6,星々の文明文化
我々はマーズの意志を受継いだ。
鉱石なる七色の光を帯びていた。
体に宿るこの“再生”は一体どこへと向かう?
新たに構築されたこの魂と意志はどこまで向かう?
この体さえ在れば今までよりも遥かな発展を遂げるだろう。
ーーーーーー
俺はオーズという。この星々の運命を司るスタヴァ―とアンクォンの大孫にあたる。それに何といってもこの星の重力じゃ密かな茂しか生えてくれないんだ。どうやったらここから水が出来るんだ?あれから随分歩いてきたというのに・・・。
「おい、オーズお前ってやっぱり足が速いな。僕の腕なんかよりも細い癖に随分と年期の入った岩を砕くじゃないか?」
「いや、まったく力なんて入れてないよ。ジールこそどうなんだ?俺の足より鈍いというけど一応、茂の塊をあの虹の鉱石の力で紡いで居るじゃないか」
恐らくこの区域で出来る事と言えば、緑から水を得る事だろう。今のところ神の力さえ感じられないのだから自ら創るしかなさそうだ。ジールには特殊な力があってそこで河を創ることも出来そうなんだ。
もう少し時を駆ければもっと広くて別れた河茂の大地が出来上がる事だろう。
「腹ぁ、減らないんだったな、確か・・・再生能力は在るのに」
「まぁそれは仕方ないんだから、とにかくこの体を冷やさない様にしないといけないね」
と言うものの、冷えるも温かいもないこの地で、俺が出来る事がたった一つだけあった。それは力を使って生物を創ることだ。
もし茂から生命の値を感じ取ることが出来たなら、それを食べずに育てることも出来るだろう。食われなければ問題ない筈さ。
「そういやデリンとアーデルは?どこへ向かって行ったんだ?」
「いや、まったく知らないな。彼女達は身軽だからもっと先まで歩いたんじゃないのかな?」
もしかすると、道らしいところを見つけたのかも知れない。確かに文明も文化も出来たので惑星ゴ・ランズの中だけで過ごせて往くのには少し狭い気がした。多分、時代がそういう感じにさせていたのかも知れない。もう少しだけ時を掛けて出来ることを進めよう。
“タッタッタッタッタ、ハアハア、”
「オーズにジール、何か進展はあったの?丁度布も出来そうな木々の根が在るからそこで休もう。もう虹の力で大きくしたから寝床にできるよ?」
デリンを他の地へ向けたと言っているアーデルは、およそ身長180センチの人類だ。デリンは30センチだから肩に抱えて移動出来た。俺達は3メートルあるので移動しやすいようで実はしにくい方だった。その分、力はかなり使える方だと笑ってる。
でもアーデルが息を切らすなんて、大気濃度は70%に満ちている筈なのに妙な感覚がする。
「ゴ・ランズの破片を跳び越えて居たら、別の惑星に着くことが分かった」
「え?それは本当か?」
「ええ、ここから出ると少し空気が冷たいけど美味しそうな緑が生えていたんだ。私達はお腹が空かないけど、食べる事で子孫繁栄ができるんだろ?だったら、って思った!」
子孫繁栄は生殖器を使う訳じゃなく、魂と意志が折り重なってお互いを尊重する時に出来る行為だ。それはかつてスタヴァ―とアンクォンがしてきた様に俺達も同じ事が出来る様になっている。先ずはアーデルが言う様に、デリンの向かった先の惑星へと足を進めるべきだと考えた。
――惑星ゴ・ランズの果て
「うん?3人ともこっちへ来たの?」
「ああ、アーデルがいい所を見つけたと聞いて向かってきた!」
「そうだ。僕達はデリンの居る所で丁度いい場所が出来たと聞いてきたんだ」
「どういう事?ここには木なんて一つもないのに?」
「あれ?アーデルが居ない・・・どこへ?」
また彼女の悪戯が始まった。どうも余計な“ひとこと”を告げる癖があるから注意していたのに、また始まった。そんな俺達4人も神の子孫で民でもある。この巨体と普通の体が共になった時に、お互いの考えや思想を駆使して生き抜かなければならないのだ。他の民とは別れたし俺達も懸命に住処を作らなければその象徴さえ出来ないだろう。
「ねぇ、木の痕跡みたいな反響があるんだけど、これってアーデルの言ってたことと似通っていない?」
「確かに波動が感じられる。デリン、オーズお前達の虹の力で調べてみてほしい」
