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8,翼の民

「赤黒い果実だ。食ってみろ」

「うん、腹壊さないか食べてみよう」


 この地が大地になって時が刻まれた。大分、広くなり森のような緑さえ見られるようになった。下には草原が生い茂り、大気濃度の低いこの地でも生き永らえている。それは力強くも心強くも感じられた。オーズはデリンの指した場所へ向かおうと言いつつ、樹木に成る実を食べようとアーデルとジールに勧めていた。


“ガリ、ゴリ、モシャ、”

「硬めで皮が邪魔だな。色も青緑のように黒い」

「味がしない。果実だからこうなの?汁はあるのに変だね」


 土の栄養分は樹木に回っている。それに虹の鉱石の力も与えている筈で、人類が感じる味に仕上がると思っていた。ところが俺達の思うよりも違った効果となった。それはまるで原始に戻っているかのようで、宇宙のときめきさえ何等か立ってはくれない様だった。

 ジールのように力持ちでも、あの悪戯いたずら好きなアーデルでも、知能の高いデリンでも、この味でもない味に不慣れな様子を見せていた。


「もうちょっと美味しいと感じられる味にならなかったのかな?」

「そういや俺は食べ物をそのまま“かじる”事しか知らなかった」

「お前達もそうなのか?僕にも力を分けてくれと言って、この文化さえ感じられないようでは、子孫により身近な遺伝子を与えられそうにない」

「慌てるなよ。そんなに味がしないでもないじゃないか・・・シャク、モリ」


 確かに味がしない事は無いのかも知れない。少し舌を敏感に動かしてやれば「甘い・辛い」の味覚を味わえるのかも知れない。舌の神経がビリビリするようなのに、歯応えは硬いの一言で、皮が千切れないのが特徴だった。

 もしかすると何か力が足りていないのだろうか?デリンに聞いても「そんな方法・文明・文化なんて知らない」と言いそうだった。


「確かね、その木に“トウ”が含まれている筈。果実の切り目を作って擦り付けてみようか?」


 “糖”とは何だろう?時を刻むにつれ別の遺伝子が混じったのだろうか?この宇宙に漂い流れる遺伝の粒子が俺達を触ったり包んでくれたりするのは、マーズの子孫であるから感じられるのだろうか。デリンに聞いてもジールは「突然何を言っている?」と困惑するし、アーデルは「どっちでもいいから食べろ」と気を揉むし俺からすると今後、人類の文化に新たな刻みを入れるのかも知れない。

 もし、色んな味覚を感じられるようになれば、新しい文明に辿り着くかもしれない。そろそろこの場所を移動してもいい頃で、赤い衣の変色を警戒しながら3人に話しかけてみた。「頃合い」だと。


「アーデルは一度、この場を離れていたよな?何か他の生命、或いは人類に出逢ってはいないか?例えば枝でなくって糸が生えたような生命とかだよ」

「う~ん、そんなの居たかな?さっき伝えた4本脚以外の生命かぁ・・・そうだなぁ、確か私と同じくらいの背格好をした生命なら数個見掛けたけどねぇ、」


 他に居た。つまり俺達人類以外の生命の形が他にも居たという事だ。それは一体何という生命なのかアーデルにしつこく質問してみた。どうせ頃合いだし別の地へ向かうのだから・・・


「確か、よ~く覚えてないけど“つばさ”が、どうのこうの言ってたよ。こう、髪の毛が赤い?あの星のように、えっとオーズの名付けた“シーデル”だったかな?あれと同じ色をしていた」

「他には?」

「見掛けた限りだけどね・・・“草と粉”を混ぜていたなぁ・・・」

「それは一体、どういう感じだった?」

「う~ん、煙を上げてた。それで火を使ってたねぇ・・・」


 なるほど、草と粉を混ぜて何かを“作っていた”と言う事か。もしかすると遺伝の中の記憶に在る薬と似ているのかも知れない。彼等に会ってみたくなった。アーデルは方向が分かるけど、道はデリンの方が分かると思う。

 ジールは荷物持ちが合ってるし、俺が指示をして向こう側の地へ向かうとし、“嫌な予感”は少し目をつむろう。


「方角からして、蒼の空に在る緑の星を目指せば着くだろう」

「あの緑の星でいいんだな?それなら俺達の足で2ときもあれば到着するだろう。二人とも、アーデルに付いて行こう」

「分かった、デリン、アーデルの肩に取り付け」

「よっと、さぁ行こう」


 俺達は早速移動を始めた。寝床にするつもりだった樹木を離れて新たなる生命との関わりに意志が震えた。その魂から生まれ出でる構造はどの様な形だろうか、興味がそそられる様だった。

 「楽しみ」という感情と「不可解」という感情に押し切られそうになりながら、4人とも歩を揃えるように移動をしていった。この調子だと“つばさ”に辿り着きそうな気がしたのだ。


「あ!あれだ、あの煙がそうだよ!?」

「おお??粉が赤くて宙を舞ってる!」

「板を滑っているあの生命体“らしき”ものは何だ?」


 確かに火にあおられる粉、板を滑っている生命体らしきものが見える。俺達は“直ぐ傍に居るだろう”その存在に距離を詰める。何か喋っている様にも見える、3つの何かに近付いてきた。足音も出ない俺達の様子に気付きもしない様だった。何故、そんなに夢中になって居るのだろうか?


“ゴオオ、オォウ、ゴウオオオ――ボォゥ”

「おい、そこで暴れるなって。もう少し火の傍から離れてくれ」

「いいや、これでいい。これだけあぶれば水と混ぜてれる筈だ」

「もう、あんまり火を入れないでよ?結構、時間掛かったんだから」


 声が聞こえる限りでは、何かを作っているのに何だか「楽しそう」にも見えるのだった。そういう感情が俺達の記憶をくすぶっているのだが、匂いを感じる。煙でなく何か「美味しそう」な匂いがするのだ。一体それは何なのかを知りたい。もう間もなく到着する。お前達は一体何者なのだ?


「ん?あんまり焦って近付くと火傷するよ?」


 俺達が近寄るより先に気が付いた?何故、虹の鉱石の力を得ている遺伝子たる俺達に察知付けられる?それ程までに生命の形が違うというのか?


「そうじゃない。神の意志だよ」


何故、意志が読める?まだ何も言っていないのに・・・?


「意識の奥底に眠る記憶だ。その意志はまだ新しい文明と時と文化、そして記憶なんだろう?それにずっと“声”が聴こえいる。“音”もそうだ」


声?音?ジールとアーデルにデリンの声や音すらも聞こえるというのか?


「そうよ。幾つ経っても人類は希望ね。どんなに象っていてもいずれは変わるというのに。偽っていても分かるのよ」


俺達が偽っている?同じ生命なのに象っているだと?


「オーズ、ジール、アーデル、デリンという名か。この声と音が聞こえるなら、それは脳梁波のうりょうはというものだよ。君達の祖先も同じ方法を使って話し合っていた筈だ。音にも声にも成らない時代にね」


更に以前の時代も知っていた?

彼等は何処から現れたのか?

俺達は、少し歩を緩めたのだった―――。

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