。
伊達のワルサーだと思われる銃声が、散発的に聞こえる。
背後で起こっている事は気になるが、振り向く事はしない。こちらはこちらでドアの向こう側を警戒しなければならないからだ。今のところ、廊下から聞こえていた足音は消えている。しかし、悪霊の気配はすぐ近くにある。
「ドアの向こうに居ますな」
アレックスがメリケンサックをはめた拳を握り締めた。
「様子を伺ってるんだろうね」
真田は大口径の大型リボルバーをドアへ向けている。
「銀の弾頭の9mmで、このドアを抜けると思う?」
「さぁ?俺に聞かれても」
「だよね」
真田は、俺達の中では銃器にあまり興味が無い方なので、弾頭の種類による威力の差までは分からない。徹甲弾が貫通力に優れているという事くらいは知っているだろうが。
「試してみるか…」
「それなら、俺がやるよ」
言うが早いか、真田はリボルバーの引き金を引いた。部屋に雷鳴の様な轟音が鳴り響き、聴力が一時的に麻痺する。
真田の連射でドアには六つの大穴が開き、穴の向こうに人影が見えた。穴越しに人影を狙って、右手の拳銃だけを撃つ。両手の拳銃で同時に二つのターゲットを狙うなんて真似は、俺にはできない。
人影は、すぐにドアの横の壁に隠れてしまったので、当たった可能性は低いだろう。
「逃がすかぁ!」
「待て!追うな!円から出ちゃダメだ!」
背後から聞こえた明智の声に、思わず振り向き、制止する。
「こっちも逃げられた様ですな」
アレックスの言う通り、ドアの向こうには人影は無く、悪霊の気配も遠ざかって行く。
「とりあえず、第一ラウンドは引き分けかな」
伊達はそう呟くと、ポケットから取り出したラッキーストライクに火を着けた。




