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ドラゴン村へのお客さん

 

 とあるドラゴン①


「――なるほどなぁ。メインと添え物か……」

「盆栽でもガーデニングでも、メインのデカくて綺麗なものだけを集めてもごちゃごちゃするだけだし、メインの奴を飾るための添え物を用意した方がいい感じになると思うよ」


 なんかそんなようなことを前世で聞いたことがある気がする。花束の作り方とかそんな感じじゃなかったか?


 とあるドラゴン②


「――なあ、この盆栽って、どこを切ったらいいと思う?」

「いやこれ、盆栽ってか普通に木……」


 そういわれて見たが、周りの木を切り倒してできた広場の真ん中にちょっと歪に曲がって育っている木が存在している。このドラゴン、まさかこれを盆栽って言い張ってるのか?


 とあるドラゴン③


「――それで、次の品評会はいつ開いてくれるの? 一ヶ月くらい?」

「え? 俺が主催するの? っていうか一ヶ月って竜の時間感覚的に明日とか明後日だろ。そんなに盆栽が気に入ったのか……」


 地球にいた時に頻繁に品評会の類が開催されるのは理解できる。いろんな主催元があるからな。開催する場所が違うだけで違うメンツが集まるだろうし、見てくれる人も違うから何度も参加する意味はあるだろう。

 でも、ここって見てくれる奴全員固定じゃん。盆栽なんてそんな頻繁に見ても変化はないんだから、品評会なんて意味なくない? まだ畑でとれた野菜の品評会ならわかるけどさ。……いや、そっちを提案してみるか? 盆栽よりはやる意味あるだろ。


「はあ……自分で広めておいてなんだけど、こんなに人気出るとかおかしくない?」


 なんて感じで、一ドラゴンにつき一日かけて相談に乗り、対策をしていく日々が続いた。だいたい十日くらい? 相談に乗るのはいいんだけど、丸一日拘束するのやめてくれないかな? 中には一日じゃなくて一日半とか二日とか拘束する奴も致し。まあ、ドラゴン的には一日でも早い方なんだろうけどさ。


 でもこれでドラ村の連中の相談は終わった。またしばらくは何の問題もなく過ごすことができるだろう。


「――ん。なんか戦ってる?」


 なんて思っていると、村の外の方向から何かが……いや、誰かが戦っている音が聞こえてきた。

 このへんで戦うなんて……誰だ? 普通ならドラゴンを恐れて魔物がこの辺で戦うことなんてないのに。


「……行ってみるか」


 ドラゴンたちの相談事を解決して疲れてはいるけど、あくまでも精神的なものであって肉体はまだ問題ない。


 なので、戦闘の音が気になった俺はその音のしている場所に向かうことにした。


 ——◆◇◆◇——


 Side:ライラ・ボルフィール


「ここから先はドラゴンの領域か……」


 私は王室第三親衛隊隊長、ライラ・ボルフィール。この度は王命とあって、ドラゴンの生息域である『竜界』の手前にある森までとある任を受けて部下を引き連れて訪れた。


 その任務というのがどんなものかと言ったら、陛下の御子を捜索すること。……もっとも、今も生きているとはとても思えないが。


 事の発端は、陛下がまだ即位しておらずただの王子の一人だったころ、兄弟であるほかの王族の方々に命を狙われていたことによるもの。


 当時は王位継承者が正式には決まっておらず、王位争いが行われていた。

 現陛下は他の王族よりも有力視されており、それを邪魔に思ったほかの王族の方々、そして貴族たちは状況を打開しようと現陛下、当時の王子殿下の婚姻相手である女性、そしてその子を狙ったのだ。


 理屈は理解できる。次期王位が有力な王子に男児の子が産まれていれば、その立ち位置はぐっと王位に近くなる。だからその子供を殺してしまおう、と考えたのだ。

 加えていえば、王子の婚姻相手もかなり力のある貴族だった。その貴族とのつながりを排除、理想を言えば仲たがいを起こすことができれば、政敵としては大満足だったのだろう。


 その結果何が起こったのかと言ったら、王子の御子と、婚姻相手である妃殿下の排除――暗殺である。


 そして、王子がこの近くの領地を視察に訪れた時を狙って、賊に襲われた。

 その際に王妃殿下、そして御子が竜界付近の森へと逃げ込み、消息を絶った。


 こんなところまで連れてこなければ、と陛下はおっしゃられていたが、当時の王子殿下としても苦肉の策だったのだろう。赤子に長旅は危険ではあったが、それでも手元から離してしまえば暗殺の危険は高くなるのだから。今の私からしても、当時の王子殿下のお考えは正しいように思う。下手に城においておくよりも、『剣王』と呼ばれるほど卓越した剣の使い手である王子殿下の元にいるのが最も安全だったことだろう。


 そして、その時は王子殿下も重傷を負い、王子の妃殿下や御子を探すことは叶わなかった。


 その後王子殿下はご自身の妻と子を探そうとしたが、捜索隊を出そうとしてもほかの王族の方々に止められ、今から行っても遅いと家臣らに説得されたこともあり、ご家族を探すために動くことは叶わなかった。


 その後はまるで復讐でもするかのように……いや、実際に陛下にとっては復讐だったのだろう。精力的に王位を目指し、遂に先日、命を狙ってきたほかの王族や貴族たちを処断なされた。


 そして今、ようやくすべての邪魔がなくなり、家族を探しに来ることができるようになったことで、我々が派遣されたというわけだ。

 だが……


「はあ……」



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