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21、民族


 2つの時が刻まれた。

 この名も無き集落へ一筋の集団が来たことに、

 珍しく感じられた事は今に無い。


 少女は訊ねた。一体これ等はどんな集団なのか、を。静まり返っていた時と異なり如何なる催しを行うのだろうか、と。一見、平気な顔をしてはいるが、体が疼くような感覚を憶えた。それはかつて記憶の奥底に眠っていた宇宙のうねりや衝撃を与えられたような感触とよく似ていた。


「私も初めて見た。こんな集団は見た事も無い。名前も無い私達には無い“何か”を持ち合わせているかも知れないね」

「持ち合わせている“何か”?それは一体何を示すの?」

「冴え渡る、方法かも知れない。それは蛇の民の頭脳にも理解できない文化なのだろうね」


 少女にとってその集団がまるで手を振ってこちらを眺めている様にも見られた。時がさらに細かく刻まれた瞬間を目の当たりにしている気がしてくる。

 それは聞えてくる“音”が表していた。集団の内の一人だけ、クルクルと回っている様にも見える、見慣れない少女がこちらへ向かって声を掛けてくれる様子が見られた。

 少女は連れの老人に黙ってその中へ打ち惹かれるように入る。何か教えてくれるかも、連れて行ってくれるかも知れない“期待”を寄せて・・・。


「ねぇ、それは?」

「これはね、“おどり”と言う」

「どこから来たの?」


すると、集団の中から別の者達が声を挙げる。


「私たちは風流なる地から来た“民族”というものなのさ」

「何処からとかは、多分覚えて居られないしねぇ、忘れた」


 集落に居る蛇の民は、このような応答や会話などしたことも無く、始めて“友”のような感触を得られた気がしてしまう。それは羨ましいとか威厳の感じられる様なものでなく、自由気ままな意志が伝わるものだった。

 どうも像でも蛇でもない民族の流れが感じられてしまう。少女は意識した。それは一体どういう“感情”なのか、と。


「それは“一体どこから産まれ、どういう名前を与えられたのか”という感情ね」

「それはずっと興味が在った。でも聞く手段がなければ何もならない」

「ここを出られる手段ならあるけど?」


 名も無い少女は、その少女のとおり聞いてみる事にした。もしかしたら名も無き集落から新たな土地へ出られるかもしれない事を思い浮かべていた。それは大変、痛快なる感触に浸されてどちらへ向いても新しい方法として、今の生活から抜け出したい気持ちになっていたからだ。


“ウィーン、ウィーン、ウィンウィンウィン♪”

「これはどんな音?あなた名前はあるの?」

「これは“テンキ”という楽器。私の名前は“アマテス”と名付けられた」

“ウィーンウィンウィンウィアァオオ――ン♪”


 楽器の音は集落をゆっくりと抜ける度、激しさを増す。少女はそれを摘まみ取るように軽くクルリと回転し、集落の周辺から奥まで見渡す様にニコやかに踊っている様である。


“ワォンウィンウィンワオーンン♪”

「この音、その名前にあやかって踊り続けるの。すると“褒美ほうび”が貰えてまた、新たな太陽を迎えられるの」

「褒美?」

「そう、寝床と食事。決して美味しいという訳じゃないけど、無いより有るから私は踊り続けるの」

“ウィンウィンウィーンウィンウィンアオォン♪”


 名も無き少女はその話言葉はなしことばに踊らされるように、“アマテス”と呼ばれる少女の虜になった。まるで自分自身も同じことが出来そうな予感がしたからだ。それは「わたしも民族として引き受けられるのか」という疑念に相じて与えられた新しい文化なのだと感じられていた。


老人に「わたし、向こうへ行きたい」と尋ねた。

老人は「お前が生きたいなら、そこへ行っておいで」と言われた。

もう一人には「もう、わたしも行くから」と聞いてみた。

もう一人は「失う事など何もないからどうか元気でね」と言い告げられた。


 こうして名も無き少女はアマテスという少女に惹かれるようにその集団の踊りと音に身を任せ付いて行くことになった。

 それは稀にない、土の民の生き方の元素である事に気付かなかったのは偶然なのか、幸せなのか、それとも“美味しいこと”なのか理解には遠く及ばないが、名も無き少女にとっては名前が貰えそうな予感が表れていた。


「さて、どこへと向かうやら楽しみにしようね、私の“”よ」

「あなたの子?どうして?」

「新たに迎えたから子供として育てるの。これで新しい旅で色々覚えられるよ」

「ふぅん・・・、分かった・・・」


 新たに蛇の民から何かが誕生しそうな予感を宇宙に知らしめたのは、この闇の時代が始まって以来で、今まで受けられなかったような魅惑に踊らされるように生き永らえるのだった。再び一つの民となるまでに時が“秒”として刻まれる事も・・・。

誘いに乗るのか、誘いに乗らないのか、それによって違った世界が見えて来るのです。

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