第7話:謎の依頼
フォルケン冒険者ギルドの掲示板に、ひときわ目立つ依頼が
張り出されていた。
「特殊モンスター討伐――Fランクでは挑戦的」
小さな文字に冒険者たちは顔をしかめ、軽い声でざわめく。
ライト・エルヴァインは静かに掲示板を見つめる。
「……やるしかないな」
無表情だが、瞳の奥に決意の光が宿る。
アリスも横で小さくうなずいた。二人は装備を整え、森の奥へ向かう。
森は薄暗く、枝葉が重なり、風の音が低く響く。
不穏な気配が漂う。ライトの心拍は高まり、体が自然に緊張を
選択する。無意識に、危険を察知する力が働いていた。
突然、黒く巨大なモンスターが姿を現す。
甲殻に覆われた体、鋭い触角、獰猛な眼光――Fランクでは到底
太刀打ちできない相手だ。地面が振動し、枝葉が飛び散る。
「くっ……!」
アリスは剣を構えるが、触角が彼女を押しのける。
ライトは一歩も動かず、体が自然に最適な位置に反応する。
攻撃はすべて空を切る。触れられる寸前で、ひらりとかわす。
モンスターが咆哮を上げ、地面を叩く。岩や枝が飛び散る。
だがライトは無傷だ。触手や牙の攻撃が迫るたび、体が勝手に
最適な回避行動を選ぶ。本人は理解していない。
ただ、体が動いているだけだ。
アリスが再び攻撃を仕掛ける。未熟ながら勇敢に剣を振るい、
モンスターの甲殻をかすめる。ライトはその隙間を自然に作り、
偶然のようで必然に、モンスターの弱点を突く。
「うわっ……!」
触角が襲う瞬間、ライトは無意識に体をひねる。
触れられる寸前で回避し、弱点に岩を投げ込む。
鈍い音と共に、モンスターが揺れ、崩れ落ちた。
息を切らすアリス。目の前で無傷の少年が立っている。
「ライト……本当に、すごい……」
言葉に驚きと尊敬が混ざる。
ライト自身も理由はわからない。ただ体が動いただけだ。
森に静寂が戻る。
だが、まだ安心できない。森の奥にはさらに危険が潜む。
ライトは松明を握り、視線を前に向ける。
無自覚の力が、次なる戦いでも二人を守るだろう。
「ありがとう、ライト。助かった」
アリスが小さく微笑む。息を整えながら、少し安心した表情だ。
ライトはうなずく。力の正体はまだ知らない。
ただ、確かに誰かを守れた感覚だけが胸に残る。
森の木々がざわめき、風が二人の影を揺らす。
無自覚の奇跡が、友情と信頼を育み、二人を次の戦いへと導く。
そして、この小さな勝利が、後にフォルケン中に広がる噂となり、
ライトを待つ大きな運命の歯車を静かに回し始めるのだった。




