カイン その3
過去編もたまに書きますがその時はタイトルに“過去”とか書きます。
「じゃあ、私は職員室に用があるのでここで一旦お別れー。バイバイ。今日は何か誰も来てないし静かだね~、なぞなぞ」
リンはそう言うとスキップをしながらどこかへ消えて行った。
「へいへい、またなー」
そういい俺はトゥリの方を向くともう一度、頭を下げた。
「すまん、昨日は付き合えないくて」
俺は約束を破るのも破られるのも大嫌いだ。もちろん、どんな理由があろうと約束を破られた側は多少なりとも傷つくはずだ。
「別にいいって言ってるでしょ? 私もそんなことじゃ怒らないわよ」
顔を上げるとトゥリが微笑みを投げかけて来る。それに対して俺は一つ、名案を思いつきトゥリに言うことにした。
「なぁ、トゥリ」
「ん? 何よ」
「この貸しは今日の放課後返す。お前の好きなチョコケーキ買うから一緒に食べようぜ。これで貸し借り無しだ」
「しょうがない奴ね、カインは」 そういうとトゥリは歩きだす。俺はその後ろ姿をどこかで見た気がした。
あれは確か、中学一年の時だった。俺はまた同じことをしてしまったのだと思いながらトゥリついて行く。
(……俺は本当に成長しねぇなぁ)
情けなく思う気持ちを押し殺し、今は俺達の教室へと向かった。




