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今だ、殺せ!

 ――◆◇◆◇――


「どうぞこちらへ」

「おお……」


 到着した場所はまさに〝城〟といった風情の場所だった。日本式ではなく西洋系の雰囲気。

 馬車から降りて門をくぐり、リーネットの案内を受けて城の中を進んでいくのだが、何を見ても物珍しさがある。


「ライラ。城ってどこもこんな感じなのか?」

「基本的な構造は似ているけど……私が知っているものより感覚が広い気がするわね」

「間隔が広いって……この廊下とか?」

「それもだけれど、全体的にサイズが違う気がするのよ。なんといえばいいのか……たとえるなら、人間ではなく巨人が通ることを前提に作られているとでも言えばいいのかしらね?」


 言われて見れば確かに広いか? 城なんて入ったことないしこんなものかとも思ったけど、確かにテレビで見た時の城はこんなに広くなかったかもしれない。


「その通りです。巨人ではなくドラゴンですが、城の正門から玉座までは守護竜様が不便なく通り抜けることができるようになっております」

「ああ、ドラゴン基準か。だから広くなってるんだ」


 それなら納得だ。確かに人間サイズの作りじゃドラゴンは中に入れないよな。部屋に向かうにしても、壁を破壊しながら進むことになる。流石にそんなバカなことはしないか。

 ……あれ? でもちょっと待てよ?


「ん。でもあの守護竜、様って人化できるんですよね?」


 実際さっきも帰っていくときに人に戻っていたし、だったら普通のサイズで作ってもよかったんじゃないだろうか? そっちの方が余計な幅をとらずに済むから使い勝手もいいと思うんだけどな。


「はい。ですがそれも今だからこそで、この国を作った当初は人化することはできなかったとか。ですので、ドラゴンの姿のままでも問題ないように城が作られ、その当時の設計を伝統として引継ぎ続けているのです」

「へえー。ドラゴンの作った国らしい伝統だな」


 なるほど。まあ最初から人間の姿になれるわけじゃないか。ジジイ達もある程度練習が必要だって言ってたし、守護竜が国を作った時はまだ若かったんだろう。

 ブレスも使えず、人化もまともに行うことができないような未熟さでよく国を作って独り立ちしようと思ったな。それだけ人間のことが好きだったんだろうか? ドラゴンって一部の変わり者以外は人間のことをおやつとか害虫くらいにしか思ってないみたいだし、それを踏まえるとかなり異端だよな、守護竜って。


「……無礼を承知で一つだけお伝えさせていただきます。この先ご不快なこともあるかもしれませんが、どうか寛大なお心でお許し下さい」


 今の俺達はこの国における神様である守護竜様の客人という立場らしいが、それでも城に滞在する以上は国王に挨拶をしないわけにはいかない。そのため、現在は挨拶……謁見のためにこの国の王の許へと向かっているのだが、その途中でリーネットが不意に足を止めてこちらへと振り返って来た。


「え……や、まあ別にそんな何かするつもりなんてないけど……何かある予定なんですか?」

「そういうわけではありませんが、この国は守護竜様を信仰しております。そしてその最たる存在が、この国の国王陛下です。あの方は信仰というよりも、妄信と言っても差し支えないかと。端的に言ってしまえば、厄介オタクです」

「厄介オタクって……」


 まあ国を作ってくれた神様みたいな存在がすぐそこにいるとなったら、そういう信仰心が高まっても仕方ないのかもしれないけど……なんだかそこまで言われると会うのが怖くなってきたな。

 一応妄信と言っても守護竜信仰者達とは違うんだろうけど……多分方向性が違うだけで信仰の熱量は同じくらいなんじゃないだろうか? そう考えるとなんだかヤバそうな気がしてくる。


「でも何となく理解しました。同担拒否とか解釈違い許さないマンとかじゃないんですよね?」

「はい。守護竜様はあくまでも〝みんなの守護竜様〟という考えですので。国王としては優秀ですので無体を為すことはあり得ないとは思いますが、守護竜様が絡むとどうなるかわかりませんので一言先にと」

「ありがとうございます。先に知ることができてよかったです」


 もし会った後に守護竜を蔑ろにする発言をしたり、俺はあいつをボコしたんだぜ、なんて言ったら大変なことになっていたかもしれない。

 戦ったという出来事や、俺が勝ったという事実を話さないことはできないかもしれないが、話す場合でも言葉を選んで相手を持ち上げるように話した方がいいだろうな。


「こちらで陛下がお待ちです」


 そうして辿り着いたのは玉座の間。大きな両開きの扉の前にいた騎士に見つめられながらも、リーネットの言葉と同時に開かれた扉の奥へと進んでいく。


 扉の奥にはかなり広い空間があり、それこそドラゴンが入っても問題なく動くことができるほどの広さがあった。

 扉自体もかなり出かかったが、やっぱりドラゴンが使うことを前提としたサイズとなっているんだろう。


 そんな部屋の奥には、玉座が三つ。二つが前で、一つが後ろの一段高くなった場所という三角形に配置されている形だが、三角形の頂点……一つだけ後方の高い場所にある玉座に座っているのは先ほども見た銀色の女性。守護竜の人化した姿だ。


 なんであいつがそんなところに座っているんだ。普通は王が座る場所じゃないか、と思ったが、政治的なトップは王でも国のトップという意味では守護竜になるみたいだし、この国は守護竜の国ともいえる場所だ。一番前の偉そうなところに守護竜の席を置くのは当然なのかもしれない。


 そうなると残り二つは……王様と王妃様用ってところか?

 片方は空いているけど、もう片方には男性が座っている。あの人物がこの国の王なのだろう。


 とりあえず、今この状況では礼儀を尽くしているようにふるまうべきだろうけど……ここで一つ問題が。


 俺、礼儀とか知らないんだけどどうしよう。

 人間的なマナーとかは知ってるけど、城で王様にあった時用の作法とかまったくもって知らない。


「今だ! やれ! そいつらを殺せえええ!」


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