25、民達の希望
「このような無意味な睨み合いは止してみてはどうでしょう?」
誰かが言った。余りにも長く続く決闘試合のような勢いに交信どころか、まるで文化と文明に至らない形を取ると民の時が少なくなってしまうからだ。それなら一層の事、手を取り合って建物を作るとか、人材にするとか話し合ってはどうかと結論付ける者も居た。そうすれば余り余った時を止めるように近付くことが出来るからだ。
「踊りならいつでも見られるだろう。お前は一体なにがしたい?俺は民達と行動を共にしたい。そうでなければこうして現れた意味さえ失うのだぞ」
「確かに、皆、子孫繁栄を求める者が沢山います。ですが、これを休止として時を置くと私達はどうなるのです?落着くのは確かに良い事です」
幸せとは何か、という考えもあった。初めて見舞える実力が在りながら、一方は楽しく料理をし、祭りごとの様に踊りを楽しみ、暖炉を囲えばいいものの尋ねて突然睨み合うなど面白くも無い、と言い表す。一方はその頭脳を活かし、屈強なる体を折角の機会だからその身を委ねて居てはどうかと言い表す。
すると像の民の方が確かに優位なのだから、その迷いを断ち切るのは蛇の民の役目だとは成らないのか、宇宙たる遺伝はそう感じるのだ。
「我等は立場では無いし場面でもない。これが現状なのだし、新たな時をお前と組みたいだけだ」
――――酒を飲みながら、大きな顎を撫でるようにブレトルはフォダネスに近付きこの様に示す。フォダネスも納得したようにあっさりとブレトルの意見にその長くも広い耳を傾けているのだった。
「一時的な事柄をこのように片付けてしまってはやがて“貴方”の言うような楽しみと面白さに加え、美味しい事が見えなくなってしまうでしょう。この時を静かに見舞えるのは優位な事だと、私も感じられるのですが、これはどういった感覚なのでしょうか?」
するとブレトルの傍にアマテスが寄ってきて「それは交信なる恋だ」と言い示す。ジェイルはフォダネスの傍に寄り、「それは夫と妻になるとドーグが仰っていた」等と少し笑いながら言葉を濁す。いずれにしてもこの、ダラけた時を過ごすのも全く悪い事ではなく、落着いた時であり、お互いの文化を話す時でもある。
◇ ◇ ◇
フォダネスはブレトルと宿敵となる。
「交信とは如何なる方法なのでしょうね。もしかするとこのように時を過ごす内にお互い話している言葉の節々が永住なる形を取るのかも知れません―――」
ブレトルはフォダネスを宿主とする。
「何度も言うが、俺はお前と交信をしたい。ドーグと言う人物が居たのだ。彼は永住というのは“慕う”という意味だと言い残して去っていった。このようにして念じる内にフォダネスよ、お前と身籠る小さな存在が現れるかも知れない、と」
このような和談をしている二人であるが、形も姿も異なる者同士。一体どちらが勝るのか、民達は称えている様に感じ取れるが、宇宙はどの様に称えているのか、このような言葉が浮かび上がった。
それは「契り、“契約”というのはどうだろう?」と。
付き人であるアマテスとジェイルはお互いの気が済むまで時を濁していればいいとして、まず民達の“統率”と“理解”を得ることに専念しようとする。時が満ちる合間に二人で決める前にも共同文化なる出来事を行えば、全く意図もしない影響を得られるのだと話し合った。
民達もこっそり同意し、燃え盛る太陽の合間を突き抜ける息づかいを表した。それは何にも見えない、形式と方式。繋がればつながる程に輪が完遂されてゆく。理解できなかった言葉が理解できるようになると、民達はお互いが同じ土の民であったことを理解するようになっていた。
そのように統率とは大変な作業だが、それも時が刻まれる内に様々な形状を模した子供が生まれていった。そんな姿を見ている内にアマテスは孤独を、ジェイルは寂しさを感じられたのだった。まるで親子だと告げていた時が次第に逆の立ち位置になることが当然であったかのように。
◇ ◇ ◇
――――更なる時が刻まれた。
「眩き民と闇の民、いずれも交信を重ねると更なる交信が始まるだろう。どうだフォダネスよ、我等も同じ道を辿るのは?」
「ふふ、それもよい事ですね」
民達の間に希望が満ちた瞬間だった。




