その5
四月十一日
競馬のシーズンだったんだな。やらないから全然わかんねえや。
競馬で家を建てた奴なんて聞いた事ない、って言うけど、知ってるで。
そいつはタメ年なんだけど、事故で入院した時に暇つぶしでやったら、ツキまくってプラスウン千万にしてマンションを購入しやがった。
二十代半ばでそれをやっちまったんだから大したもんだよ。しかもまったくの競馬ド素人のくせに。
インスピレーションが冴えまくっていたんだろうな。
でも人生わかんないからね。万事塞翁が馬。
何が吉となり凶となるか分からない。
ギャンブルで人生を狂わせた人間なんて腐るほどいるし。実際、そういう人たちに出会ってきた。アホの事を書くのは時間の無駄だから書かないけどさ。
ところで、日本の法律ではギャンブル禁止と謳っている。
競馬、競輪、競艇、オートレースはギャンブルじゃないのかい。
しかもこれらは全部、国が介入しているじゃないか。国の収益になるから許されるんか?
ギャンブル好きの収入を国が吸い上げるって仕組みだから、あまり熱くはならないけども。
四月十五日
休憩時間に自動車学校の話で盛り上がる。しかし悔しい事に、俺にはネタがない。
他の奴が怒られている所は見たことがあるけれど。
今にしてみれば、たかだか車が運転できるぐらいで、教官はなに威張ってんだ、って感じだね。
滑稽だよ。その程度で偉そうな口を叩いているんだから。
そんなもん、慣れりゃ誰だって運転できるっての。
自分より下の者を見ると威張らないと気が済まないのかね。
このイカのキンタマ野郎が。
そんな事をしていたら卒業生に後ろから煽られるぞ。
何事も初めての人には親切にしてやらないと駄目だよ。
「つまるところ君の得る愛は君の与える愛に等しい」by ビートルズだよ。
愛って書いて思い出したんだけど、ヨーロッパ圏には博愛という言葉がないらしい。
博愛 ― 万人隔たりなく愛する事
それが果たして可能かどうかは別にして、似たような言葉を探しても、同じ目的を持った仲間同士の愛、という単語しかないそうな(曰く、塩野七生)
それならキリスト教徒どもが犯してきた蛮行も理解できなくもない。
って、俺は何が言いたいんだ。
自分の少ししかない知識をひけらかしたかっただけか。
まあいいや。酒がまわってきたのでもう寝ます。
今日はちゃんと家で飲んでるよ。
酒が強いわけじゃないし、外で飲むのが好きってわけでもない。
なんて安上がりな男なんだ。
どうですか、お宅に一台。
って、何を書いているんだ。
もう寝ます。おやすみなさい。
四月十六日
日曜日だってのに仕事。
クリスチャンになって強制的に日曜は休みにしようかな。
この前、外国人の学者が、天然記念物の鳥について話を聞きにきていた。
先輩のTさんが対応していたのだけど、それを見たMさんが、
「あれ何してるんですか」
って聞くから、
「イスラム教の勧誘」
って答えたら、本気で信じていたらしい。
いい人だよMさん。女として磨きがかかるともっといいんだけどね。
宗教の勧誘は面白いから好きだよ。
俺は理詰めで相手を追い込むからね。
神というものを造ってしまえば、なんでも神のせいにできるっていうのが俺は好きじゃない。
良い事があれば、神の御加護です。悪い事があれば、神の試練です。
なんじゃいな、そりゃ、と思うよ。
性格のいい人達がやっているから、許せはするけど。
きっと、素直な性格だから簡単に物事を信じるんだろうな。
でもそうなると、素直ってのも問題ありだね。
何事も、塩梅が大切。
塩梅 ― 塩の加減で美味しい梅になったり どうしようもなく不味い梅になる事。
そんなこと説明しなくても分かる、って文句言わないで下さい。
ここには、たっくんという小学生がよく来るんです。たっくんの為にも丁寧にしなくちゃ(嘘です)
一度でいいから、完全武装したイスラム原理主義者の勧誘にあってみたいのだけど、さすがにそんなものはないのかな。
四月十七日
僕はラジオ体操撲滅委員会の支部長を務めています。ラジオ体操なんか大嫌いです。あんなもん、地球上から抹殺するべきです。
しかしうちの社長は、ラジオ体操推進委員会の支部長です。
力関係で負けた私は、みんなの前で号令をかけながらラジオ体操をやらされてしまいました。
屈辱です。とても屈辱です。公衆の面前で亀甲縛りにされたぐらいの恥辱です。
私はマゾの気はありません。そんな事をされても勃起なんかしません。萎える一方です。
そんな私を見て社長は勃起しているのでしょうか。いい年して、この変態野郎が。
最近の社長はめっきりイカれポンチです。どうしたんでしょうか。元からあんなものでしょうか。理解に苦しみます。
今日の朝礼では、両手の親指を立たせ、手を前に突き出させ、「イエ~イ」なんて言わせてました。
あれはなんの練習だったんでしょうか。謎です。
いま私に与えられている仕事はTシャツのロゴづくりです。
社長デザインのいかしたロゴです。胸の所に大きくハイビスカスと社名が入っていて、その下にURLアドレスが書かれた最高にいかしたものです。
ファッションに無頓着な私でも、あれを着るぐらいなら割腹自殺を選びます。
社長、正気を取り戻してください。二十一世紀はすぐそこまでやってきてるんですから。
四月十八日
なんだか最近ストレスが溜まりまくっています。
ストレス発散の為に何かやらないと駄目だな。このままじゃ自分が悪い方向に進んでしまう。
女でもつくろうかな。自家発電にも飽きたし。
って、こんな事を書くと女性の反感を買うかな。でも女を騙すような事はしないので、目くじらを立てないでください。
楽しいひと時を気の合う女性と共有しようというだけの話です。
なんて書きながら、多分なにもしないと思うけど。
別にセックスが嫌いなわけじゃないんだけど、それまでのプロセスが面倒なんだよね。
そういう面倒をやるぐらいなら、自家発電していたほうが楽なんだよ。
目標があればそれに向けて努力するべきだけど、今のところ努力するほどの価値を見出せない。
いや違う。セックスに付随してくる面倒が嫌なんだな。
純粋にセックスを楽しめるだけの女がいればいいんだけど、そう簡単に見つかるわけもないし。
というか、結局、自分の中で二つの考えが対立していて、セックスするなっていう方が勝っているんだな。
困ったもんだ。セックスする事に自分でブレーキをかけているんだから。
四月十九日
久しぶりにパチンコを打ち、五時間を無駄にしてきた。
感想は、やっぱりつまらない。全然面白くない。でも時給八千円になったからよしとするか。
そのあがったカネで、帰りにCDラジカセを買ってきた。なんて安いんだ、と驚く。こんなに安いんだったらもっと早く買っときゃ良かったな。
ついでにCD屋さんで、プリテンダースの「PRETENDERS」(和名 愛しのキッズ)と、「GET CLOSE」が一緒になって、お値段一枚分というCDと、ブルース・スプリングスティーンの「GREATEST HITS」を買ってきた。
プリテンダースもブルース・スプリングスティーンも高校の時によく聴いていたから、久しぶりに聴いて懐かしんでいます。下宿していた頃を思い出して。
先輩に屋上に呼び出されて殴られた事。旧港の廃車の中で、寒さに打ち震えながら、夜空を眺めながら眠りについた事。真夜中の校舎に忍び込んだ事。先生との確執……
メッセージをくれた高校生、ありがとう。
返信しようにも宛先がなかったので返事ができません。なのでここにお礼を書きました。
高校生活楽しんでね。