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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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こっからは本気で――ぷえ

 敵襲だと言われてすぐに動きだしたはずなのに、俺が辿り着いた時にはすでに敵が飛び上がり、船に近づいていた。

 おそらく近くまでは海の上を走り、近づいてきた辺りで跳んだんだろうが……ダメだな。ここまで近づかれると魔法を使ったら船ごと巻き添えになる。


 仕方ないので船を壊さないように迎撃しようと身体強化の度合いを強めたのだが、そこでふと自分の足下にあるものについて気が付いた。足下にあるものというか、床の素材というべきか。


 今俺の立っているのは船の上で、思い切り踏み込めば壊れてしまう。相手の攻撃を真正面から受け止めても床にダメージが入るだろう。相手を攻撃しても、相手の受け方次第では壊れることになる。


 そう思い至り、思わず動きを止めてしまった。


「獲物だっしゃおらああああ!」

「ふっ!」


 俺が迷っている間にも敵の獣人は船へと近づいており、船員の一人を攻撃しようとしていたところをライラが迎撃し、敵の攻撃を逸らした。


 だがそれでも完全に攻撃の勢いを殺しきれなかったのか、ライラの足下の床がピシリと音を立ててへこんだ。


 攻め込んできた獣人は女性だが、下手な男性よりは力があるようだ。


「ああんっ!? んだてめえ。邪魔してんじゃねえぞくそったれ女!」

「邪魔なのはそちらだろう。――カルダート剣術二式、剣竜衝破!」

「っ!」


 魔力を込めた突きが獣人女性の胸を狙うが、女性の方は体をのけぞらせてライラの突きを避けた。

 剣撃が宙を穿ち、その周囲の空間を引き裂く。それによって攻撃を避けたはずの女性も首元に傷を負ってしまい、驚いたように目を見開きながら距離をとった。


 ……結構やるな。あの獣人。これまで一緒に行動していただけあって、ライラの強さは知っているつもりだ。ドラゴンほどではないけど、ドラゴンと〝戦い〟を行えるくらいには強い。多分人間の中でも上位に位置する強さだろう。

 そんなライラの攻撃を避けたってことは、あの獣人の女性はかなり強いことになる。


 あの獣人女性が一人ならいい。でももし組織だって襲ってきたんだったら……めんどうなことになるかもしれない。


「はっ……やるじゃねえの」

「船に傷をつけないように加減をしたとはいえ、今のを避けるか」

「加減だあ? んだよ。手えぬいたってのか? ざけんなよ、クソ女。それはあたしに対する侮辱だ!」


 苛立たし気に叫んだ獣人の女性は、それまで抑えていた力を開放したかのようにその気配、圧を増した。


 これも一種の魔力なんだろうけど、魔法とは違う力の使い方は少し興味深い。ドラゴンの発する威圧感に少し近いか? 


 でもこれは……ちょっとまずいかもしれない。


 別にライラが負けると思っているわけではなく、船がね。


「そんなふざけたことをぬかす余裕があるってんなら、こっちも加減なんかしねえ。てめえらを生かして手下にしてやろうと思ったが、止めだ。こっからは本気で――ぶえ」


 何か叫びながら全身に力を入れ、今にもライラへと襲い掛かりそうだった獣人の女性。その顔面を横から殴りかかり、ぶっ飛ばした。

 加減したとはいえ強化した一撃を不意打ちで喰らった女性はそのまま飛んでいき、海に落ちていった。これで良し。


「跳んできたのって一人だけ?」


 他に仲間がいるようならそっちも対処しないといけないけど……見た感じは一人だけでいいんだよな?


「あ、ああ。そのようだな。後続や他の船は確認してみない事にはわからないが」

「そっか。その辺は確認してもらうとして……あれってどうする? 加減したから死んでないと思うけど、回収した方がいいのか?」


 まだ海に沈んだまま上がってこないけど、このまま浮かんでこなかったらどうしよう?

 襲い掛かって来たのは向こうだし、これで死んだとしても俺が勝ったんだから誰からも文句は言われないだろうけど、それはそれとして駒として使いたいんだったら回収するべきなんだろうか?


「……いや、回収に時間をかけるくらいならば速やかに上陸してしまった方がいい。どうせ奴は戦いに負けたのだから、二度目の襲撃はないはずだ」

「あー、戦いに勝てば捕まえなくても従順になってくれるっていうのは楽でいいよな。そこは普通の人間よりも楽でいい……いや、そもそも戦いを仕掛けてこない方が楽だから人間の方がいいのか?」

「人間は人間で面倒なこともあるから、一概にどちらがとは言い切れないな。まあ、いきなり襲ってくるというのはやめてほしいことは間違いないが」


 ライラはそう言って辟易とした表情を浮かべているけど、色々大変なことがあったんだろうなぁ。まあ、俺の父親である国王のそばにいれば色々見てきただろうし、そういう反応になるのも仕方ないんだろう。


 目が合ったらバトルを仕掛けてくる獣人も面倒ではあるけど、戦いに勝ったらあとくされなく従ってくれるのは楽でいいような気もする。


 どっちも良し悪しがあって、どっちがいいかは一概には言えないか。


「なんにしても、船に損傷なく終わったんだからひとまずは良し、ってところじゃないか?」

「……そうね。ありがとう、助かったわ」


 助かった、なんて言っているけど、あのままライラが戦っても負けることはなかったと思う。ライラの攻撃を避けられはしたけど、それでも少しずつ詰めていけばまともに攻撃を入れることができていただろうし。


「ライラだったら問題なく迎撃できただろ」

「どうかしらね。迎撃自体はできていたかもしれないでしょうけれど、本気で戦うことになると、船の安全が保障できないわ。それは実質私たちにとっては負けたようなものでしょ?」

「あー、船か。確かにな。この船でもう一つ先の大陸までいかなくちゃいけないんだから、こんな序盤で傷つけるわけにはいかないか」

「ええ。だから助かったわ」


 そう言えば船の上だった。それが理由で最初力を出すことをためらったっていうのにもう忘れてるとか……はあ。しっかりしないとな。これからまだしばらく船で行動するんだし、船の上で戦うんだって意識をしっかり持っておかないと。


「それにしても、相変わらず切り替えが凄いよな。はっきりしてるっていうか、話してる途中でいきなり口調も態度も変わるからびっくりするよ」


 剣をとって戦っているときは騎士然とした言動になるのに、剣を収めたら貴族の令嬢のような振る舞いに変わるのは、見慣れていても慣れない。


「剣を振るう時は騎士としての心構えでいることに慣れているのよ。いえ、慣れているというよりも、そうすることが癖になってるのね。剣を握ることと騎士として振舞うことが同じものとして結びついてしまっているの。だから勝負の場では自然と固い振る舞いになってしまうのよ」

「へえ……まあそうか。程度の差はあれ、仕事や戦いが関わると自然と意識が切り替わるよな」


 騎士として活動するには貴族の令嬢としての意識では問題だろうし、そのあたりのことも大変なことがあったから今のような状態になったんだろう。


「実家で貴族の娘として振舞っている時でも、剣を握ると騎士として振舞ってしまうことがあるから困りものなのだけれどね」


 そう言ってライラは苦笑して話しているが、あんまり笑い話じゃないような気がする。



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