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11、変容と分類

 あの光の束は何だったのだろう?あの不吉な色は何故、虹となったのだろう?どうして我々は変化を求めてきたのだろう?我等の“意志”は伝説、信託へと変わって往くのだろうか?

 星と星の動きがどうも怪しい。間にプラズマが発生している様だった。そこから新たなトンネルが現れた。何故か青白い空洞だ。宇宙間に干渉を起こす光る束を生命達は眺めていた。それは何と呼んだ?


「文明は新たな言葉を覚えてきた。それは様々だ。狭間とか空域とか宇宙に関する言葉だ。あれが光なら“ライト”と呼ぶのかな?」


 ライト・オブ・ホールの語源は「新たな光を呼ぶ穴」とも考えた。人類はそうやっていろんな言葉を創り出してきた。様々な時が刻まれていたが、人類は“時計”とは呼ばなかった。意志がそう告げたように星間トンネルが出来たようだった。どうやらその光の束は、いつからかやってきた光の束とそっくりだと神は思った。それもライト・オブ・ホールとか、ライト・オブ・シャイン等と呼んでいた気がする。


「あの3人が迎えられてきて、沢山の言葉を遺伝させてきた。文門なども幾つか現れた。それは平たんな道かもしれないけど、何だか懐かしい気がした」


 かつてオーズと呼ばれた男が居た。彼等は新たな大地を造り出したと伝記に載せられていた。彼も人類じんるいとなるまで様々な生命の頂を歩んできた一つの人類ヒトるいだった。彼等にも仲間・兄弟と呼ぶべき存在が居た。もし彼等があの3人との交信を遂げて居なければ今頃、小さな存在だったのかも知れないと。


そんな中だった!


キュォォアァン―――

キュオオオ―――ンンン

キョォアァアンンアアン


 星と星同士が共鳴を再び始めだす。強いエネルギーが間を抜けて黒い闇を創り出す。そこは光に似た眩くも目に見えない微細生命が宇宙を駆け巡る。その全体の海をうねり上げる様に、共鳴は更に反響をしあい、これまで紡ぎあげた生命の形式を変化させた。

 緑は赤へ、蒼は緑へ、土は白となっていった。あの赤い布が太陽に染まり黒く変化するような予感が“そのまま”になってしまった様だ。3人はその変化を唯々見守るように、神の機嫌が変わったのだと民達へ告げたが、民は理解できなかった。

 「これまでの文化と文明が一気に干上がる」という温度の変化も感じ取れたからだ。確かに虹の鉱石の再生能力を得たとしても、その力は少しずつ落ち込んで往くようだった。体の形が変わってゆく・・・。


「皆、落着け。これは単なる変化に過ぎない。時代が変わった予兆と考えればいい。“何かが起きる”ことを恐れてはいけない。今までが再生に拘った遺伝は新たな記憶を産みだすだろう」


 そう神の腕ミキュールが諭すのに、民達は落着かなかった。これまでにない変化が混乱を感じられたように覚えるのだ。これまでにも起きた変化が受入れられるのに時が刻まれてきたが、そういう感じの時の刻みとはまた異なる変化に感じられたようだ。身長はあまり変わらないようだが、神の頭脳ガヴリールはこう告げた。


「我等民は、これ以上の波に流れ落着くのだ。あの宇宙の変化を見ろ、全く変化が無い。まるで飴色のように輝いている。それは神の喜びだ。一切驚くことは無いからまず、水を飲むのだ」


 民達は落着いて水を飲む事にした。しかし、声が出ない。それは恐ろしくてどうしようもない恐怖に近い。まるで破壊的な痛みを感じているかのようだった。それを神の口、ウリュエルはこう介した。


「声を使うんじゃないの。最初の時代のように波長を与え合うとよい。あまり無理に口を開くと鉱石の力に逆らって裂けてしまうといけない。もう少し時が刻むのを待つのです。マーズよ、かつてスタヴァ―と呼ばれた頃と違う事が起きようとしている。どうか民を守って欲しい―――」


 これまで築いた建物や乗り物の形が丸くなったり、四角だったものが楕円形になったりして、元の鉱石のような形に戻ろうとしている。それは既に岩の山のような様子だった。生命達もまるで原生の頃のように変化し出した。それは大切な思い出だろうか、大事なことなのかハッキリした何かが壊れそうな予感がした。

 大地に山が作られ、そのヒビに滝が現われ、段差の多い大地に変化した惑星ゴ・ランズ。それは新たな息吹がささやかれている様である。その囁きによって魂やその意志が分裂を始めだしたのも感じられなかった。3人を除いては。


―どうも我等は変わってしまった様だ

>時が勿体ない。まるで命の働きが早まったような気がする。


 民達は、どうやら人格変化もきたした様だ。それはまるで人類分裂を始めるための準備スタートラインにも感じられる。3人はそれぞれ自らの使命を以って、彼等を導こうとしている。大地の変化は既に止まったのに食べ物を失ったかのような感じがしたからだ。


「どんなに緑が変わったとしても、色と質が変化したに過ぎない。食べようと思えば大丈夫だろう。未だ惑星のマグマは止まってはいないし、料理すれば大丈夫だ」


 そう思ったのは僅かの人類だった。既に味覚を失った者、既に嗅覚が感じられなくなった者。あれほど脳梁波だけの感覚に頼って生きてきたのに変化に耐えられなくなったようだ。それもあのライト・オブ・ホールが出現したことによって何もかもが変わっていた様である。神の遺伝はこう告げた。「あの光の束から新たに別の遺伝が落とされた」のだと、それは“変容”と呼ばれるモノだと、3人は告げた。

 もうその姿は、像状のように皮膚が固く、約3メートルと長身であること。そして蛇状のようにしなやかに動き160から190センチと平均身長であること。性別に分類差が現われ像が男、蛇は女が占める事が起きていた。いずれも頭脳に大差は無かったのに、体格的には像が恵まれ、頭脳的には蛇が恵まれていた。

 確かに大気濃度は80%に満ちてはいたが、通常とは異なる寿命と体格に変化が表れていたため、幼い場合は数十センチである事が確認できた。細胞変化が起きたのだ。


「ミキュール、これぞ人類の分類だ。あの光の束、ライト・オブ・ホールによる変容の表れだろう」


 民の一人はそう言った。惑星ゴ・ランズを占めていた土の民は、こうして“像の民”と“蛇の民”へと分けられた。それぞれ体格・性別・頭脳に差異が出たものの、それを“才”として示すようでもあった。この惑星は別の遺伝を引き受け、引継ぎ、異なる生命へと成長を遂げたのだった。性交現象は交信に留まるのだった。


「以前のように異なる交信だ。これはまるで遺伝を覚えた者同士でなく、遺伝子そのものが組み変わるような交わりに近い。3人から文化・文明を引継いだのにどうしてこうも不器用と器用に別れるのだろう?」

「像は腕が太い。しかし蛇は腕が細い。これで役割を変えることも出来るが少し不便だね」


 性別変化が無いのに、どうも言葉遣いが変わった様に感じられた。まるで男性・女性らしさを備え切った感覚に近い状態になっていた。


 これこそ、新たな意を産む道理に叶うようであるとも―――。


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