マリーその1
「マリー先輩、おはよう御座います」
マリーが学校に着いてから幾分かの時が流れた。そしてマリーはその間に友達と挨拶を交わし自分の教室へと着いていた。
先輩と呼び深々と頭を下げる少女、マリーの後輩で名はムーという。
「あら、いつも言ってるけどわざわざここまで来て挨拶する必要は無いのに……やっぱり律儀ねムーちゃんは」
優しく微笑みかけるマリーを見てムーという少女は何故か少し悲しそうにして殆ど独り言のような声で呟いた。
「……三年生は後少しで卒業なんですよね? 嫌だな……いなくなっちゃうのか」
そう呟いた彼女の言葉をマリーは苦笑いをしながら答える。
「私もここを離れるのは寂しいけど、いつでも会えるじゃない。この町、狭いし」
「そ、そうですけど……」
気恥ずかしそうにムーが言うと同時にホームルームの始まりを告げるチャイムがなった。
「あ、では私はこれで失礼します」
「うん、またねー」
ひらひらと手を振りマリーは教室を去って行くムーをぼんやりと見つめていた。
「そうか、もうこんな時期か……」
寂しそうに呟くとマリーの後ろの席に座っている男の子がマリーの肩を叩いた。
「おーい、マリちゃん。英語の宿題写させてくれよ」
「またですか……ケイタさん。何でいつもやってこないんですか?」
マリーが後ろを向きつつ言うとケイタと呼ばれた男性は真面目な顔で答える。
「……あのさ、さん付け止めてあげて。留年してることを実感しちゃうから」
「テスト週間に限って周りで厄介事が起きるんでしたっけ」
「そうなんだよー。冤罪で捕まったりいきなりマフィアらしき人達に拉致されたり、ね……」
肩を落としうなだれるケイタをマリーはポン、と右手をケイタの肩に置くと哀れみの目をしながらこう言った。
「ドンマイ」
その時この教室の担任がドアをがらりと開け中へ入って来た。
「みんなー席についてー」
その言葉を聞くと教室中に散らばっている生徒達がまばらに自分の席へと戻る。
担任の先生は全員が席に戻ったのを見ると全体を見渡し何かを確認したように頷く。
「……ケイタ君、マリーちゃんに英語の提出物を写させてもらおうとしてたわね? 取りあえず点数引いておこうかしら」
「いつもなんで分かるんだよ先生!?」
ケイタが悲しい叫び声を挙げて机に突っ伏すしていくのをマリーは微笑みながら見ていた。
(この人卒業出来るのかしら……?)