トゥリ その3
トゥリとカインのクリスマス。四年前のお話です。
私がまだ小学生の時に、その出来事は起こった。
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あれはたしか、十二月二十四日。クリスマスイブの日だったと思う。その日はとても寒くて手がしもやけになったのを私は覚えている。
その日、私はカインと一緒に下校していた。帰り道で話したことは、たしか、クリスマスにサンタさんから何が欲しい、というような内容だった。
私がカインにそのことを聞くと彼は笑いながら「お前、サンタなんているわけねーだろ」と言っていたと思う。
その言葉に私は少し怒ってカインを置いて走って帰ろうとしたのだが、女の私がカインに勝てるはずもなくあっさりと捕まえられてしまった。その時に彼が謝ってくれたのだが、私はその時何故か許さずにまた憤慨して彼を置いて行ってしまった。その時は、もう彼は追いかけて来なかった。 家に帰ってから私は泣いた。些細なことだが幼き頃の私は純粋だったのだろう。
その日は少しだけ目が腫れて、涙の後が残った。ママにどうしたのと聞かれたが、ごまかしておいた。だが、その時、ママは何かを察してこう言ってくれた。
「いい、トゥリ? これだけは言っておくわよ? “信じることは悪いことじゃないのよ”」
優しく、私の頭を撫でながらママは笑っていた。
その日の夜、私はなかなか寝付けずに寝返りを繰り返していた。
暗い部屋の中の天井を見つめると、今日のことが思いだされる。明日、カインに謝ろうと思ったその時、コン、と音がした。
私は、気のせいだろうと思い毛布を肩まで引き上げる。すると、また、窓に何かをぶつける軽い音がした。
気になってベッドから這い出てみる。
そして、閉まっているカーテンを開きガラリ、と窓を開けた。
冷たい風が私の体全体に纏う。
首を出して外を見ると何も無い。やはり私の気のせいか、と思い。窓をしめようとしたとき突然、外にイルミネーションのような光が現れた。それは、みたこともないような沢山の光で作られており、とても美しい物だった。
私は驚きつつもその光景を眺めていると聞こえてくる外からの声に耳を傾けた。
「おーい! トゥリー!」
声の主はカインだった。
カインが家の外から声を張り上げて私を呼んでいる。彼はイルミネーションの真ん中に立っていた。
「トゥリー! メリークリスマス! さっきはごめんなー!」
彼がそう言った瞬間、夜中の十二時を知らせる町の鐘が鳴り響いた。それは、広く優しく私とカインを祝福するかのように。
「俺からのクリスマスプレゼントだ! ちゃんと思い出にしまっとけよなー!」
イルミネーションの光は強く、彼の表情がはっきりと分かった。
彼は思い切り笑っていた。
※
その日、私はカインと一緒に学校から帰っていた。
昨日、いや、今日のことを聞くと彼はまたも笑いながら「偶にはサンタになるのも悪くないだろ?」と言っていた。
あの日、彼がしてくれたことは、今でも心に残っている。
今度は私が彼にお返しでもしてあげよう。
「ありがとう、カイン」




