本編 ◇ビート その5
「あ、本当だ」
カインが指さす方向には、一人の女性と思われる人が立っているようだった。
「ここのことを聞いてみましょう、二人とも」
トゥリが先に歩きだす。
「ああ、行こうぜ」
※
「あの、すいません」
女性に声をかける。
「んん!? まだ生者がいたのかい! それも、三人」
その女性は、こちらを向くなり驚いた顔して、僕達をまじまじと見つめる。
「あー、もしかしてさっきの娘と、同じ感じかな?」
「おおっと、すまないねぇ。アタイの名はビーレ、ビーレ • ナナフシギさ」
「で? あんたらの名を教えてくれよ」
明るい声で早口で喋る。その女性は名乗った。
「え、えっと、僕はビート、ビート • スタンです。そして、男の子の方が、カイン • コールソン。女の子がトゥリ • シウロライトです」
「ふんふん、ビートにカインにトゥリね」
少し迷いながらも自己紹介をする。
すると、左隣にいたカインが口を開く。
「俺達、気がついたらここにいたんだ。ここがどこか教えてくれよ」
「……わかったよ。じゃあ、簡単に説明するさ。ここは、死んだ者が天国行きか地獄行きかを決める前に来る、いわば、停留所ってやつだねぇ」
「じゃあ、俺達は死んだのか?案外あっけないな」
「まぁ、話を聞きなよボク。死んだ者が来るはずなんだけどあんたらは死んではいない。生きたままここに来たってことになる」
「ところで、帰りたいかい?」
本当に、唐突に、ビーレという女性は言った。
「は? いや、そりゃあ勿論帰りたいよな、ビート、トゥリ?」
「そりゃあねぇ」
「うん。勿論だよ」
僕達が言うと彼女はうんうん、と頷くとこう言った。
「そうかい、なら、さっさと帰してやろうかね。それじゃあバイバイ。もう来るんじゃないよ!」
「「「えっ?」」」
そこで僕の、僕達意識はまた途絶えた。
意識が途絶える直前に、こんな言葉が聞こえたきがした。
「今度はどんな……なんだ?」




