神様に感謝
「……これは、男の神か? でも女のように見えなくもない気がする」
どっちでもいいけど、こんなやつ見たことないなぁ。俺が生まれ変わった時に関わってるんだったら会ったことがあってもおかしくないと思うんだけど……。
まあそもそも俺、死んだ後のことなんて全く覚えてないし、なんだったら生まれた直後のことも覚えてないからなぁ。死んでる間に誰かに会ってたとしても、忘れてる可能性もあるだろうな。
それにしても……
そう思って改めて像を見るが、その姿はなんともはっきりしない姿をしている。男にも女にも、若者にも大人にも見える。流石に赤ん坊や子供とは見えないが、それでも姿がハッキリしないのは間違いない。
ここまではっきりしないとなると、実際にこの世界に降臨したことがあるってわけじゃないんだろうか? はっきりした姿を見たことがあるなら、それが神像として祀られているだろうし。
まあ、この世界の成り立ちを知らないからこの神様がどんなポジションについているのかなんてさっぱりなんだけど。そもそも一神教なのか多神教なのかもわからない。
けどまあ、こうして一体だけ祀られてるってことは、テンプレだと創造神か太陽神ってところだろう。日本でも創造神と太陽神が主神と言ってもいいような神様だし。
いや、日本は神社ごとに祀ってる神様違ったけど、この世界の教会もそうなのか? それだとこの神様が俺の生まれ変わりに関わってるのか全然わからないんだが……。
まあ、どっちにしても神様にあった記憶なんてないからいいか。思い出したら思い出したでその時はその時でいいだろ。
ただ、やっぱり基礎知識がないと困るな。こう言うところでどう判断すべきなのかもわからない。やっぱり図書館みたいな知識が得られるところに行こう。
ああでも……
「もしこの人生に関わっているんだとしたら、ありがとうございました」
この神様が本当に関係してるのかわからないけど、それでも一応な。
こっちの世界の作法とか知らないから日本式になってるけど、気持ちがこもっていれば何でもいいだろう。
そう思い、神様への感謝を口にしながらお辞儀をしたのだが……だめだ。なんか恥ずかしいわこれ。
やっていることはおかしなことじゃないけど、誰もいない場所で一人で喋ってるって言うのはなんか無性に恥ずかしさがある。
神社のお参りとかも、初詣で一人だけ正式な作法でガチのお祈りとかしてると周りから見られることがあるし、恥ずかしい思いをすることもあるが、そんな感じ。
別に間違っているわけじゃないんだけど、まあ周りの目が気になることってあるし、なんだか恥ずかしく思うことってあるよな?
そんな恥ずかしさを誤魔化すために、そそくさと教会を後にした。
——◆◇◆◇——
「図書館図書館、と。……この国、本当に製本技術があるのか? 図書館どころか本屋すらないぞ。普段読まないからなのか、人に聞いてもわからないし」
教会を後にした俺は、そのまま図書館探しを再開して適当な屋台で買い食いをしつつ場所を聞いて回っているのだが、一向に図書館を見つけられないでいた。
あるいは、聞いてる相手が間違ってるのか? たまたま運悪く図書館の場所を知らない人に話しかけてたとか? 日本で暮らしてた時だって、図書館の位置なんてそれほど気にしてなかったしなぁ。知らない人がいてもおかしくないだろう。
「当たりを引くまで聞き続けるしかないか」
宿の人に聞いてから探しに来た方がよかったな。今から戻るのも二度手間だし……もしくはこれから竜の爪先ギルドに向かって話を聞くか? ……まあいいか。どうせ今日じゃないといけないってわけでもないんだ。
それに、こういう観光みたいなことをライラは望んでた気がするし、今日はもう観光と割り切ろう。それでもとりあえず目的があったほうがいいだろうし、図書館探し自体は続けるけど。
「図書館に本屋? んー、いや。わからないねえ」
「そうですか。あり――」
「ただ、本自体は売ってる場所があるよ」
「え……」
「魔法使いのための道具を売ってる店さ。あそこなら魔法の勉強のための本が売ってるはずだよ。たしかね」
観光を続けながら適当な店に立ち寄って図書館について尋ねていたら、店主の一人にそんなことを言われた。
盲点だった。そっちか! でも確かに言われてみれば、魔法の勉強には本が必要だよな。スキルみたいにレベルが上がったら習得できる、ってわけじゃないんだから。
「ありがとうございます!」
そう言ってお礼を言った俺は、追加で飲み物を一杯買ってからその場を後にし、教えてもらった場所へと向かうことにした。




