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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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村長と国王はだいたい同じ

「――はい次」

「はっ!」


 一人、また一人と稽古をつけ、倒していくこと……何人だろう?

 もうどれだけ相手をしたのかあいまいになってるけど、たくさん相手をしたのは間違いない。もしかしたら戦士だけじゃなくって、最初から俺がこの村のまとめ役になる事に同意していた普通の村人まで相手しているかもしれないけど、一々そんなことを考えている暇はない。


 エラ・リラと戦ってから数日後。俺は村人たちを相手に稽古をする日々を送っていた。


 最初に稽古をつけようと思って行ったエラ・リラと戦いを見てから、村人たちは億すことなく挑んできた。無謀というか勇敢というか、まあ相手も稽古だと分かっているから挑んでくるんだろう。最初は距離をとっていたくせに稽古をして力を見せると近づいてくるのは獣人らしいと言えばいいんだろうか?


 まあそんな単純さのおかげで最初の目的である主としての力を見せつけることはできた。訓練も、まあそれなりにできていると思う。村人たちの態度も、最初の時よりもずっといい感じになっている。でも一つ問題がある。問題というか、気に入らないところというか……直してほしいところ?


「ボス! ありあとうざっした!」

「リーダー! 次は自分でおねあいしゃっす!」

「主!」

「王よ!」


 ……呼び方統一してくれないかなぁ。

 俺のことを自分たちのトップだと思ってくれるようになったのは嬉しいし、ありがたいことなんだけど、全員呼び方がバラバラなのはなんで?


「主! 他の村の者たちが来たぞ!」

「ああ、やっと来たんだ。じゃあ悪いけど、今日のところはこれで終わりな」

「「「「はっ!」」」」


 呼び方はバラバラだし態度もバラバラなくせに、なんでこういう時の反応だけ整ってるんだ? 別にいいけどさ。


 それよりも、今は新しく来たっていう他の村の人達について考えよう。

 数日前に誘ったことで各村の住人たちがそれぞれ数人程度こっちに来て協力してくれるらしいけど、上手くいくかどうか……


 最終的には全員殴り飛ばせばいうことを聞くんだから、もういっそのこともう一回村を回って全員殴ってこようか? そんな野蛮な考えが湧いてくるが……ダメだな。獣人の暮らしに染まってくるの早すぎるだろ。


「新たな主よ。我らもあなた様にお仕えします」


 なんて溜息を吐きながら他の村からやって来た者達を出迎えに行ったんだけど、何だこれ?


 どうしたことか、俺が愛に行くなり他の村の住人たちはその場に跪いて忠誠を誓い始めた。本当になんなんだ? 数日前の時とあまりにも態度が違いすぎやしないか?


「随分と簡単に従うんだな」


 大人しく従ってくれるというのならありがたいことではある。でもそのあまりの変化に、思わず皮肉じみたことを口にしてしまった。


「主の戦いを見ていたからな」


 エラ・リラは笑いながらそう言ってきたけど、俺の戦いってどれのことだ? こいつらが俺を認めるくらい派手な戦いって言うと、この村で稽古をすることにした初日にエラ・リラと戦った時の事か? でもその時にはよその村の人達は数人程度しかいなかったし、この人たちはその戦いを知らないはずだ。


「俺の戦い? それっていつのだ? リラとのやつじゃないだろ?」

「主が村人を相手に手合わせをしている時だな。さっきのやつも観ていが、気づいていなかったのか?」


 村人との手合わせって……その程度の戦いを見てこんなひれ伏してるの? ならなんで前にそれぞれの村に行った時には忠誠を……ああ。その時は戦わないで威圧だけして終わったんだった。そうなると、実際の強さという意味では今回初めて知ることになるのか。あんな加減した稽古で強さなんて知れるのかわからないけど。

 というか……


「マジかよ……村の中に誰か来たらわかるようにしてたつもりだったんだけど……」


 一応この村が敵に狙われているらしいし、ここ最近は普段とは違って派手に動いているから襲ってくるかもしれないと考えて、訓練しながらも敵が来ても平気なように警戒していたつもりだった。

 それなのに村に入られていたことに気づかなかったなんて……ちょっとショックだ。


「ああ、村の中には入ってこなかったな。遠くから伏せて観察してただけだ」

「あ、だから気づかなかったのか」


 それならしかたない、のか? いや、でもドラゴンは自分の縄張りに誰かが入ってきたらすぐに知覚することができるっていうし、ジジイは森の中でも数キロ離れたところの状況を認識することができていたし、やっぱり俺が油断していたんだろう。数キロ先、とまでは言わないけど、それでも一キロくらいは把握できるようにしておきたい。……修行するしかないな。


「それで、どうする?」

「どうもこうも、味方にするつもりだったんだ。受け入れるよ」

「ありがとうございます!」


 そうして他の村の住人達は一斉に頭を下げ、正式にこの村に移住することとなった。

 これで人手が増えたし、獣人は人間よりも動けるから何をするにしても役に立つだろう。家を建てるのも港や畑を作るのも、時間の短縮をすることができるはずだ。


 とはいえやって来た村人をどこに使うのかを考えるのは俺の仕事じゃない。別にやってもいいけど、ライラがやらせてくれないし仕方ない。


「あとのことは任せるよ」

「はっ!」


 そう言って俺は近くにいた元々の村の住人に新しくやって来た彼らのことを任せ、自分に与えられた家へと戻っていくことにした。


「……なんかアレだな。村の長とか、集団を束ねる頭って感じじゃなくて、王様になった気分がしてくるよ」


 あくまでもいくつかの村のまとめ役であって国の王じゃないはずなのに、ああも畏まって忠誠を誓われると、本当に自分が王様になったかのように思えてくる。


「? 何か違うのか? 王なんて少し大きな集団を束ねる長なんだからそう大して変わらないだろう?」

「村の長と王を同列に語るのってどうなんだ?」


 俺の言葉を聞いてエラ・リラ不思議そうに首をかしげているけど、どう考えても違うだろ。


「確かに規模は違うが、己の力で他者を纏めているのだから同じだろ。人が集まり村ができ、村がでかくなって町ができる。その町がいくつか集まったら国だ。ほら、やってること自体は同じだ。結局は人をどれだけ集め、率いることができるのかということだけの違いでしかないだろ」

「そう言われると村の長も王様も変わらないような気がしてくるな。……でもその割に自分が王の娘だってことを自慢してなかったか?」


 確か最初に自己紹介をした時に自分はこの国の姫なんだぞ、というようなことを自慢げに話していた気がしたんだけど、それは気のせいだっただろうか?


「? 王は凄いだろ? 村の長も国の王も本質ややることは同じだ。でも、規模が違うのは普通にすごいことじゃないのか? 凄いことは誇るべきだ」

「ああ、そういうことか。まあ確かに、やる事の本質は同じだろうし、規模が大きいのは凄いことだよな」

「そうだ!」


 そうらしい。

 そんな単純に物事を考えられるって、いいよな。人間が複雑に考えすぎているだけなのか、それとも獣人が単純なのか、どっちなんだろう?


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