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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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冒険者ギルドの子供達

 


 ――◆◇◆◇――


「というわけで、これからしばらくの間お世話になることになりました。ライラ・ボルフィールと申します。よろしくお願いいたします」

「グランディールです」


 しばらく竜の爪先ギルドに世話になることになった俺達は、人が集められたホールであいさつをすることとなったわけだが……結構な人数がいるな。しかも大人だけじゃなくて子供もいる。だいたいは俺と同じくらいの年齢……十歳過ぎくらいだけど、中にはそれ以下の子供達もいる。


 彼らはここのメンバーたちの子供だろうか? もしくは、ここは孤児院でもやっているのか? あるいは、彼らも幼いながらにして冒険者として活動しているのかもしれないな。


「グラン。私は私で行動するけれど、同年代の子たちもいるみたいだからあなたも交流をしてみなさい」

「同年代って……話したことないんだけど?」


 前世で話したことはあるけど、それだって遠い昔のことだ。今更同年だ……子供達と話をしろって言われても困るというか、どう接すればいいのかわからない。これが大人相手だったらそれなりに礼儀をもって相手していればそれでどうにかなるけど、子供の場合は何を考えてるかわからないし突発的な行動をするから対応しづらい。できる事なら相手をしたくない存在だ。


「話したことがないからでしょ。それじゃあね。……ああ、あんまり気を抜きすぎないようにね。間違っても制御を乱さないようにしなさい」


 そう言ってライラは大人達の輪の中に入っていってしまった。

 簡単に言ってくれる……制御のことだけじゃなく、子供たちと交流って……。

 見た目は子供でも中身的には大人だし、今までも本当の意味で子供として扱ってこられたことがなかったから、どう接していいのかわからない。


「えっと、グランディール君、だよね? なんか、ドラゴンみたいな名前してるね」


 どうしようかと思っていると、話す機会をうかがっていたのかライラがいなくなってすぐに子供たちの一人が話しかけてきた。

 その子は俺よりも年上の女の子で、この場に集まっていた子供たちの中でも年長のように見える。多分子供たちのまとめ役とかそういう奴なんだろうが、俺はかけられた言葉に少しだけドキリとした。

 俺の名前はドラゴンの名前の一部をとり、ドラゴン自身が名付けたものだ。ドラゴンっぽいのは当然だろう。

 もっとも、俺にはどの辺がドラゴンらしいのか全然わからないけど。だってあまりにも日本人の名前と違い過ぎるし。外国人にとって普通の名前とおかしい名前の違いとか知らないよ。


「え、そ、そうかな?」

「うん。本当に何となくだけど、守護竜様もガルディアーナ様って名前だし」


 ガルディアーナ……それが守護竜様とやらの名前なのか。

 でも、聞いたことないな。いやまあ、違う大陸のドラゴンなんだし、あの村にいたわけじゃないんだから知らなくて当然なんだけどさ。

 でも確かに、なんだか名前の響きは似てる感じはするな。


「まあ、別の大陸だしこっちとは常識が違うから」

「でも、ライラ様って普通の名前だよね?」


 うっ……こどもって意外と鋭いな。

 確かに俺とライラは同じ大陸から来ているんだから、住んでる場所によって常識が違うっていう話は通らないか。


「……もしかしたら親がドラゴンに憧れてたのかも」

「そうかもね。こっちだと恐れ多くてドラゴンっぽい名前を付けるのはあんまり避けられてる感じだけど、大陸が違うとそこまで気を使わなくていいんだね」

「いーなー」


 そう言いながら子供たちは羨んでいるが、たかが名前のことだけでこれだけ持て囃され、憧れの眼差しを向けられると、なんだか恥ずかしさを感じる。自分の成したことによる評価だったらいいんだけど、ただの親につけられた名前ってだけだし……


「みんなは……みんな冒険者なのか?」


 話を逸らすために、俺ではなく子供達について聞いてみることにした。


「んー、びみょいところだな。全員ってわけじゃねえよ」

「何人かは仮登録の半人前だね」

「なにいってんのよ。正式に登録してても、あんたたちだって冒険者としての力量は半人前じゃない」

「うるせえ! 俺たちだって普通に依頼をこなすことはできるんだぞ!」

「ゴミ掃除とか草取りとかそれくらいでしょ? 本当に危険な討伐依頼は受けられないじゃない」

「ふふん! 甘いな。俺はこの間討伐の依頼を受けたぜ!」

「他の人の手伝いだったけどねー」

「ばっ! おま、それ言うんじゃねえよ!」


 最初に話しかけてきた女の子以外にも男の子達が答え、楽し気に話をしている。客人をそっちのけで話しているが、子供なんてそんなものだろうし、俺としてもそれで構わない。過度に構われ過ぎるとどう対応していいかわからないしな。


 でも今の話から察するに、この子たちも冒険者としてギルドに所属している一員なのだろう。いくつもギルドがある中で竜の爪先に所属しているのはたまたまか、あるいは親の影響ってところか?


