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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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冒険者ギルド『竜の爪先』支部

「はいはーい。だれー? ……ってガロン! 帰ってくるのめちゃくちゃ早いじゃない! 本当に依頼をこなしてきたわけ?」


 そうして建物の中を観察していると、数秒ほど経って奥から少女が小走りでやってきたが、少女はガロンを見るなり驚き、疑いの眼差しを向けた。

 それだけガロンが戻ってくるのが早かったということなんだろうが、まあ依頼の魔物自体は俺達がもう倒してたしな。


「問題ねえよ。ただ、まるっきり問題がねえってわけでもねえっつーかな……ありていに言うと、俺がつく前に対象が倒されてたんだよ」

「へあ? ガロンがつく前にって……アンタ依頼を受けてから結構早く出てったでしょ? しかも依頼自体もこっちで受け付けてから割とすぐに手続したし……その間に倒されたってわけ? 本気で言ってるの?」

「本気だっての。その倒した奴ってのがこいつらだ」


 少女はそこでようやく俺たちの存在に気がついたようで、俺とライラへと視線を向けてきた。


「初めまして。すまないな、仕事に割り込んで混乱させてしまったようだ。だが、我々としてもあれは必要なことだったのだと理解してもらいたい」

「ほあぁ……。…………はっ! ちょ、ちょっとガロン!? なんなのあの人!」


 ガロンによる紹介とも言えないような紹介を受けたことで、ライラは一歩前に出ながら騎士として謝罪を口にした。


 だが、こんな時に言うのもなんだが、ライラは美人だ。流石は貴族のご令嬢というべきか。元の素材は良いし、騎士として鍛えた体は引き締まっており、かと言って美しさが損なわれているわけでもない。しかも振る舞いも貴族としても騎士としても完璧だ。


 そんなライラから謝罪を受けたことで少女は少しの間放心し、間の抜けた声を漏らしてしまった。


 だがそれでも元々の胆力がすごかったのか、それともギルドの一員としてのプライドなのか、すぐに気を取り直したようだ。

 まあ、俺たちを無視してガロンに文句を言うあたり、まだ混乱はしているんだろうけど。


「だから、依頼にあった魔物を倒した奴らだ」

「それは聞いたって! そうじゃなくてっ……あれ、どう見てもどっかの貴族じゃん! お偉いさんだよ!」

「わあってるよ。んな騒いでんじゃねえよ、ったく」

「たくはこっちのセリフなんだけど!? なんでこんなことになってんの!」


 少女は混乱したままガロンへと掴み掛かり、俺たちのことを無視して怒鳴りつけているが、そこでライラが話に割り込むように口を開いた。


「それは我々のほうから説明させていただこう」

「え? あ、え、は……はい」


 ライラが再び話しかけたことで俺たちの存在を思い出したらしい。それまでの少女の騒がしさは形をひそめ、縮こまるようにライラに向き直った。


 そんな少女の姿を見てライラは若干の苦笑をしつつも俺たちの状況とガロンの受けた依頼についての説明をしていった。


「――そういうわけだ。貴殿らの仕事を奪ってしまい申し訳なかった」

「あ、いえ、はっ!? じ、事情は理解いたしましたし、問題ありませんので頭を上げてください!」


 貴族から頭を下げられたことがなかったのだろう。少女は目に見えて狼狽えながら頭を上げるようにライラに告げる。

 ライラとしても頭を下げ続けたところで相手を恐縮させるだけだと理解しているからか、すぐに頭を上げた。


「すまんな。仕事を奪うことになりはしたが、その功績を奪うつもりはない。ガロンが討伐したこととして処理してかまわんよ」

「で、できません! そんなボルフィール様の戦果を奪うようなことは……!」

「だがしかし……」


 貴族相手から成果を奪うようなことはできないと考えているのだろう。少女とライラの間で押し問答が続きそうになったところで、ガロンが呆れた様子で割り込んだ。


「いらねえっつってんだからもらっとけよ。それに、こいつらにとっては無駄な柵がねえ方が楽なんだ。うちのギルドで受けた依頼を代わりにこなした、なんてのは厄介以外の何物でもねえだろ。たとえそれが偶然の産物だったとしてもな」


 これはこの街に来るまでの間に話し合ったことだった。

 俺たちとしては魔物を狩った名声とか栄誉とかはいらないし、むしろここで討伐者として名前が出ることの方が厄介だ。今後もどこかで魔物を狩った際、滞在している街にある別のギルドで手続きをすることもあるだろうけど、その時に以前このギルドで依頼を受けましたよね、とかこのギルドの依頼を横取りしましたよね、なんてなると面倒この上ないからだ。


「で、でもぉ……」

「代わりと言っちゃなんだが、次の場所に行くまでの支援やらなんやらを手伝ってやった方がこいつらとしてはありがてえんじゃねえのか?」

「ああ、そうだな。そうしてもらえるのならばとても助かる」

「わ、わかりました! 今回の討伐依頼は通常通り当ギルドで処理したことにさせていただきます。その対価として……いえ、貴族の方が当ギルドと関わってくださるお礼として、ボルフィール様の旅の支援をさせていただきます」

「そうか。配慮いただき、感謝する」


 そんな感じで話はまとまり、俺達は旅をするための物資を手に入れることができた。


「んじゃあ俺はこいつらを宿に案内するから、事後処理とか旅の準備とか、なんかそういうの頼むわ」

「わ、わかったわ! くれぐれも変なことはしないでね! ボルフィール様が許可してくださったといっても、それに甘えないように!」

「へいへい」

「もー! ……あっ、そうだ! ボ、ボルフィール様! 冒険者ギルド『竜の爪先』支部へようこそでした!」

「なんだよ、ようこそでしたって」

「歓迎いただき感謝する」


 ガロンは呆れ、ライラは苦笑している。

 なんだか騒がしい感じだったが、それでも何とか受け入れられたようでよかった。

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