この惑星の破片には根が蔓延るヒビと水源が感じられる。俺達には睡眠時間が存在しないから、暇なときは目を瞑って念導を続けることにした。
そうする事でお互いの意志が感じられる様な気がした。心地よくも肩の凝るような状態に変動するみたいになる。それが覚醒することで新たな目的が再開できそうだが、時々邪悪さに蝕まれる。
「その水路から温度を感知した。僕の力で再生させてみせよう。多分、この硬度なら隙間に水が送れるし、その記憶通りなら苔が草にも成りそうなんだ」
「余波は送らないでね。邪悪さに蝕まれていると“人を殺したい”という衝動に駆られるからあんまり集中しすぎないでほしい。私が再構成の念導を贈るわ」
「俺からは鉱石を粘土に変えるよう柔らかな“意味”を与えるよ。オーズは自己肯定感に蝕まれず、デリンは否定的な内容に蝕まれないように頼むよ」
3人でその地に手を合わせ念じてみせた。すると一筋ずつの初枝のような草木が生えてくる。そこには雫のような水滴が湿らされた。そして段々と積み上げられるように樹木へと育っていくのだった。
「まるで兄弟のように育ってくれたね。強い意志と生命を感じられるよ」
「この枝に実が付けば食べる事を更に覚えられるだろう。今は食感と美味しさしか分からないけど、どんな感動が生まれる事かな?」
「幹を裂いて布を作ろう。とても柔らかな物に仕上がるだろうな」
その姿はまるで不器用で積み木を崩すのが精一杯のような形であった。細工も施せそうにも思えたのに、俺達を迎えてくれるらしい風を伴ってくれていた。しかも性格が分かるように称えてくれた。それは優しさであり弱さであった。
もしも人間だったら走り合っていただろうし同じように鉱石を掘り当てていたのかも知れない。大変、貴重で緩やかな水を育んでくれる様でもあった。
「これで喉が潤い、食事も眠る事にも不自由しないか。ここから子孫を育むことだって出来るだろうか?」
「だけど、大地が狭いね。そこはどういう風にするべきか、地が広げられるならいいのだけどね」
「神を崇めてみるのはどうかな?もう古い事だけど。あとは他の民達と共同することがあれば問題なさそうだ」
マーズは神の象徴である。それは宇宙を見守り生命の声や音をも生みだしては訊ねていた。宇宙の波・風、これ等は万物の創生なる頂の一滴を与えてくれていた。俺達4人が集まれば「どうにかなるのか?」と感じてみた。すると宇宙から生命体の泡なる光が注がれてきた。この一筋の正体は一体何だろう?
「ジール、あの一筋の光は何だ?宇宙から落ちた」
「このゴ・ランズの破片を見る限りに、かつてマーズと崇められた光が注がれ文明が生まれたというが、僕の遺伝記憶には“黄昏”とも云われ残っている。もしかすると大地を広げられる様に見守ってくれているかもしれない」
「私の遺伝によると、“希望”という光と考えられてきた。それは泥を拭い水で洗うといった行動を少しだけ手伝ってくれるという。“清め”るとも云ってたな」
俺達の注いだ力が大地に染み渡る頃にやってきた、その光が大地の奥底に眠る遺伝生命を広げていく様子を初めて目にした瞬間だった。かつてのどの時をも覚えていない宇宙の“態度”だったのだ。人類を導くようにそれは大地の掛けている部分を補っている様である。
もうすぐ根城のようにゴ・ランズの地を繋ぎとめてくれる様子も、それは見せてくれた。そんな時だった―――。
“スタッ、スタッ、タッタタ・・・”
「デリン、帰って来たよ」
アーデルが戻ってきたのだ。腕に傷らしき痕跡が残るものの手には布らしきモノが握られていた。一体何があったんだ?
「やあ、アーデル。戻ってきたのかい?さっきオーズとジールと一緒に住処を創っていたんだよ。すると宇宙から光が注がれてきてね、大地が形成されている」
住処周辺を刻んでいた亀裂も徐々に水と緑が広がっていた。どうやら俺達を歓迎してくれたらしい。ここを拠点にして文明を創り、子孫と文化を増やす事も出来そうだった。
頼りは他の民との文化を繋いでいって新たな発展を目指す方がいいらしい。だがその手に握られる布が「そう簡単にいかないぞ」と告げているような奇妙さを伺わせるのだった。
ここでの”人間”とは、「人と間を繋ぐ」という意味合いで表現しています。




