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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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国王の叔父:愚かさの結果

 

「失敗しただと!? 何をやっているんだ!」


 イディオは自身の手駒が任務を終えて戻ってくるのを自室に手待っていたが、戻って来た駒が伝えたのは望んでいた答えではなく失敗という言葉だった。


 ただでさえ追い詰められている状況でるうえ、バレたらまずい行動であるにもかかわらず失敗するなんて……。

 イディオは苛立たし気に怒鳴りながら戻って来た暗殺者のことを蹴り飛ばす。


 暗殺者は雇われだからか、それとも失敗した自分達が悪いと思っているからか抵抗することなくイディオに蹴られたが、それでも仕事を続けるべく報告を行う。


「朝食に毒を混ぜましたが、効果がありませんでした」

「効果がない? 確かに毒を食べたのだろうな?」

「は。ですが相手はドラゴンが住む魔物の森で暮らしていた過去がございますので、毒に対する耐性があってもおかしくはないかと」

「チッ、野蛮人め。だがそれならば直接殺せ。この際多少の証拠が残ろうともかまわん」


 毒が効かないというのなら仕方ない。できる事ならば騒ぎになりづらい方法で殺したかった。何者かに襲われて死んだとなればどうあっても騒ぎになってしまうが、それでも殺せないよりはましだと判断して暗殺者に追加の指示を出した。


 だが待て。今こいつは〝朝食〟に毒を盛ったと言っていなかったか? であるなら、今の今まで何をしていたというのか。


 イディオがそう考えた直後、その考えに対する答えを出すかのよう暗殺者が答えた。


「行いました。入浴時に無防備となったところを狙ったのですが、返り討ちに会いました」

「返り討ちだと!? なぜそんなことになっている!」


 イディオには暗殺者の言葉が信じられなかった。

 多少他と違っていたとしても、多少頭が回ったとしても、多少腕が経ったとしても、グランはまだ子供なのだ。

 暗殺者に狙われればひとたまりもないことなど、考えるまでもないことだ。

 にもかかわらず返り討ちにあった? そんなこと信じられるはずがなかった。


 だが混乱しているイディオをよそに、暗殺者は話を続けていく。


「気配を漏らすことなく普段通りに潜伏していたのですが、気づかれました。そのまま逃げたところで次はないと判断して襲撃を行いましたが、詠唱もなく魔法を使い、周囲の水を操って迎撃されました」

「なにをふざけたことをっ……! その程度、お前達ならば問題なく殺せるはずであろうが! よもや裏切ったのではないだろうな?」


 イディオにはそれ以外納得のいく理由が思いつかなかった。だが現実とは非情なもの。相手が悪すぎたのだ。暗殺者が返り討ちにあったのは知るものからすれば当然のことだった。


「決してそのようなことは! 我々も攻撃を防がれただけで負けを認めはしません。その後も攻撃を行い、対象に刃を届かせることに成功したのですが……刃が通らなかったのです」

「刃が通らなかっただと? 馬鹿馬鹿しい。ならば以前言っていた竜を狩れると言っていたのは何だったというのだ」


 イディオの用意した暗殺者たちはまごうことなくその道のプロ。一流と呼んで差し支えない者達だ。身に着けている技術は一流で、持っている武具もそれに相応しいもの。特に今回直接攻撃を仕掛けたうちの一人が持っていたナイフは、竜の鱗さえも貫通することができるほど強力な武器だった。そこに嘘はない。


 だが、今回の襲撃対象もまた、〝竜〟だった。そして、彼らとグランの間にある〝竜〟という存在に対する認識は別物だった。


「……それはワイバーンのような竜の亜種の事です。世間的にも竜と言えばそれらを指すのはご存じのはずではありませんか?」


 そう。グランやバルフグランなどのドラゴンの関係者は自分達ドラゴンのことを竜と呼ぶことがあるが、ワイバーンはあくまでもワイバーン。竜の血が流れていようとも竜ではないただの魔物でしかないのだ。


 それに対して人間たちの認識は、ドラゴンの血が混じっている魔物は全部〝竜種〟である。


 もっとも、そんな違いを理解していたところで普通なら関係ないのだろうが、今回はほんとうに相手が悪かったとしか言いようがない。なにせ相手は竜種ではなくともドラゴンではあるのだから。


「それがどうした! 奴を殺せていないのなら変わらんだろうが! それとも何か? あの小僧はドラゴンと同じ硬さを持っているとでも言うのか? はっ! ドラゴンに育てられたからと言って、そんなことがあるわけなかろうが!」


 だがそんな実情を知らないイディオにとっては竜でもドラゴンでもワイバーンでも関係なく、殺せなければ全て同じだし全てどうでもいいのだ。


「……殺せなかったのは理解した。証拠は残していないだろうな?」

「申し訳ありません。部下を二人失いました。生死は不明です」

「それはつまり、暗殺者が捕まったということか?」

「……ハッ」

「このっ……痴れ者が!」


 この暗殺者は最後まで見ていたわけではないが、あの状況で帰ってこないということは捕まったということだろうと判断していた。


 殺せなかったどころかみすみす暗殺者を捕らえられるなどというヘマをしたと聞き、イディオの怒りは頂点に達した。


 先ほど蹴り飛ばしたばかりだが、それでも再び暗殺者を蹴り、尚も蹴り続ける。


 ひとしきり蹴り終わったのか、乱暴に椅子に座ったイディオは頭を掻きむしりながら考え事を始めた。


「襲撃があったことは知られる。今から殺す? いや、それは失敗したばかりだ。それよりも政治的な話に持っていくか? ……そうだ。奴はまだ子供だ。そうでなくても城に来て日が浅い。基盤など整っていないだろう。今ならば襲撃は狂言として斬り捨てることができる。襲撃者を捕えられているのであれば些か厳しいが……できないわけではないか」


 ひとまずの考えがまとまったことでイディオはわずかばかりの冷静さを取り戻した。


「クソッ! どこまでも邪魔をしてくれる奴だ!」


 苛立たし気に悪態を吐きながらもイディオは暗殺者や従者に指示を出し、今回の失敗について手を打つべく行動し始めた。


 そうして動いているうちに夜が明け、翌日。


「それでは時間となりましたので、これより御前会議の開始を宣言いたします」


 今日はドラゴンとの貿易に関しての会議が行われることになっているが、肝心の話をまとめたらしいグランがいないことで場内はざわついていた。


「あの王子はどうしたんだ?」

「陛下をお待たせするなど……やはり教養が……」


 本来の予定時刻から十分ほど遅れ、グランの遅刻を咎める声が聞こえだしたところで会議場の扉が大きな音を立てて開け放たれた。


「遅れました!」


 扉から現れたのは、当然の如くグランだった。ただし、その手にはくだりで縛られた二人の人物が引きずられていたが。



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