#12
「なんだ…?」
夕飯を終え、宿を取った俺達は、宿の客室に居た。祠のあったこの街で、夜、行動するのは危険だと判断したからだ。
俺と同室は、伊達とロッキー。あとは、男女に分かれて二部屋。
自分に割り当てられたベッドに腰かけて葉巻を吸っていると、外から不穏な気配が感じられた。悪霊とかに近いものだ。
「どうした?」
ベッドに横になり、スマホを弄っていた伊達が、目線だけをこちらへ向けて問いかけてくる。
「外から嫌な気配がする。みんなを起こして、一つの部屋に集まった方が良いかもしれない」
伊達がロッキーを起こし、三人で廊下に出た。
隣は女子部屋なので、ノックをして声をかける。
「何だかヤバい雰囲気だ。すぐに支度して、明智達の部屋に来てくれ」
「分かりました!」
ドアの向こうからエミリーの返事が聞こえたので、部屋の前に伊達とロッキーを残し、さらに隣の明智達の部屋のドアをノックして開けた。
「ヤバい感じだ。起きて準備してくれ。この部屋に全員集める」
「分かった!おーい、起きろ!起きろ!」
明智が返事をし、真田とアレックスを起こし始める。
「お待たせしました」
「何なの、一体?」
真田とアレックスが起きた頃、開けっ放しにしてあったドアからミナとシーナを先頭に残りのメンバーが入って来た。ドアを開けっ放しにしておいたのは、ホラー系の話では閉じたドアが開かなくなり、分断されるのがお約束だからだ。
「ストレートに言えば、悪霊が出そうな気配がある。パイレーツセブンかもしれない」
「なんと!」
俺の説明にアレックスが驚愕し、他のメンバーにも緊張が走る。
「どうする?」
明智が愛用のサブマシンガン、スペクトラを取り出しながら、訊ねてきた。
「情報も集まってないし、できればやり過ごしたいところだが、襲ってきたら応戦するしかないだろ。この気配って事は、悪霊とか呪われた存在の類いだから、浄化系の魔法は効くかもしれない。弾は銀のやつを使えよ」
銃を持っているメンバーは、マガジンや弾を入れ替え始める。
「ロッキーとシーナは、浄化系の魔法は使えるのか?」
「いや。けど、こいつに魔力を通せば、やれる」
俺の問いに、ロッキーはバトルアックスを掲げて見せた。
「私も大丈夫よ」
シーナもナイフを手にしている。
「よし。じゃあ、窓とドアに注意してくれ。エミリーとミナさんは、部屋の中央に」
明智、伊達、ロッキーが窓に向かって立ち、俺、真田、アレックスがドアに向かって彼らとは背中合わせになる角度で立つ。エミリー、ミナ、シーナは、俺達に挟まれる感じだ。これで、どちらから侵入してきても対応でかるし、エミリー達を守れる。
「なんだ?この匂い?頭がボーっとしてくるぞ」
真田の言う通り、甘い匂いが漂い始めた。
「マズイな」
右手の銃をホルスターに戻し、急いでスマホを取り出すと、アイテム一覧から塩を呼び出す。
ビニールで包装された一キロの塩が物質化したので、袋を破り、俺達全員を囲う様に円形に撒く。そして、円の内側に霊力で結界を張った。
「これでどうだ?」
「匂いが消えたね」
どうやら、間に合った様だ。
「その塩の円から外には出るなよ?」
全員に向かって、声をかける。
「これは、どういった魔法ですかな?」
「俺達の世界の魔法だよ。詳しくは、企業秘密」
アレックスが訊ねてきたが、適当に誤魔化す。詳しく説明している余裕など無いし、説明しても分かってもらえないだろう。
「足音が!こっちに向かって来ます!」
エミリーの言う通り、数人分の足音が廊下をこちらへ向かって進んでいるのが聞こえた。




