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37、砂漠よ再び

そこに残るは砂だった。

砂とは有機とは異なる“無機なる光”に彩られている。

それはたった一食の光から沢山、落としてきた赤黒さと異なり輝いていた。

そこは色ではない、灰に面した土より輝いていた。

まるで太陽をも砕いた欠片の様な痛みを残していったのである・・・。


◇ ◇ ◇


“あ”が、おごォ、う“あ”、ァ、ち、、、父よォ・・・ォ、オレは・・・”

「灰となったのか・・・何という事だ・・・お前は何のために産まれて来たのか覚えているのに、民達は覚えてくれなかったというのか―――、」


 インシュビ―は母の乳を飲み、臣下の元を巣立とう事を教えられ、民達から光の王として育てられた。育てられると次に力を示す事を命じられた気がして、指示よりも己に従う様に、何らかの声によって導かれた。彼は父ですらない、のだとして。

 なのに、それでも父と呼ぶ声は止まらなかった。唯々、道を貫いて行った意志の塊に逆らえなかった、抗えなかった事を随分と悔やんだ様である。


“灰・・・では、ない・・・砂・・・だ・・・ァ”


 光の王インシュビ―の尽きる時を見守る様に、ブレトルはこのように解き放った。お互いの民達はそれ等の様子を窺うように唯、動きを止めるしか無かったのである。ブレトルは、既に形亡きであろう、我が息子へ声を掛けるほか無かった。


「灰ではなく、砂だと?」

“フ・・・これもオレがかつて、光の力について預言された事として聞いていた事だ・・・光の正体が砂だったとはな・・・”

「お前は父を忘れたのか?このような砂になるなど・・・」

“忘れて居たら、このような姿になる筈も無いだろう?・・・我ながら急激に成長するかと思えば・・・”

「王として何という―」

“貴方も王という座に執着していなかったではないか・・・それが今になって何が王なのだ・・・オレは唯の点だった1と0に過ぎぬ・・・”


――――それはこのような経緯があった。


◆ ◆ ◆


――我が息子インシュビ―よ。

あの光の束はお前の1色の光よりも7色あり細く貫くのだ。

『8色の光なら分かります。ですが7色よりも10色の方が細かく貫くでしょう?それがジェイルの云う、ライト・オブ・ホールだと言うのですか?』

―――7色を8色、7色を10色、それ等が光の束となる事は親子が合致した混合たる異色であった。それ等を理解しない等、何と勿体ない事だろうか、と妻のフォダネスは感じていたのだ。


息子よその光る指先でよく触れてみるがよい。

『触れてみました。しかし皮が分厚くて光が隠れてしまうのです。もっと力があれば大体の感触は掴めるのです。父も試してみては?』

―――懸命にその手触りを試すも、鱗のように固い皮膚では掴めなかった。だからその眩き光で掴んだようにしてみせた。「息子よ、その感触が“確かなる愛”なのだ」と教えていた。


掴めないそれ等は固くも小さな砂でひとつの形・意志なのだ。

『固いのは、土の民なのです。そんな小さな砂を一つの形だとすれば意志は簡単に崩れ去るでしょう。父上も、再び民達と戯れてみては?』

―――絆など簡単に崩れるものではない、とそうドーグに教わっていた筈が、ジェイルの教育が行き届かなかった故か、簡単に崩れてしまう。それでも再び砂の上を歩きたいと願うブレトルだった。


例えば民は力を出そうにも、その純硬なものから力は出られないで居るのだ。

『例えば、大体分かったとしても力及ばず力試しを行うだけだ。そんな事も硬さと捉えてしまえば、時を失うに過ぎないのでは?』

―――それが楽しくも面白く在る語源なのだと、理解していた筈が逆に追いやられた。時は短くとも、長い秒針にときめくインシュビ―の顔をそっと撫でてみせたのはフォダネスだけだった。


民が文明を築くころ、お前の光はより強く彼等の目にも焼き付くであろう。

『焼き付いた記憶に時が迫っていたのだろう?貴殿ももう少し父らしく振る舞えばいいのだ。簡単な挨拶なら誰でも出来るだろうに、どうして籠るのだ?』

―――文明よりも時折り記憶を探す事が大切だと気にしてくれるのならそれでいいが、もう少し思い出を焼き付けて置いてほしいと願うのだった。誇りを持てと。


お前がもしも文明に焼かれ貫かれるなら母譲りの頭脳で再び立ち上がるのだぞ?

・・・冠は答えてくれない・・・


◆ ◆ ◆


過去を現在とするのか、現在を過去とするのか、それぞれのお互いが衝突するたびに陣形を乱さず如何に貫き通すのか、回りくどい挨拶などしてそこに終わりが見えて来るのか、時としてそれは刻まれて往くのだった。


「父よ!オレは決して諦めないッ、この文明は必ずあなたへ報いるだろうッ!」

“おおォォ――!光の王ォゥッ、インシュビ―ィィ!”

「我らが民の文明よォッ、この鉱石のエネルギーを以って宇宙へ貫けぇぇ―!」

“さぁ、光の王よォ!再びライト・オブ・ホールで星々を焼き尽くせぇぇ―!”

――ピシュ―――ン・・・――ッ、ドッドオォオオオ――――ォオン・・・サラサラ――

「おオォ、インシュビ―、お前の体がッ!光が・・・何と、何ということか!!」

「我が子インシュビ―が星の砂に・・・きっと変容を遂げ、必ず戻って―――」

「王よ、それはとても不安定で掴めなくなる事が彼を蝕んでいたのですよ―――」

そして

光の王よ、我が名は――お前の親は―――ッ

臆病ではなかったのだ!!


◇ ◇ ◇


 インシュビ―の力により浸食されていた土の星ゴ・ランズと他の星々の大半が砂漠化・・・もはや言うべき事はその砂と化すインシュビ―の更なる残り魂と対話するしかなかった様である。


 そして、砂漠は再び星々を彩ったのである―――!


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