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3,生命と星

生命が人類となる時。

神の魂から別れたそれは、スタヴァ―・マーズという生命体。

神の魂から別れたそれは、土の星ゴ・ランズという一つの灯。

宇宙に漂うこと一周期からお互いが一つとなり、やがて認め合い、そして対なる宇宙との境界線を表した。その融合と結びを期すだろうそれから更に450億年の時が刻まれようとしていた。そのゴ・ランズという星なる土の旅はここから始まる。


1,生命と星

宇宙に漂うおびただしい遺伝粒子によって星々の生命が活動を始めると、大気すらほぼ得られない星々が誕生する事を“マーズ”は知っていた。

そこへ降り立った一つの生命体がスタヴァ―・マーズであり、始めゴ・ランズは9%の大気流しかない空気によって水から産まれる緑の苔から、人型として形成して往く。それは異形たる皮膚で覆われ、徐々に出来上がる自然によって体内の血液や水分の移動がとても細い神経で働いていた。食事なんてものは唇で掬う程しかなく、大気の少ない環境によって骨と皮膚は伸びて往き、筋肉などの生体を保つ支えもそれ等に従い伸びていった。


「“あ・・・お・・・ぐ、げ・・・ごォ・・・”」


一環、このような脳波長なる波音で言葉を介し、交信していくものの“訳の分からない”とされる言葉たる波を発している。身長も2メートルから8メートルと様々で、その指は太くも鮮やかで、足はおよそ30センチから90センチの形状を保っている。それも空気が薄いが故に起きる現象である。それはようやく人としての形状を保つことが出来ているに等しいのだった。


「“ごお・・・あぐゲ・・・ゴガぁ!”」

「(我等は、どうしてこの様にして生きている!)」


意志と意思が重なり合う様に、常に発信する脳波長はこのようだった。

交信という形でなければ、誕生と果てを繰出せないのであった。

そう、誰かが答えた。


「土の香りを感じる・・・」

「緑が少ない。お腹がいた・・・」

「我等は共食いするしかないのか・・・」


大気の薄い星の中では遺伝粒子が量子となり、水に流れ岩土を突き抜ける。それ等がやがて一つとなる頃、一気に生命体のからだたる形状が一度に産まれ放流するのだが、その数、1,000体。一秒で5万体生まれて往く。初め、それは叩く引き裂く、潰すかの様にも見られた。実際は苔から流れる栄養が膨張を示すので、生命の体を大きくする事が最優先だと、神はその腕で宇宙に漂う線を引っ張ったのだ。一度に放流するエネルギーがタンパク質やビタミンを形成しようとしているのに、まるで腹が満たされない。お互いを与え合うようなシドで在らなければ成らない。


「クーデ、我はこの100体の糞で30の時を刻んだ」

「デン、我は40体の糞で45の時を刻み、腹を満たした」


このクーデとデンのように、お互いを記号たる脳波長で話し合えば、いずれお互いを食べ合うほかない。やがて苔が“食せる”ならばこの様に食べ合う事すらないのだろうと、彼等はずっと願っていた。何故ならその寿命も時を刻むに従い、1億年から200億、1千億とも伸びてしまうからだ。それに対し、星に散らばる生命線の細くも僅かなる自然たる生き様。それ等が土となる由縁になるのも、透明な砂と削れた砂が混じるためで、色は茶色でなく灰色と近い青だったのだ。水路にはその微細生物を食べる口があるため、とても甘くて美味しい筈なのだが、彼等にとっては不味い飲み物だった。


「この星は枯渇する事さえないのだな」

「他の星との関わる乗り物さえ無くだ」

「宇宙の賜物が在るからこそ、だろう」


この時を刻む星に棲む彼等には性別が存在しない。だから子孫を残すのでなく神である宇宙からの頂き物たる宇宙量子から産まれ出でるしかない。「そのような象りなど何時になれば来るのか」と問う存在さえ居ないのだから、未だ“人類ヒトるいとして”の自覚すら無いのだろう。唯一つの存在が示されるまで相当の時が刻まれた事だろう・・・と。

