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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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ドラゴン達の戦いが終わって

 

 後に残ったガルは、昼に消し飛ばした左腕とは逆に今度は右腕と右の翼、そして肩からわき腹にかけてが焼滅している。


 流石にそんな状態では飛び続けることはできないのか、ガルはわずかにふらつきながら滞空していたものの、ふっと力が抜けたように落下していき、ドシャッと音を立てながら落ちていった。


「ようやく終わったか……はあ」


 呟きながら大きく息を吐き出し、落ちていったガルを見下ろすが……


「……死んでないよな?」


 多分死んでないはず。半身消えたようなもんだけど、全身のほとんどが魔力でできているドラゴンならそう簡単に死なないはずだ。……はずだよな?


 ……あ、動いてる。どうやら生きてるみたいだけど……ああ、人間の姿になったな。なるほど。人間の姿になる時に体を作り直すことで傷を消すのか。

 腕が吹っ飛んだことで魔力の回路がどうしたこうしたって言ってたから完全に治ったわけじゃないし、見かけだけらしいけど、それでもああして治ったってことは死んでないってことだろう。


「あ……リーネット」


 死んでいないとはいえ重傷を負ったことは間違いないんだし、一応治癒の魔法をかけておこうかと思ったけど、落ちて倒れているガルのそばに駆け寄るリーネットの姿が見えたので何とかしてくれるだろう。


「また派手にやったわね」


 ガル達のことを眺めていると、不意に声をかけられた。この声は……ライラが来たようだ。


「ライラ。状況はどうなった?」

「城の制圧は終わったわ。潜んでた奴らも処理したし、今夜はもう何もないでしょうね」

「あったら泣いてたところだよ」


 流石に疲れた。これ以上何かがあっても動けないぞ。


 まあ今日はいったんやることは終わったんだ。ちょっとやりすぎたとは思っているし、この国のトップであり神様的な立場であるガルをあそこまで傷つけたのだから後で何かあるかもしれない。

 でも今は少し休ませてほしい。


「っと……」


 城に与えられた部屋へと戻ろうと歩き出して数歩。足をうまく動かせずに転びそうになってしまった。


 そばにいたライラが支えてくれたから倒れることはなかったけど……ダメだ。体にうまく力が入らない。


「大丈夫?」

「ん……流石に疲れたよ」


 昼と夜、一日に二回もドラゴンと戦闘をしたんだ。疲れないわけがない。

 しかも一応身体性能の強化はしていたとはいえ、ほぼ無防備な状態でドラゴンの一撃を受けたりもした。


 突発的な新技を使いもした。精神的にも肉体的にも結構追い詰められていたし、勝ったとはいえ疲労が限界になるのも当然と言えるだろう。


「でしょうね。あれだけ派手に戦っていたんだもの。疲れてないなんて言ったら驚きを通り越して呆れてたところよ」

「ガルも当分は起きないだろうし、ちょっと休んでもいいかな?」

「ええ。今日だけで二回も戦ったんだもの。ろくに休めてもいなかったし、しっかり休みなさい」

「うん……ガルが起きても暴れるようなら俺が対処するから、すぐに起こしてよ」


 本人は気絶して意識を失えば契約が終わるって言ってたけど、それも絶対じゃない。そうかもしれない、程度の曖昧なものだ。だからもう一度暴れだす可能性があるわけで、その時に対処できるのはこの国では俺しかいないだろう。


「わかったわ。だから今は安心して寝てなさい」

「わか、った。おやすみ」

「ええ。おやすみなさい。それと、お疲れ様」


 そうして言葉を交わした後、瞼から力を抜いて目を閉じたのだが、その直後からの記憶はなかった。

 ――◆◇◆◇――


「――ガル。世話になったな。ありがとう」


 俺達が城に来てガルと戦った日からおよそ一か月。予定よりも大幅に滞在してから次の大陸へと出発することになった。

 本来なら一週間程度のはずだったんだが、それが一か月も延びたのには理由がある。


 まずは船の準備。近隣の海や隣の大陸まで行く程度であれば既に存在していた船をそのまま使うことができたが、ろくに休むことなくさらに奥の大陸まで行くとなるとなるとそれなりに備えが必要だった。

 そのため、船の強化のために時間がかかったというのが一点。


 それから、まあ仕方ないことではあるけどガルの治療のために時間がかかったというのもある。

 ガルはあの日体の半分近くが消し飛び、一応外見上は治りはしたが、それでも本当の意味で治ったわけじゃない。

 なんでも、角や翼っていうのは物理的な肉体っていうよりも魔法の発現器官って方が正しいような部位であり、自分用に道を作り直す必要があるんだとか。


 ドラゴンの体はほとんどが魔力で構成されてる。まあ実体を持ってるし半物質ってところなんだろうが、そのためドラゴンって基本的にみんな自分の好きなように体の内側にある魔力が流れる道とか効果を作り替えてるらしい。職人が道具を自分好みに改造するようなもんだろうと勝手に思っているが、多分そう大きく外れてはいないと思う。


 ただ、怪我をしたときがめんどうだそうだ。魔法で治癒をかけて再生させることもできるけど、それだとドラゴンとしての基本的な体が作られるだけで、元の自分の体が治るわけではない。だから治った体を改めて自分ように調整しなおす必要があるとのことだが、その調整が一人では時間がかかるようだ。


 だがそれも一人でやれば、の話であり、ドラゴンの魔力が使える俺が協力すれば時間を短縮することができるとのことだったので、協力することになった。


 そういった理由から出発まで一週間ではなく一か月かかることになったが、元々は出発まで半年かかってもおかしくないなんて話もあったんだし、それが一か月程度まで短縮できたんだから十分だろう。



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