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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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街の異変

 

 ――◆◇◆◇――


「それじゃあこれから十日程度厄介になるわけだけど、何か気を付けたほうがいいこととかあるか?」

「気を付ける事お? んあー。んなもん……いや、一つあったな」


 あるんだ……いやそりゃあ注意の一つ二つあるだろうけど、でもこの言い方だとなんか普通じゃない厄介ごとの感じがするんだけど……


「最近街の様子がおかしい」

「おかしいって、なんかあったのかよ。っつかそれって俺も聞いていいことか?」


 ガロンがそう言いながら嫌そうな顔を見せたけど、ガロンはこのギルドの一員なんだし話を聞いてもいいだろ。むしろ聞いちゃいけないのは俺達な気がするんだけど?


「お前はしばらく向こうに行ってたから知らねえだろうけど、今のこの街じゃ誰でも知ってることだ。構いやしねえよ。そんで肝心の街の様子についてだがな、失踪事件が起きてんだよ」

「失踪? そんなの今までだってあっただろ。あとは家出の勘違いとかってのはねえか?」

「今までとは規模が違え。家出なんて、二十人以上まとめてするか?」

「二十人? それほど大勢が?」


 そんなにたくさんの人間が一気にってなると、まずありえないよな。家出や失踪自体はあるとしても、それだけの人数が消えたとあっては誰か、あるいは何かが事件を起こしていると考えるのが普通だろう。


「ああ。お上連中も捜査したりなんだりって対策してるらしいが、まあ成果は出ちゃいねえな」

「心当たりとかそういうのはないのか?」

「ないと言えばないが、あると言えばあるな」

「どっちだよ」


 なんてガロンがツッコんだけど、そう言いたくなる気持ちも理解できる。なんだってそんな半端な答えになってるんだか。


 でも、心当たりがあるんだったら調べておしまいじゃないのか? それともどこかの貴族が関わってるから下手に手を出すことができないとか?


「証拠があるわけじゃねえんだ。完全な憶測でしかねえ話だ」

「それでも可能性があるんだったら話しておいた方がいいだろ。こいつらに万が一があったらさっきの話もパーだぞ」


 まあそうだよなぁ。物語でいつも思うけど、心当たりがあるならためらわずに教えておくべきだと思う。今はまだ確定していないから、とか曖昧な情報を教えて混乱させるわけにはいかないから、なんて言うけど、情報がなければ判断することもできないんだから不確定でも情報は共有しておくべきだと思うんだよ。


「話したところでどうにかなるわけでもねえと思うがな。だったら下手に首を突っ込まれないように話さない方がよかった、なんて場合もあるだろうよ」

「いや、確かに普通なら無駄に話して余計なことに首を突っ込まれたり変な行動をされたりして、最悪事件に巻き込まれるかもしてねえなんて心配をする必要もあるが、こいつらに限ってはねえよ」


 ライガットの言葉にガロンは少し呆れた様子でそう話しているが、まあ実際俺達の場合は襲われたところで返り討ちにできるしな。むしろ襲ってくれればそれはそれで事態が解決するかもしれない。


「なんだよ、やけにこいつらのことを推してんな」

「そりゃあな。ワイバーンを相手に笑いながら戦ってるやつらだぞ。それも、何の準備もなくだ。俺なんかよりもずっと格上だ。そんなやつらに心配なんてするわけねえだろ」

「……そういやそんなことも言ってたな。だが、笑いながらワイバーンってマジかよ」


 嘘だよ。流石に笑いながら倒してはいなかったはずだ。苦戦したかって言われると……まあ余裕だったけどさ。


「マジだ。だから誘拐だろうと殺しだろうと、こいつらが引っかかることはねえよ」

「……ガロンがそこまで言うってんなら話してもいいが、下手に首突っ込んだりすんじゃねえぞ?」

「わかっている。我々としても自ら騒動を起こすつもりはない」


 忠告なんてされなくても、わざわざ自分から面倒ごとを起こすつもりなんてないよ。ただでさえ厄介な状況だってのに、これ以上の厄介ごとはいらないって。


「ドラゴン信仰の連中だ」


 俺達が頷いたのを見て、ライガットはふうっと大きく息を吐いてから数秒ほどだまり、それから話し始めた。


「ドラゴン信仰って……あいつらか」


 ライガットの言葉を聞き、俺はこの街に来た時に見かけた集団のことを思い出した。


「なんだ、知ってんのか? もしかしてお前らの大陸にもいるのか?」

「いや、そうじゃ……もしかしていたりする?」


 ドラゴン自体は他の大陸にもいるわけだし、ドラゴン信仰があってもおかしくはないけど、その辺のことを俺は良く知らない。何せドラゴン達の村から外に出た事なかったし。


 そこのところはどうなんだろうと思ってライラへと顔を向けるが、ライラはゆっくり首を振りながら答えた。


「いないこともないが、こちらのものとは別物だろうな。あちらはあくまでも土着の信仰のようなものであり、竜界と人の領域を隔てている森の近くでドラゴンに対して祈りを捧げながら生きているだけだ」

「竜界と隔ててる森って……外にそんなのがいたんだ」


 村の外に出た事なかったから、森の向こうにそんな人達がいるなんて知らなかった。ジジイ達は……まあ知ってただろうな。だってたまに人間の使う道具とか服とか買いに森の外に出てたし。


「それほど規模の大きい集団ではないからな。普通の村落と何ら変わらん程度だ。ただ祈る相手が神ではなくドラゴンというだけだな」

「じゃあ別もんだな。こっちのはそんなおとなしいもんじゃねえからよ」


 忌々しげな様子でそういうライガット。ガロンやエンジェもそうだったけど、本当に嫌われてるんだな。


「そうか。それで我々がどこで知ったかという話だが、この街に入る際にすれ違ったというだけだ。彼らの概要についてその時に軽く聞いただけにすぎない」


 竜の力を求めて人体実験や違法薬物でいろいろやらかしてる集団、って感じのことくらいしか聞いてないな。


「そうか。まあ概要だけでも知ってんなら話は早えな。そいつらはかなりヤバい集団ってのは聞いただろうが、最近はその動きが怪しい。何がとは言えねえが、奴ら全体の雰囲気が後ろ暗いやつらのそれになってんだよ」


 雰囲気が後ろ暗い、ねえ……


「それってつまり、ただの勘ってこと?」

「だから証拠なんざねえっつったろ。だが、冒険者として命かけてきた人生の末に身に着けた勘だ。外れてたとしても、なんかしらやらかしてるぜ、あれは」


 そう言われるとなんだか信憑性があるな。命を懸けてきた人生、か……。まあおかしな状況だっていうのは確かなんだろうし、今回の犯人が誰であれそのドラゴン信仰者たち自体は警戒しておいた方がいいんだろう。


「どっちにしても気を付けたほうがいいってことだろ?」

「まあそうだな。つっても、なんにもねえ状態だろうと、あんな奴らにはかかわらねえ方がいいがな」


 ドラゴン信仰か……どんな奴らなんだろう。犯罪者集団っていうのは聞いたけど、どんな理念で、どんな思いでドラゴンを信仰しているのかはちょっと気になるな。

 だからってドラゴンの名を貶めるような集団と仲良くするつもりはないけど、少し話をしてみたいとは思う。


 けどまあ、会ったら会ったで面倒ごとになるだろうし、関わらないのが一番いいよな。

 なんて言ってるけど、そのうち会いそうな気もする。だって俺はドラゴンの使う魔法を使えるんだし、これ以上ないくらいにドラゴンの関係者なんだから。


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