ラン その3
少し長いので読みにくい
眼中には見たこともないような美しい花畑が広がっている。色とりどりの花達はそよ風にあおられてひらひらと踊りを舞う。
空は蒼く雲一つない快晴だ。またそれも美しく花園を引き立たせる。
私はその光景に目を奪われていた。
「おやおや、こんなところに生きている人間がくるなんて、あいつ以来だねぇ……いやはや珍しい」
不意に後ろから声がした。その透明なソプラノの声は蒼き空に響き渡る。だが、それ程大きな声ではなく通り易い綺麗な声だ。
あたしは後ろを振り向き声の主を確かめる。
「あ……」
声が出た。少しだけ、溜め息のように。
そこには女性がいた。見たところあたしよりは十歳位上だろう。
姿はそう、一言で言えば狐に似ている。淡く光る長い髪の毛は金色、そして同じく金色の着物。見ていて眩しいくらいだった。そして、女性の全身からは薄い紫色のオーラのようなものが溢れていた。
「おや、あいつとは全然違う反応だねぇ。まあいいや。あたいの名はビーレ、ビーレ • ナナフシギだ。あんたは?」
「………あ。あたしの名前は、ラン • ライトニング」
「そうかい、いい名前だねぇ。んで、ラン、あんたはどうやって“ここ”に来たんだい?見た所あんた、生者なようだけど……?」
カーレと名乗った女性は不思議そうな顔をしながらあたしに聞いてきた。
そんなことを言われてもあたしにだってわかりはしない。何故ならあたしはここがどこかわからないからだ。
「たしかあたしは学校に行ってそこで何かを見た。あたしはそれに連れ去られた……?」
自分でも何を言ってるのかわからない。どうしてか記憶が曖昧だ。
「質問を質問で返すのは感心しないねぇ……。あんたのことなんて知るよしもないだろうに」
「兎に角、あたしはここにきたくてきたわけじゃないの。ここはどこ?えーと、ビーレさん」
この状況にとり乱してしまう。こんな時、ビートならなんて言うのだろう。
「じゃあ説明してあげようかねぇ。ここは“夢の楽園”。まぁ、正式名称は瞬きと全ての夢の楽園、ってらしいけど長いからねぇ。皆もあたいも短く“楽園”で呼ばせてもらってるよ」
「………まぁ、死者しかいないのがこの“楽園”の特徴なんだけどねぇ。なんであんたみたいなのがいるやら」




