その3
三月十八日
二十歳ぐらいの女二人の話を聞いていると、よくもまあ、そんな事で盛り上がれるなあ、と感心してしまう。
感受性が豊かな事は素晴らしい。
羨ましくもある。しかし感受性が強すぎるとそれはそれで問題もある。
プラスの方向に進んでいる時はいいが、マイナス方向にむかうと衝撃もそりゃ激しい。
心がズタズタに引き裂かれ、挙句の果てに、俺のような人間になってしまう可能性もある。
三月二十三日
おかしな天気だ。風が強い。雨が叩きつけている。
昼間からどんよりと曇り、暗い。台風の前のような天気。
だがこの季節に台風がくるはずもない。天気予報はどうなっているんだろう。
明日も雨だろうか。なんだか気が滅入ったところで一年前を思い出し、更に気が重くなる。
何かの本に書いてあった。
「別れに勝ち負けはない。しかし敢えていうなら、そのあと幸せになったほうが勝ちだ」
なんだよ、俺は負けっぱなしかい。
あかん。今日はどうもおかしい。こういう日は早く寝るに限る。
いちはやく就寝するも、夜中に目が覚めた。
いや、夜中に目が覚めた、と思った。
時計を見たら、二十一時前。
幼稚園児か俺は。
三月二十四日
いろんな占いがあるけど、それって統計学でしょ。手相、顔相、四柱推命、どれもそう。
多面人格の俺はなにをやっても大抵当たってしまう。だから良いと思える占いは笑えるもの。
おもしろかったのは精神年齢鑑定。友達になれそうな人、橋本龍太郎、水戸黄門と出てしまった。
もちろん私は運命論者ではありません。
運命は自分で用意するものでしょ。
三月二十八日
ころころ天気が変わる。晴れから大雨、その後晴れて、また雨、の繰り返し。
秋と一緒で天気が変わりやすい。女心と秋の空、なんて言葉があったな。でも、これはもう昔の話だね。女の腐ったような奴、とか、女々しいというのもそう。完全に男女平等の世界になったら、男が女にかなうものは筋力だけになってしまう。実際、自殺者数は女より男のほうがはるかに多いしね。
女は精神的に強いし、平気できつい事を言う。
生の原動力といわれる性欲も、男は歳と共に衰えていく。女は衰える事がない。
これじゃあ中高年男性の自殺が一番多いというのも頷ける。
なにしろ結婚した男の人生なんて、家族と家のために捧げるようなものだ。
定年退職までのローンで家を買い、給料は女房が握る。
仕事で疲れて家に帰っても、女房の愚痴を聞かされ、やれ家族サービスだのなんだの求められる。そのくせ愛情を受ける訳じゃない。
ああ哀しき男たちよ。
この先、もっと女が強くなる一方で、男の価値なんてどんどん小さくなっていくんだろうな。
日本がホモ大国になる日もそう遠くはない。
なにかの本に書いてあったけど、女よりも男の方が同性愛者になる確率が数倍高いらしい。
弱い者同士の共通意識がそうさせるのだろうか。
男は強くて頼りがいのあるもの、なんていうのは幻想だと解っていても、そうあろうとする男が多くなくては困る。
あまり拘りすぎると、その先には死が待っているけども。
言っとくけど、俺はそういったものとは無関係だから。
完全に枠の外。
無責任に、いい加減に生きてるからね。
三月二十九日
昔、会社は違うがロリコンのオヤジと職場が一緒だった。
歳は五十過ぎなのだが、生粋のロリコン。
なんせ小学校低学年生にしか興味がないのだから。
近所の小学校で運動会があると、ビデオで撮影してくる程の入れ込みようである。もちろん独身で、女にもてるようないい男ではない。
そのオヤジと親しい人に聞いた事がある。
「好きな女の子がいるとするじゃない。その子が中学生とか高校生になっても、ずっと好きなの」
「そりゃあ好きじゃなくなってるよ。あの人にとって中学生は大人なんだから」
なんて儚い恋なんだろう、と同情する気はさらさらない。
ビデオをみてマスをかくだけなら許してやるが、手をだしたら黙っちゃいねえぞ。
性欲を持ってライ麦畑に入る奴を許しはしない。
第一なんであんたはアパート暮らしなのに、通販で高枝切りバサミを購入しているんだよ。
三月三十一日
東京の叔母がやってきたので、友達が経営する居酒屋に緊急避難。
三親等までの血族は苦手。できれば誰にも会いたくない。
そんで居酒屋で好きなだけ焼酎を飲み、ホタテとポテトとサザエを食ってきた。
勘定は七百円。
そんなんでいいのか? と思いながらも、これも俺の人徳、と勝手に決め付け、店を後にした。
それにしても、ボックス席の若い連中はカラオケで盛り上がっていたなあ。
いやあ羨ましいよ、そのエネルギーは。
二十歳過ぎの頃の、新宿、渋谷で友達と飲み歩いていた頃を思い出したよ。
あの頃は熱かったね。
おかげで出入り禁止になった店もあるぐらい。
といっても、俺は何もしていないけどね。
友達が何かやらかしたらしい。
詳細は今もって不明のままである。
まあなんにしろ、大した事はしちゃいないだろうけどさ。
それで帰りの道中、ハチ公前の花壇に、胃袋からリバースした肥料を与えたり、体のことを思いやって、体育の授業よろしく、ゴミの山にダイブしたり……
今はもうそんな事できないね。
って、できたら問題だけども。
四月一日
散髪に行ってきた。カットモデルなのでタダ。Y君もだいぶ上達してきた。
去年いきなりスポーツ刈りにされた時は参ったけれど、今はなかなかいい感じ。格好つけようって気がないので、切るほうもだいぶ楽だと思う。
どうしますか? って聞かれると、適当に、としか答えない。
格好つけようとは思わないが、遊び心はある。
去年の髪は、真っ赤、ピンク、紫、スキンヘッド、パンチパーマ、虎刈り。
今はノーマル。
本当は真っ白にしたいんだけど、仕事の都合上できない。
――
『過ぎ去りし日』に『セカンドラヴ』を書き足したんだけど、言葉がたりないし、話を省略しすぎているから誤解を招くだろうな。
でもあの件に関しては、結果オーライだと思っているよ。正直な話。