28、天使の力
ブレトルの魂の契約でフォダネスが妻となり眩き民と闇の民が結束。闇の束が宇宙に飛来してきた。どこかの世界線でそれはダークオブホールと呼ばれていたが、その影響か子も宿せぬ様子だったフォダネスの身に膨らみが現われ、インシュビ―が生誕し光の王として育てられる事となった。
前途、文明が捗り、住処を変えてそれぞれの想い、形を連ねていたのだった・・・
◇ ◇ ◇
―――――ヒュウゥゥウウウゥゥ―――ッ
「眩き王、あなたは私の帰る場所を見つけてくれると言うのですね?」
「その通りだ、闇の女王よ。俺は俺の帰る所へそなたを連れてゆく」
「あなたは私と契りを交わす?この世界線で安らげると?民を連れて?」
「簡単なことだ。姿は違えど俺と契約を交わせば、その先には――――」
―――――ゥゥウウゥ―――ッ
「闇の女王よ、妻よ。この総本山が俺達の住処だ」
「眩き王、優しき夫・・・。これが私達の頂点・・・?」
「そうだ。これが我々の新たなる在り処だ」
――ここは不思議な力場を感じる――!
如何にしてそのような場へ訪れたのか―――
―――――――
――――
闇の時代は永くもゆっくりと流れていった。
フォダネスは天使の力を用いて闇の女王として君臨するも、その拠所を眩き王ブレトル率いる像の民によって支配されたのだった。ブレトルのその眩き力に伏した闇たる天使の力は、長き支配を赦し、お互いの王の立場を契りと言う形で納めたのである。
そのようにして眩き王が闇の女王に勝つのだった。
「食事を無理矢理、民に象っては大変貴重な時が終わってしまうのでは、そういう不安に勝ち取るにはもっと永い時が必要になってくる。その闇の力は守るべき事に使うとよい」
(天使の力を以ってしても・・・)
それは諦めるべきだと妥当する事と異なる。お互いがお互いの力を認め合い、異なる文化を彩るという意味合いに受け取られる。もう少し時が刻まれば子を宿すことも出来るだろう、と鑑みるが、民達はそれぞれの場へ移動を重ねていた。
既に惑星ゴ・ランズの星に1億7460万もの大小の生命が宿り、人類はそれらに囲まれるように暮らしている。まるであの3人の翼の民が到来した頃の様に賑やかだった。
「道という道は、次第に生命たる遺伝によって導かれ、かなりの数を備えている。何とも言えない時の導きに力余る踊りを与えよう」
「王よ、私の体に小さな疼きが与えられました。どうか祈りを与えてやってください」
◇ ◇ ◇
各星々には宇宙線のうねりから闇の永き時代によって、闇の束なる痛みが与えられた。それを彼の詩人はダーク・オブ・ホールと名付けた。「闇在る処、光在り」である。新たな時代が刻まれる度に宇宙に多様な現象を与えられる事も、神は見越していなかった。
度々、スタヴァー・マーズが表れた時にその超電磁爆発なる現象、ビクヴァルが宇宙に表れた事を感じ取れた。全ての意志であり、それぞれに訪れた意志であり、魂を与えていった、その時を生命たる遺伝は忘れられなかった。
「中に潜む光成る、秒針・・・“インシュビ―”が舞い降りる・・・彼の交信が成就した理由も無く、突如として闇の女王に入り込んだのでしょう・・・」
「つまり、ブレトル王の眩き光を受継いでいないというのですか?」
「仕方ない。彼には自由気ままな“意志”だけを与えられたという名目さえ・・・」
「隠すというのです?」
「変わりない。土の民は屈強なる体を元々、持ち合わせて在る。王も同じだろう?」
「おお、フォダネス女王よ、一時の幸せを眩き王と共に与えたもう・・・」
ダーク・オブ・ホールの痛みとする疼きは、何時の宇宙から現れたのか、神すら理解出来なかったのである。もしも本当に知らない宇宙線から現れたのなら、その問題の理由を理解できなくなる。それによって最古の生命達の遺伝に異変が現れたのなら、慌ててその原因を原因と思わずに喜んでしまうだろう。
――――「ありがとう神よ」と言って・・・。
「そういえば、眩き王の師はドーグという名だったと聞く。そのジェイルという神官によると手持ちの本書から、ビグヴァルが再来した時に宇宙に大きな穴が開き、数奇なる闇の線が降り注ぐという。それがもしフォダネス女王に訪れたなら、それで疼きが感じられたのなら、別の生命の“残骸”が彼女の身に訪れた事と合致する」
ドーグの調べは、宇宙の根源から現在に近い位置を指示していた。その総数は59書であり一冊7000項もの内容が書かれている。それを虹の鉱石の癒着で止めているというなら再生能力がその本にもあり、劣化する事もない事を意味する。それがなぜか光を生んだのには訳があるのだ。
「王よ、貴方の光が私のお腹に宿ったのでしょう・・・貴方が感じられます」
「交信が間に合ったのだ。全く悪くも無い、大層な出来事だ。これで新たな王を産めるだろう・・・民達よ喜ぶがいい・・・」
――――
“ォギャア、ォアァ――”
「さぁ、インシュビ―私の傍へおいでなさい・・・」
そういってフォダネスは我が子、インシュビ―に乳を与えるのだった。一方で、アマテスはジェイルとその事を話している内に、嫉妬と似た感情が表れていた。もしも自ら決めた事でフォダネスがブレトルと共に、その身を遠ざけるなら愚かな選択をしたような、不穏な意志を、魂を感じられぬ訳がない。
だからか、天使の力を得て以来、少し名を変えてみようと考えた。それも“マーサ”という仮初の名前としてだ。
(どうしよう・・・フォダネスが・・・奪われる・・・)
――――その不穏な意志は、次第に焦りとなった。
まだまだ、子を産んだとしても小さ過ぎるし、意志もそう強くなさそうだったからだ。もしかすると、天使の力が邪魔をして闇の光を抑えてくれるかも知れないと期待してしまう。そういう平然とした表情とは別にジェイルに接していると、ブレトルと結び付ける事を拒み続けるようになっていた。
そこまでして共に居る事に機嫌の悪くなったマーサをジェイルは見て居られなかったのだが、そんな彼自身は神官だ。もしかすると神官であるにも関わらず、ジェイルはマーサをフォダネスと同じく親であり姉と考えて接している事を否定できなくなる。それも焦りと変わらぬ動きだったとは当人も思い寄らなかったのだろう。
――――何か、亀裂の入る予感が宇宙を貫いた――――