 でも、冒険者って戦いを生業とするものだろうに、こんな子供達でもなんとかなるんだろうか? もしかしたら戦いのほかに何かあるんだろうけど、正直言ってどんなことをやってるのか知らないんだよな。お話の中のものと同じで何でも屋みたいな感じだったらなんとなく理解できるけど、実際にそれであってるかわからない。


 前にライラから聞いたことがあったけど、それがこの大陸でどこまで正しいのかはわからない。

 まあ、わからないなら聞いた方が早いか。


「冒険者って普段何してるんだ?」

「そりゃあ、魔物倒したり、商隊を守ったり?」


 ああ、やっぱりそういう感じの奴なんだ。でもこんな子供達が戦いのある仕事なんてできるんだろうか?


「っていっても、俺達みたいな半人前は街中での依頼が大半だけどな。ゴミ拾いとか荷物の搬入手伝いとか」

「あとは店番とか庭の手入れとかもあるよ。……まあ、子供にもできる街中で危険のない仕事だね」

「あー、早く俺も外に出てえなあ」


 なんてボヤいている子供もいるが、どうやら戦いだけが冒険者の仕事というわけではなく、それこそ俺が思い浮かべていた何でも屋みたいな感じらしい。


「外に出るって、そんなにいいことなのか? 魔物と戦うなんて、危険なことばっかり……だと思うけど?」


 たぶん。俺自身は魔物で危険を感じたことないからわからないけど。でも普通の人なら命の危険を感じるだろうし、普通の感性なら命の危険があるような場所で生きたいとは思わないと思うんだけどな。

 それなのに自分から命の危険がある場所に行きたいと思うなんて……理解できない。

 もしかしたら、こっちの世界特有の感覚なのかもしれない。


「ほら、グランディール君もこう言ってるじゃない。やっぱり外で魔物と戦うよりも、勉強して商家や職人の弟子入りに行った方がいいって」


 そんなことなかったわ。戦いたいっていうのはさっきの男の子だけの考えで、全員の総意ではないらしい。


「それじゃあでかく稼げねえじゃんか。せっかくこの街にいるんだし、魔物関連の方が稼げるだろ! 稼がなきゃ下のチビ達がどうなるかわかんねえしよ」

「そーだなぁ。それに、俺貧乏な暮らしとかやだぜ。路地裏で育ってきたことあったけど、あそこには戻りたくねえよ」

「も、戻るってほどじゃないじゃない。普通に街中で暮らしていけば……」

「じゃあここにいる他のやつらを見捨てろっていうのか?」

「そ、そんなこと言ってないじゃない……!」

「でもお前だってわかってんだろ? 普通の仕事じゃそれほど稼げねえんだ。それじゃあ自分が生きてくだけで精いっぱいで、ここに金を入れる事が出来ねえって。それじゃあいつかこのギルドはやっていけなくなる」


 ……なんか、思ったよりもしっかり考えてるっていうか、子供らしくない真面目さだな。……子供がこんなことを考えなくちゃいけない世の中ってのも、どうかと思うけど。

 でもまあ時代や文明、それから世界の状況を考えれば仕方ないんだろう。その辺は俺がとやかく言うことじゃない。言ったところでどうにかできるわけでもないし。


 魔物がいるから街を守るために壁を作る必要がある。でもそうやって範囲を制限すると使える土地にも制限ができるわけで、広く場所をとる必要がある農業やなんかは壁の外でやることになる。でもそうなると危険手当としての金額が商品に上乗せされるわけで、つまりは食料が高い。

 食料以外にも林業なんかも高いだろうし、そうなると基本的に物価が高くなるわけだ。

 たくさんの子供を養うってのは、それだけ金がかかるだろうな。


 ……ああ。ライガットが貿易なんて持ち掛けてきたのもこれが理由なのかもしれないな。



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