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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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竜と王

 

「――それじゃあ、ジジイ。頼むよ」


 ライラに言われたように数日程故郷であるドラゴン達の村に滞在していた俺は、そろそろいいだろうということで城に帰ることにした。


 帰るにあたってジジイが送ってくれるということなので、俺はドラゴン状態のジジイの背中に乗りながら空を飛ぶこととなった。


「あ、そうだ。送ってくれるのは有難いんだけど、街から少し離れたところで下ろしてくれるか?」


 村を出て少しゆっくりめな速度で飛ぶ事しばらく、飛んでいる途中でとあることに気が付いたのでジジイに途中で下ろしてもらうように頼む。


「ふむ。構わないが、何かするのか?」

「いや、何かするっていうか、何もしたくないから? ドラゴンが街の近くにいると騒ぎになるだろ?」


 ガルの時は街に入る直前になって対策したから遅かったけど、今回はまだ首都が見えていない状態だし大丈夫だろう。

 ライラは街の前に降りても大丈夫なように先に知らせておく、的なことを言っていたけど、心配するくらいだったら最初から町の近くに降りなければいいだけの話だ。


「確かにな。だが、それは遅いのではないか?」

「え? 遅いって、どういうこと?」

「ここに来るまでいくつかの街や砦の警戒範囲を飛んできた。ワシらの進んでいる方向なぞとうに分かっていよう。となれば、既に都に報せがとんでいたとしてもおかしくはなかろうよ」


 う……確かに遠距離通信用の魔法道具はあるんだから、監視所とか砦とか、そういった類の拠点から城に連絡が入っていてもおかしくないか。


「……あー。いや、でもただ空を飛んでただけでそんな大げさなことになるか?」

「さてな。だが、ドラゴンが人の世に現れれば騒ぎになるのが人の世の常だと思っていたが?」


 それは……そうかも? 人間の暮らしやドラゴンに対する対応をまだ理解しきったわけじゃないからはっきりとは言えないけど、まあ普通ならドラゴンが近くを飛んでいたら騒ぎになるか。


「それに、このまま都に行ってしまった方がお前のためにもなろう」

「俺のため?」

「言葉だけでは足りん。小さな破片だけでもまだ理解できない輩は居よう。だが、ワシ自身が姿を見せれば、理解できん者はいないはずだ」

「ああ……貴族たちの話か。まあ本物を見ればいやでも理解するしかないよな」


 一応フォイル含め、貴族たちから送られてきた配下や駒の貴族たちにはドラゴンと俺の関係を見せたけど、だからと言ってそれをそのまま信じられるものは少ないだろう。人間は自分の常識に縛られる生き物だし、結局のところ自分の眼で見たものを信じるものだから。


「でも、着いたら着いたでいきなり攻撃されたりしないかな?」

「されるかもしれんが、問題なかろう」


 ……まあ、そうだな。仮にドラゴンが近づいてきたことで弓や魔法を使われたとしても、大抵がジジイの体に届いたとしても傷一つどころか汚れ一つ付けることはできないだろう。精々体に何か触れた感覚がして鬱陶しいくらいじゃないかな?


 俺の状況の補強に使えるし、大した手間でもなく実害もないとなれば、このまま進んでもいいか。

 そう納得した俺はそれ以上何も言うことなくただジジイの背中の上にのって空の旅を楽しむことにした。

 だけど……


「やっぱり人が集まってるんだけど……」

「降りるぞ。守りを固めておけ」

「このままいくのか!?」


 予想通りというべきか。街を囲っている壁の上には大量の兵が並んでおり、全員が武装していた。その上普段なら開いているはずの門までもが閉じられている。

 明らかに俺達のことを警戒している様子だけど、ジジイはそんな状態でも意に介さずに街の前に広がっている平地に向かって急降下した。


 突然のドラゴンの行動に慌てた兵士たちから攻撃が飛んでくるが、その全てがジジイが纏っている風によって弾かれる。


「引け!」


 着地したジジイと兵士達の睨み合いが始まったかと思った直後、門が開かれると同時に空気を震わせるような大声が届いた。


 門から現れたのは我が父――国王だった。


 どうして国王がこんなところに、と思っている間にも国王はこちらに向かって進んできている。

 そんな姿を見ていた俺だが、ジジイがわずかに身じろぎしたことでハッと気を取り直し、ジジイの背中から降りて国王の前に立った。


「国王陛下……」

「グラン。戻ったようだな。先に戻ったライラから話を聞いているが……」


 そう言うと国王は俺に向けていた視線を上にあげ、ジジイと――ドラゴンとまっすぐ見つめ、ジジイもそれに応えるように見つめ返した。


「「……」」


 見つめ合っていると言っても、二人の間には甘い空気なんてかけらもなく、むしろ戦いが始まる前の戦士達のような雰囲気を感じる。かといって睨み合っているというわけではないから戦う気はないんだろう。


 そんな二人が無言で見つめ合ってから十数秒ほど経過し、徐に国王が口を開いた。


「竜よ。其方がグランを拾い、育てた者だろうか?」

「左様。ワシはバルフグラン。竜界を捨てた変わり者の竜だ」

「そうでしたか。でしたら、感謝を。私はこの国の王を務めている、その子の……父親。ローデリック・ファーラン・ゲオルギアと申します。我が子を拾い、育ててくださったことに心よりの感謝を」

「構わん。運よく目に留まっただけの事。どうせ竜にとっては刹那の時の戯れよ」

「だとしても、感謝いたします」


 どうやら国王は俺を拾って育てたことに対して礼を言いたかったようだ。だからこそここまでわざわざ出向いてきたのだろう。

 でも、それならさっきの間は何だったんだろう? 敵意ではないけど、完全に友好的な表情、ってわけでもなかったような気がするんだけど……


「……少しは〝獣〟を追い払う役に立てただろうか?」

「それは……ええ。必ず獣を狩ると誓いましょう」


 獣? それってさっき話していた貴族たちに対するけん制の事かな? 国王としても俺を消そうとしている奴ら、邪魔に思っている奴らについては把握しているようだし、国王自身も色々と邪魔をされると聞いている。だから今回のドラゴンとの関係を利用して動くつもりなんだろう。


「後日、またいずれ。次は私の方から訪ねさせていただきます」

「竜は来るものを拒まぬ。勇者であればいつでも歓迎しよう」


 国王との話はもう終わりなのか、それだけ話すとジジイは俺のことを一瞥だけして飛んでいった。せめて何か一言くらいあってもよくないか?


 ジジイが飛んでいった方向を眺めていると、国王が近づいてくる音が聞こえたので視線を正面に戻す。

 すると国王は徐に右手を持ち上げ、少し迷った様子を見せながら口を開いた。


「……グラン。正式な報告はまた後になるが、よくやった」


 そして、俺に微笑みかけながら肩に手を置いた。

 国王の笑みはなんだか不格好なもので、ひきつっているように感じられたが、でもなんだか不思議と温かさを感じられるものだった。


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