表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/79

騒ぎの首謀者

 ――◆◇◆◇――


「これでここにいるのは全部か」


 魔法の痕跡を追ってやってきたのは市街地の少し外れたところにある倉庫。

 そこでは子供達が眠らされ、箱の中に詰め込まれていた。

 詰め込まれていたと言っても解体されて、というわけではなくまだ生きた状態だったので間に合ったと言っていいだろう。ここが竜人もどきを作っている場所じゃないんなら、多分これからどこかに運び出すつもりだったんだろう。


 そんな箱に詰め込まれていたリリを助けようとしたところ、竜人もどき達がまたも俺の前に姿を見せた。

 まあ、彼ら自身の意志ではないんだろうし、こんな場所にいるんだから出てきてもおかしくはない。


 何にしても、俺の前に出てきた以上は必ず殺す。

 とはいえあまり派手にやりすぎてもこの倉庫が壊れるかもしれないし、さっき空き地で使った竜魔法は使えない。まああれば広く散っていた敵をまとめて潰すために使っただけだし、広がらないでまとまってくれているならいくらでもやりようはある。


「二本……いや、三本か。――『竜爪雷斬』」


 手の先に雷で作られた爪を三本生み出し、ワイバーンを倒した時のように地面と建物の一部をえぐりながら竜人もどき達を消し飛ばす。


「……最後にドラゴンの力を体験できたんだ。それを誇りに思って死んでいけ」


 死んでいった者たちにそれだけ告げ、再びリリ達へと向き直る。他にも出てくるかもしれないし、さっさとここを出よう。


 しかし、どうしたものかな。リリを助けるのは良いんだけど、他にも捕まってる子供達がいるわけだし、でもそれら全員を連れていくことはできない。

 とりあえずこの場はリリだけを助けて、あとは竜の爪先の人達を呼べばいいかな。


「リリは助け出せたけど……この感じだと、他のところでも同じようなことが起こってるみたいだな。ギルドに行った後に止めに行くか」


 俺が戦った場所以外でも町中で騒ぎが起きている。多分その騒ぎが起きている場所全部で竜人もどきが暴れているんだろう。

 俺にとっては敵にならない存在とはいえ、普通の町民たちにとっては十分な脅威だ。何とか出来るなら何とかした方がいいだろう。

 大々的に動けば竜魔法のことがバレて問題になるかもしれないが、もう今更だ。これまで何回も使ってきたんだし、今更隠したところで大した違いはないだろう。

 何だったら、面倒ごとになりそうだったらその時点で街から出ていけばいいわけだしな。


 そう考えてから、まずはリリをギルドに連れて行こうと歩き出した直後、不意に声がかけられた。


「申し訳ないが、それはやめていただきたい。ドラゴン様」


 声の聞こえたほうへ振りむくと、そこにはローブを被ったいかにも怪しげな人物が立っていた。

 誰だ? それに、なんで俺のことをドラゴン様なんて呼び方をするんだ?


「ドラゴン様? 何を言っている。俺はどこからどう見ても人間だろうが」

「何をおっしゃいます。それだけの力を有していながら隠しきれるはずがありません」

「ああ……見ていたのか。それで? 今回の騒ぎの首謀者ってことでいいのか?」

「はい。私は守護竜信仰開拓派のラキスと申します」


 どうやら俺が竜人もどき達を倒すのを見られていたようだ。まあそうだよな。あれだけ派手に敵の拠点で暴れたんだ。見られてるに決まってるか。

 でもそうなると、やっぱりもう竜魔法を隠す意味がないな。こいつにバレてるんだったら、他の仲間にも伝わっているだろうし。


「守護竜信仰……例のドラゴン教か。ちょっと興味はあったけど、話を聞けるような相手じゃないみたいだし、とりあえず不愉快だから叩き潰させてもらうよ」


 まともに研鑽を積んでドラゴンに近づこうっていうんだったら、普通に話をしていただろうし、それなりに仲良くなることもできたかもしれない。

 でもこんなふうに人を攫って無理やりドラゴンに変異させるなんてことをしでかす連中と仲良くなる気なんてない。


 本来なら捕まえて色々喋らせるべきなのかもしれないが、それは俺が考える事じゃない。ここで加減をして逃げられても面倒だし、今回の件を引き起こした犯人のことを許すつもりはない。だから、ちょっと殺しておこう。


「叩き潰す? その傲慢さ、流石はドラゴン。ですが……いくらあなたがドラゴンと言えど、守護竜様ではない。あなたは……お前は気まぐれで人界に降り、いたずらに人を傷つけ、すべてを破壊していく邪悪なドラゴン! ならば我々は我々の幸福のために、未来を守るために、お前を討つ!」


 そう言ってローブをかぶっていた人物はローブを脱ぎ捨て、その身を露わにしながらなんかかっこよくほざいている。

 ローブの下には鎧も何もつけていない、それこそ街中を普通に歩いているような一般人と変わらない女性の姿があった。普通と違うのは、腰に二本の剣が差してあることくらいだろうか? それだって冒険者なんて存在のいるこの世界では特に珍しいとは言えないものだ。


「……なんかこっちが悪者になってるけど、この場合の悪者はそっちじゃないか? これだけ街を壊して人路殺して、かなり被害が出てるけど?」


 いまだに騒ぎが収まっていないことを考えると、多分人死にもそれなりの数が出ているだろうし、街の建物だって壊れているだろう。そんなことを起こした輩が正義を語るなんて、はなはだ疑問だ。


「この程度の被害など、十年もすれば元に戻る。その程度の被害など、被害が出た内に入りはしない。むしろ、その程度で我々人類が新たな領域にたどり着くための糧となれるのだから、それは良いことであるに決まっている!」

「あー、だめだこれ。ドラゴン信仰者は頭おかしいやつしかいないって言ってたけど、本当にそうなんだなぁ」


 これ、百人の未来のために一人を犠牲にすることを本気で正義だと思ってる輩だ。

 多くの人を助けるために百か一のどちらかを選択することはあっても、その選択はどちらにも正しさなんてない。自分の正義を語るときにその理屈を持ち出すこと自体が間違っているのに、それを理解できないバカ野郎。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