―――――――――

2,人類と民

時が刻まれる。

その人でない人類ヒトるい生命体が星の核となるには息も出来ないような時が刻まれてきた。その星々の大気濃度が13%に満ちる頃に、ようやく生物らしい形状となっている。単にヒレやエラがある訳でもなく、間接は在るのに形状らしい形状でないその存在がヒトとして認め合えるまでに長い時が刻まれている。

だからこそ、“新地へと向かう気分”はきっと爽快で新鮮な思いを馳せることだろう。それも神の意志の成せる業で在ろうとも―――。


「我の指先では石ころが運べる。なのに砂は掴めないのだろ」

「そんな意味さえ消し飛ばすような出来事が在れば、きっと神に宇宙に認められる存在になるかも知れ得ないのに、関わりが少ないのだろうか」


息が空気になるには、未だ遠慮が足りなかった様だった。無理を通してでも息をしようとするから、気も草も生え得ぬ未来像を描いてしまうのだろう、と神は嘆いた。折角の生命が英知の頃よりも随分と原始的で、お互いを食し合う。折角足を着けたのちに、手指が生えているのにも、掘って食べる事こそが大事なのではないだろうか―――と。


「神が居たとしても、我等に与えられたのは遺伝粒子なのだ」

「関りが幾つ在ったとしても、宇宙の焚火には遠く及ばない」


たぎる宇宙線に舞い込む様々な生命の六道りくどう。唯々それが余りにも長すぎて気さえ無いこの生命の鼓動が「単なる生きたいという衝動か?」と称える生命体たち。その内、お互いを食べあう等しなくていいのでは、と願う生命。それは何処に存在するのだろうか、神は頬を叩いた。


「少し空気の流れが違う様だ。正しくは星の形状が変わった」


神は考えた。この宇宙である体に変化の予兆が、やがてあのビッグバンやサンシャインの様な惨劇になるのではないか、と復活の兆しが起きたのに係わらず余りにも無残である。もう少し生命達に今一度、生きたいと言う意志を与えたい様に感じた。そして時は更に深く刻まれた。


―記憶という名の施しが必要だ―


神は一線の髭を各星へ飛ばし繋いだ。それがマーズという形での星の光線だった事に何ら頼りないかも知れない事に、生命が星と共有できる何かがあるなら、一つは夢を与えてみせようと思い出したのだ。彼等に記憶が在れば更なる遺伝を与えられるかもしれない、もしかしたら、食べ合わずとも子孫を残せるかも知れない?


「腹が膨らまない。食べても同じだった」

「しかし、命が膨らむ。腹が空かなくなった」


300年の時が過ぎると、大気濃度が19%に膨らんだ。それは星々に眠り活き得る生命体の活動が盛んになった頃だった。「もう少しその髭を貰えないか」と生命体達は神・マーズを称えたが、髭でなく今度は血液を与えられた。それが星の大地に沈着すると灰でない砂が誕生したのだった。水が活動を更に盛んにし、その湿りで大地の苔が草となったのだ。それでも虫さえ現れたなら「生命の兆しも更に望めるに違いないから」と神は自らの声を与えた。その声が波長を産み、星の生命が活動化。あとは時が刻むのを待てば空気がより深く、生命体の形成も均等になるし産まれる形状も徐々に勢い出すだろうとも・・・。


―生命が声を言葉にし始めた―


720年の時が過ぎると、人類ヒトるい人類じんるいとしてようやく認め合えるようになってきた。大気濃度が25%でこれなら脳内の波長を使わずとも言葉を覚え、伝えあえるだろうから「自分の名前だ」と自信を以って認められる事に繋がる。それが水でも緑でも星でもいい。ただ感動を与えられたならより一層空気が美味しく感じられるだろう、と神は信じた。それがスタヴァ―としての由縁だろうと何時しか伝えられる火種を望んだ。2メートルから8メートルだった人類がもう2-5メートル程に変化した時だった。


―生命に性別が付いた―


それは「男・女」でなく、機能としての便利だった。空気さえ与えられたなら人類は成長を変えられるし、言葉を持ち何かを象り始め覚える事すら可能になる。そうなれば人類における発展・展望を与えられた事に相違ないと、神は自らの波を打っていた。大気濃度が45%に満ちる頃、やや青みがかった空が現われ、水に勢いが増し、緑のほかに花が咲きだした。「キレイ」を示すと生命体に変化が起こり、体に眠る意識がその脳から送られてくる波長を意識した身体機能を表し始め50センチから3メートル弱の生命として活動を始めたのだった。


