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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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守護竜様を助けに

 

「お二方! ご無事でしたか!」

「ああ。襲われはしたが怪我などはない」

「申し訳ございません。このような事態になってしまい――」

「そんなことよりも、状況の説明を」


 謝罪と共に頭を下げようとしたリーネットを制止して、ライラは説明を求めて話を促した。


「……はい。現在この城は襲撃を受けている状況ですが、賊も無差別に殺しているわけではないようです。ガルディアーナ様と連絡がつかないことを考えると、おそらくはガルディアーナ様の暗殺が目的ではないかと思われます」


 リーネットは眉を顰めて話したが、そこにある感情は申し訳なさではない気がする。いや、申し訳ないとは思っているんだろう。けど、それ以上に悔しいと思っているように感じられる。後悔……いや、葛藤かな?


「守護竜様の暗殺か……」


 っと、そうだった。まずはそれについて考えるべきか。でも、守護竜の暗殺……つまりはドラゴン殺しなんて、そうそうできる事じゃないぞ。


「ドラゴンを殺すのなんてそう簡単なことじゃないぞ? それに、俺達の方に来たコレはどうなってるんだ?」


 ガルを狙うのはまあいい。それは国の問題だし、色々とあるだろう。でも俺を狙ってきたのは? ガルの友人として招かれたから、なんて理由じゃないよな?


「ドラゴンと言えど、人化の最中は性能が落ちると聞き及んでおりますので、寝込みを襲うのは効果的かと。ガルディアーナ様も城を壊さないようにするために、ある程度力を押さえて戦うことになるでしょうし。お二方を襲った者たちは、陽動、あるいは客人を殺すことで守護竜の名に傷をつけるつもりだったのではないかと」

「ドラゴンの元にまとまっている国でも反乱分子はいるわけか」

「ドラゴンの元でまとまっているとはいえ、所詮は力を恐れて押さえつけられているだけともとることができますから」


 そうか。まあなんでこんなことになってるのかは理解した。その考えが違ったとしても、今の方針を決める役に立てばそれでいい。どうせすぐに出ていく俺達が気にすることじゃないんだから、詳しい理由なんて終わった後で勝手に調べてればいい。


「理由は分かった。我々はどうするべきだ? 私の考えでは守護竜様の元へ向かって合流すべきだと考えるが?」

「……そう、ですね……狙いが守護竜様であるのなら危険の許へと向かわせることになるのですが、あるいはお二方の場合はそれが最も安全かもしれません」

「俺達の場合……まあ、それなりに戦えるしな」


 ドラゴンはそう簡単に殺せないという考えは変わらない。でも敵もこれだけのことをしたんだからドラゴンを殺す算段も付いていただろうし、絶対にありえないとは言い切れない。


 ぶっちゃけた話をするなら俺達の場合はどこにいても危険度はそう変わらないだろうし、むしろ、ガルと合流して万が一の事態をつぶしておいた方がいい気がする。流石に敵もドラゴン級の戦力を二対同時に相手にすることは考えていないと思うし。


「ならば守護竜様のところへ向かうとしよう」

「承知いたしました。こちらになります」



 そうして走り出してしばらく、走りながら一つの疑問が浮かんできた。


「……でも、ドラゴンが戦ってるにしては静かだな」


 そう。音がしないのだ。

 俺達が走っている音は当然する。他に誰かが戦っているような音も、怒号も悲鳴も聞こえてくる。

 でも、ドラゴンが暴れているような音は聞こえないのだ。ドラゴンの姿は言うまでもないが、人間のまま戦ったとしてもかなり派手に壊れると思うんだけど、その気配がない。


「隔離のための結界を張っているのかもしれません。加えて、ガルディアーナ様も城を壊さないように加減をしているとなれば、音や振動の類がなくとも当然のことでしょう」

「城を壊さないようにか……自分が狙いだってわかったなら、一旦逃げてドラゴンに戻ればいいのに。それだけで暗殺は失敗だろ?」

「ですがその場合は城の者がどうなるかわかりません。あの方は自身の庇護下にある者には甘いですから」

「庇護下ねえ……流石は守護竜様ってか」


 あんな適当な奴に見えても、ちゃんと守護竜をやってるってわけだ。

 でも、合理的に考えるなら引いた方がいいんじゃないだろうか? 城の者がどうなるかわからないって言うけど、目標である守護竜がいなくなった状態の敵が最後まで戦うかって言ったら、そんなことはないだろうと思う。


 まあ、あんな情けなく見える奴でも民を守るために逃げずに残ることを選択するなんて、なかなかかっこいいな。


「この先を曲がったらガルディアーナ様の私室があります」


 そう言われて廊下の角を曲がった直後、俺達は足を止めることになった。


「っ!?」

「ドラゴッ……!?」

「ガルディアーナ様!?」


 それまで通りの廊下があると思っていた場所は壁と天井がなくなり、外の景色が見通すことができる場所となっている。ここだけを見れば廃墟と言っても差し支えないだろう。


 そんな瓦礫の上に、犯人と思しき巨大なドラゴンがたたずんでいる。そして、その周りにはそれぞれ使用人や兵士、騎士などの格好をした複数の人影……の死体。

 まあ実際に死んでいるのかはわからないけど、倒れているということは倒したってことなんだろう。おそらくはあの者達に襲われたことで戦うことになり、ドラゴンの姿に戻ったんだと思う。


「城を壊してまで変身したってことは、それだけ追い詰められたってことか?」

「かもしれないな。守護竜様が危険を感じる度合いは私にはわからないが、リーネットは再三城を壊さないためにドラゴンに戻らないと言っていた。それだけ〝そう〟なのだと信じていたのだろうし、信じられるだけの理由はあったのだろう」

「ドラゴンがそんな信頼を壊してまで本気になるなんて……どんな奴らが相手なんだ?」


 ガルディアーナは逃げずに戦うことを選んだが、それはリーネット曰く民を守り、城を守るためであり、守護竜としての責務……誇りからの考えなのだろう。


 城を破壊するなんていう誇りを傷つけるような行為をしてでもドラゴンが本気を出さないといけない相手ということだろうが……なんだろう。違和感がある。


 ガルが本気を出す相手という割に何というか……弱い気がする。

 いや、ある程度は戦えるのだろうけど、なんだかそれほど強くない感じがする。少なくとも、あれでドラゴンと戦えるかって言ったら、知ってる中で一番弱いドラゴンでも普通に負ける程度の力しかないように感じる。


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