カインその1
「うへぇ……寒い……」
カインは自転車をこぎながら呟いた。
ギコギコと古い自転車の金具達が悲鳴を上げて速さを保つ。
冬の季節である今は少年カインにとって好きにはなれないものであった。そう、カインは寒いのが苦手なのだ。
「くそ……朝は特別寒いな。ん? なんだあれ?」
そう呟くとカインは自転車を止めて降りる。少し離れた所に白い何かの塊が落ちているのが見える。
カインは自転車を置いて塊が落ちてある場所へ向かう。
「何だこれ?」
近づくとそれはダイヤモンドのような輝きを放つ鉱石のような物だった。
「……一応貰っておくか」
自転車が置いてある場所に戻るとカインは自分の持っている学生鞄にその鉱石のような物を入れ自転車をこぎだした。
しばらく行くと大きな建物が前方に見えてくる。
「今日も面倒くさい一日が始まるぜ……」
その建物を見たカインは自転車から降りて溜め息をついた。それはカインが通う中学校だった。 カインが重い足を進ませ昇降口に入ろうとしたその時、何かがカインの方へと走って来ているのがわかった。
「……またあいつか」
カインまたもや溜め息をつく。それと同時に廊下の奥から誰かの足音が聞こえて来る。それは歩く音ではなく走っている音だった。
「カインくーん!おっはよー!」
走って来た人は嫌な顔をして立っているカインにいきなり抱きついた。
「うへぇ……、これまた面倒くさい奴に会ってしまったな……」
顔をしかめてカインはもう一度深い溜め息をついた。そして抱きついている人をから離すとその人の頭を撫でて言った。
「毎日飽きないな、リン。お前は本当に変な奴だよ」
「えへへ……ありがとー」
「いや、褒めてないからな?」
その人はリンと言ってこの学校の名物のようなものであった。