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彼は何とか身体を動かした


う、ここは誰かの家だったか。

すまん、いまどく。

ほとんど見えない目で、失礼した、と言ってボロボロの体を何とか動かす。


彼は、まあまあ幸福だった言えるだろう。

彼女に出会うことはできなかったが、狩られることはなく、今日まで過ごせた。


身体を上に向ける。ここは知らないところだ。馴染みのないところ、霞んできた目では周りもよく見えない。


上に来るまでも苦労した。まっすぐ上がることができずに焦った。

なんとか出てきたが、良い場所がない。


同じように歌を歌うものか多く、少しでも早くからそして少しでも遅くまで、歌を歌った。彼女に会うために。



うわ、まだ、生きてたのかよ。

玄関を出たところに蝉が倒れていた。

近づいたらジ、ジ、とないて少し離れたところへふらふらと動いていき、動かなくなった。

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