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24、砂の世界

そこは有機なる砂に彩られている。

砂と言っても、粒がある訳でなく粉と同様なる粒子であった。


◇ ◇ ◇ ◇


 目に入ると痒みと痛みが混じる為、天使から得た布で覆う事が増えていた。そうすると、まるで潤いを得たような感じがしたのだが、天使の特異体質によって羽から伸びた糸に水分が含まれていた事が、何となく理解できたのはもっと後の事だった。こうして旅に出る集団は、二人の踊りを見て連なるのだった。


――――もう、生命を食べ合う時代は無くなった。

――――今は、僅かな生命を頂く事が普通になって居る。

――――水と草木さえあれば休める。


 旅先で出会った生命は、他の星から現れ出でた遺伝らしきモノだったらしい。それを別の民として歓迎していたものの既に、食べるにはそれほどの数が要らなくなった。踊る度に必要なのは殆ど、水と草木だけで十分だった。

 かつて翼の民が料理していたように、粉にするのは彼女達だけでは無理があったので、違う地で料理してもらう事になった。それも“パン”ではなく、塊としてだ。


「これを食べて落とし、そして砂に植える時に水を落とすと・・・?」


 別の生命として食べていた“シド”は種という語源からも生まれた。それは落とし植えるものとして以降、使われる用語となっていた。一人は女王として、一人は付き人として周りは連なる様に列を成した。食事こそ「美味しい」と言える事であり、天使の力を得てからというもの、不自由は減った。


――――女王が何もない所から力を分け与えてくれた。

――――女王さえ居れば、その頭脳を活かすことが出来る。

――――付き人は踊りをしている。女王も踊りをしている。


「これは祈りだ!」


 腹がそれ程「空かない」のだ。そして住処を与えられると、そこには希望なる予感が与えられたのだった。どうして生き、どうやって時の秒針を刻まれ、どのようにして逝くのか、とお互いの方法を確かめ合った。こうしてパンと異なる塊を連ねたのは、更なる時が刻まれてからだった。


「文明が発展して往くと、これまでにない新たな発見が出来ることが分かった。これで食べ物にも新たなる工夫が出来るようにもなったよ」

「女王様、万歳」

「フォダネスを崇めよ」


 土の民と呼ばれていた惑星ゴ・ランズの蛇の民達はフォダネス一行をこのように称えた。まるでそれは天使の力でなく、踊りを冠した滅多にない好機だと考えられていた為だ。遂には現在、住んで居る場が異なる世界として意志を共にすることを民達は望んでいた。

 そこは次第に砂にまみれて泡となる様な感覚を得られたのだった。金色に輝くその体を見て蛇の民達も次第に心躍こころおどり出す。


◇ ◇ ◇ ◇


「ようこそ、”砂の世界”の主君へ」


 このような立場に成ろうとは、フォダネス自身まったく理解出来なかった。それよりも像の民の動向がそろそろ気になって居た。何故なら土の民は元々、スタヴァ―とアンクォンの子孫であり、別の文化と交信し、子孫を残す習慣が宇宙から得られた遺伝なる記憶に残されていたからだ。

 他の星々からすれば同じくして小さな生命であり惑星である。それでも共鳴し、新たな宇宙の灯として神はそれらを残していったのだ。時が刻む度に秒針が狂う事も無く、新たな王の冠に水をそそぐ時が来るであろう。それも滅多に無い、よい機会である。


――――土の民達よ、我の意志が繋がりし時だ!


誰かがそう言った。

何かがそう告げた。


この様にして、別の文化と文明が重なり合う時がやって来た。


「アマテス、彼等の希望は何なのでしょう?」

「そうね、もう間もなく時が爪を研ぐことを予感しているのでしょう」

「それは滅多に無いこと?それとも何事でもなかったと?」

「どちらでもない、自然な事ですよ?」


――――像の民がやって来た。


砂の拠点なる大地へ像の民がやって来た。

それは少なからずも2000の数である。

 民達は思った。「この地に収めるには余りに多過ぎる」と感じた。滅多に無い機会であり、他の民族とも交わろうとしたが、全く異なる目的であったので、ようやく交信を求められる様になった事を期待した。

 しかしよく見ると屈強なる体を持った人類であり、それが眩き民として納められると、蛇の民は余りにも貧弱過ぎる。だから頭脳を介して、フォダネス一行に知らせた。


「あれは闘争だ」

「あれに立ち向かうには、体が必要だ」


 天使から得た力で誘い、踊りを始めると像の民達は一瞬怯ひるむが、「楽しそうだ、面白い」と言って留まる事は無かった。寧ろ一緒に踊らないか、と誘いをかける像の民達。そこにひとつの強い生命が居た事に驚くフォダネス。

 眩き王と闇の女王の掛け合い、それ等が民達の緊張と喜びに変える事は“稀”に無い機会でもあったのだ。


――――火花のようだ。


待ち構えていたフォダネスとアマテスが、ブレトル一行と目を合わす。


「お前がここの王なのか?俺も王だ」

「お前が王?私も王だけど余り見ない恰好ね」


 太陽が輝くときそれは真っ二つに割れていた。それは輝きであり闇でもある。別の意味で言えば昼であり夜でもある。蛇の民達は“ヒルマ”と“ヨナカ”という楽器を携えて眩き王を威嚇する。像の民は自らの体を奮い、“アサ―”という両の手を組み合わせては拍手のように弾くように音を鳴らしている。

 その間に惑星ゴ・ランズの地平線には閃光のような強き輝きを灯し、水を弾いたのか虹がその地を照らしている。


「お前の様な女性を見た事がない。よければ俺の友と成ってくれるか?それとも俺と交信し、新たな子孫を残すか?」

「私はお前と交信する予兆を感じないのです。しかし友としてなら、もう少しこの熱狂を通して意志を通す事は叶わないのでしょうか?」


 何にも分からない通じ合えない二人であるが、目的は「余りにも小さな感じがする」と宇宙は唱えた。もう少し近寄れば何かが起きるかも知れない事を彼等は承知しているかの様に、意地を張り続けている様にも見構える。

 ブレトルはもっと楽しく面白く交えないものか、フォダネスはもっと知的に話し合えないか、と似通う処はあるのに、異なる意志を称える民達であった。

 既に民と民が共になろうとしているのに、全く交わる気配がないのは、この二人の態度のせいであるのだろう。


「お前の希望は何だ?俺は民達とお前の民達と渡り合いたい。きっと楽しい文化が決められるのに、お前は全く動こうとしない」

「お前は止まろうとしないでしょうに。欲望は天よりも地に敵うという。お前と渡り合えば民達は分裂を起こし兼ねないのです」


 ――――お互いが睨み合い、民達は少し意志を交わせようと構えている。既に交信を始めている者達も居るというのに「王達はまるで動こうとしないではないか」と、いきり立つ様子が窺えた。二つの王が付き人に知恵を貰おうとするのも窺えた。


「気兼ねするな“宿主やどぬし”よ。俺とお前は既に交わっているではないか!」

「安心するのです、“宿敵しゅくてき”よ。私とお前は既に交信を跳ねようとしているのです」


 民達の希望・・・ようやく叶う交信の機会、如何に繋がろうとするのか、王達の意地がそれを咎めようとしているのは何故だろう、と宇宙は迷いを隠せなかった。


◇ ◇ ◇ ◇


砂が吹き荒れる。

いつか、交信を始める時まで―――。


”恋”とは想いです。

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