―これで性別による交信が可能になった―


お互いがその惑星ゴ・ランズの地にひれ伏し蘇ってゆく頃、どの様に知を得て食べ合う事などしなくて済むのか、どうすれば脳から波長を出さなくて済むのか、随分待たされたに違いない。そこに木が生え実を宿す頃、全く違う生命体が示され訪れる頃、ようやく「美味しい」を共にする事も出来る様になるのだった。

人類から民が現れる瞬間だった。

――――――――――

3,一度の文明

宇宙を突き抜けて行ったスタヴァ―・マーズ。

それが生命体となり惑星ゴ・ランズのエネルギーとなって時が刻まれた。

1万0,279年という時を経て冷たくて空気の薄い惑星の一つだったに過ぎなかった、人類ヒトるいとなったモノ達は象徴スタヴァ―・マーズを生命都市のひとつとして表すようになり、それに引付けられるように異なる次元から現れた別の意志であるゴ・ランズの民アンクォンとして生まれ育ったのである。

都市と言っても土の大地に石畳の様な壁は木、流れる水と組み合わせて出来ている。火は大地の奥底に眠るマグマによって小さな地割れの上に砂を水で固めた大地から漏れる炎を窯に見立てた物によって揺らぐ温度となった。


これも宇宙の流動による遺伝粒子における産物であると誰かが決め付ける。

浮遊も出来ない、統べる事すら出来ない。なのに象徴は建っている。

スタヴァ―という一つの神なる存在はやがて人となって往き、ゴ・ランズの民から産まれたアンクォンは大地を歩き成長した。168センチと250センチの人類となるまでそう時は長く掛かる事さえなかったのである。

その姿はまるで18の少女と19の青年。性別こそ異なるものの手を取り合いその虚空なる宇宙を見つめ、食を共にする事も多かった。会話は言葉でなく脳波長同士をつなぎ合わせる様に会話し、その交信によって自らの子を宿しているのだった。


「私はスタヴァ―」

「僕はアンクォン」


お互いが結ばれると、その子は元気に飛び回った。無重力ではない空気の在るその地を巡って、歓喜にあふれた。生まれてきたと言う喜びは両の親に届いた。人類の象徴であるスタヴァ―は白い服を身に纏っていた事から再び神の様な存在だと崇められ、アンクォンは茶布を見に纏っていた事から、土の民である象徴を手にした。


「私は子孫を創ることを民へ伝えよう」

「僕は文明を創ることを願うよ」


こうして二つの存在である意志は記憶を頼りに子孫と文明を繁栄させていった。何故かこの二つだけは人類であり、そうでないと例える者も居た。対してスタヴァ―は長き時代を全うする事を約束し、アンクォンは短き時代を全うする事にした。神であるのと民であるのと大きく異なるのであるから、その寿命も異なるのである。

生前、アンクォンは紫の衣を見に纏い白長い髭を生やしてはいたが、生命の寿命を終え、宇宙を漂う虹の魂の眩い光によって別宇宙の次元イラ・ウーズへと変容を遂げていったという。彼がニューファザーの魂をもとに形成されたその姿は、代々の民に伝えられていく。


「民に子孫が生まれた。かなりの時を宿した」

「もう、彼は居ないのに文明が絶える事も無い」

「だが彼等の子は、神の子である。育てよう」


それからスタヴァ―は没後、虹色の魂となったというが、未だ健在で時代と共に精器が現れ始めた。それで交尾をするという行為は無いものの、釜戸が生まれある世界線の医療に通ずるような、産湯に漬けて子を産む技術を手に入れた。水は胎芽のように芽生えるばかりで自然が惑星の20%を占めた。それ等の導きにより後の人類じんるいを導く一手ひとてとなったという。


そして、大気濃度は60%に満ちる。

既に食べ合う事すら無くなった。


その彼等の存在こそが、人類の象徴として幾度と産まれ出でることは、後々の時代を導く手立てとなったという。


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