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カインその2

教室に行きビートと会う前の話

 抱きついて俺の胸に顔をうずめるちっぽけな教師、リンが腕を離すとにこにこしながら言った。

「おはよーカイン君! 今日も会えて嬉しいよ」

「おう、面倒くさいなお前は」

「む、またそんなこと言っちゃってー! 私だって面倒くさかったらカイン君にこんなことしないよってねー。カイン君のこと好き好き大好きだからなんだよ」

 眩しい太陽のような笑顔で常人が聞けば恥ずかしいことを少しも恥ずかしがることなくリンは言った。

「あー、うんうんそうだなー。残念だか俺は生憎少女趣味じゃないんだよな。ですから俺は教師とそういう関係を持ちたくないと言いますかなんといいますか」

 正直に言うと俺はリンのことが嫌いではないがこういうことをしてるとクラスメイトにからかわれるのが嫌だからである。具体的に言えば肩ビートやトゥリ、ランがニヤニヤしながら肩をぽんと叩くのが非常につらい。

「そんなこと聞こえないですよー、私は君と結婚するって決めたもん!」

 リン大声で言えばやはり周りにいる生徒が暖かい目で見てくる。それを見ていたであろう少女が俺に声をかけて来た。

「あらあら、お二人さん今日もいちゃいちゃラブラブしやがって羨ましいことですね、殺したろか。後、カインとリン先生おはよう」

 ドスのきいた声が聞こえると俺はゆっくりと冷や汗を流しながらその方向へと振り返る。

「よ、よお……トゥリ……き、昨日はその、済まねぇな色々あって付き合えなくてよぉ……怒ってるか?」

「あら、別に怒ってないわよ、カインが昨日飛び降り自殺を図ろうとしていた女性を説得して助けたなんて、怒る理由にならないわ。むしろ偉いわよ」

「何だ見てたのかよ……声くらいかけろてくれりゃよかったのによ」

 相変わらず変な奴だ、とため息を漏らすと後ろで俺とトゥリのやりとりを見ていたリンがほっぺたを膨らましながら言った。

「あーん、トゥリちゃんだけずるーい! 私もカイン君の格好いいところ見たかったなー」 

 リンがトゥリの方へてとてとと駆け寄る。それに対してトゥリはリンを優しく受け止めると悲しい目をしてリンの耳元で何かを呟いた。

「相変わらず無いですね……胸……」 

 空気が凍る、とはこのことなのだろうと俺は悟った。何をトゥリが呟いたのかは定かではないが確実に聞こえない何かが壊れる音がした。

「…………そ、そ、そ、そ、そ、それを言わないでよおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 今日もまた、一日が始まる。この先、どんなにつらいことがあろうともリンは負けないだろうと俺は思った。

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