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異世界ドラゴン村で育った人間は当然の如く常識外れだった  作者: 農民ヤズー


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兄弟喧嘩?

 

「剣術か……まあ、暇つぶしにはいいかな」


 部屋に籠りきりは体に悪いということで、ライラから剣の訓練をするようにと動き回ることのできる庭を教えてもらった。

 正直言って今更剣なんて使わなくても、と思ったけど、貴族のたしなみだそうだ。ある程度は剣が使えないとだめらしい。

 そうでなくても父親である国王は『剣王』なんて呼ばれるくらい剣の腕が凄いらしいし、その子供としては一定水準以上の腕前が必要になるのだとか。そんなわけで暇つぶしと運動を兼ねて剣の修練をすることになった。


 カルダート流剣術。それがライラが使い、そして父親である国王が使う剣術。

『竜殺しの剣』。それがカルダート流の別の呼び方らしいけど、ドラゴンの仲間であると自称している俺がドラゴンを殺すための剣術を学ぶなんて、ちょっと皮肉が利いてるな。


「貴様、何者だ?」


 苦笑しつつも教えられたとおりに剣を振っていると、数人の人間が近づいてきた。さっきから見ていたのは知っているけど、誰だろうか?


「あ? ……誰だ?」

「私のことを知らないだと? 私はこの国の第一王子、フールク・クラウン・ゲオルギアだ。そんな私を知らないと言うか」

「第一王子……なるほど」


 言われて見ればやって来た者達の構成がそれっぽい。

 第一王子本人と、誰だか知らない貴族が一人。それから護衛の騎士が二人。本人と騎士は良いとして、この貴族は誰だ? 城にいるんだかrあそれなりに地位のある人間だと思うけど……ああ。これがライラの言っていた王族の後援をしている貴族かな?


「王子殿下。この者は――」

「そうか。貴様が例の詐欺師か」


 王子が俺のことを睨みつけながらとてつもなく失礼なことを口にした。聞き間違い、ってわけじゃないよな?


「詐欺師? ああ、まあ、そういう見方をしても仕方ないか」

「なにを言っている。聞こえないぞ!」


 十三年も前に魔物ばかりの生息する森の中に放置された赤ん坊が生きて帰って来たなんて、普通は信じられないよな。

 でも状況的に仕方ないとはいえ、まさか詐欺師なんて呼ばれることになるとは。


「初めまして、第一王子……殿下?」


 この場合ってどうなるんだろう? 敬称を使うべきなのかどうか。血統と年齢でいうなら俺の方が上だけど、死んだことになってたわけだし公的な身分で言ったら向こうの方が上なのか?

 ……まあ、いつも通りでいいか。


「俺はグランディール。家名は……名乗るかはまだ決めていない」

「なんだと? バカにしているのか?」

「バカになんてしてないんだけど……」


 これは本当にバカにしているつもりなんてない。俺は一応王族らしいし城で暮らしているけど、今後もここで暮らしていくかはまだ決めていない。王族として生きる覚悟がないうちは、軽々に家名を名乗るべきではないと思っているんだ。


「なら貴様はろくにマナーすら知らないらしいな。当然か。獣に育てられた野蛮人にマナーなど分かるはずもないのだからな。ドラゴンに育てられたなどと噂されているが、そのような虚言に惑わされる者などいるとでも思っているのか?」


 虚言……まあいいか。言ったところで信じられないのは仕方ないだろうし。

 でも、一応俺の情報については広まってるんだな。ごく一部の王族や貴族だけかもしれないけど、それでも知られているってことは誰かが漏らしたんだろうか? それともあえて広めたのかな?

 それ次第で今後の生活について考えないといけないんだけど……今は目の前の出来事に対処するのが先か。


「それで、何のようだ?」

「騎士団の訓練場に見知らぬ猿が入り込んでいると知らせを受けたのでな。どれほど貧相なものか見に来ただけだ」


 じゃあここにいるのは俺だって分かってたんじゃん。誰だ、なんて最初の言葉はいらなくなかったか?


 これが第一王子か……。思わずそう呆れてしまったのも無理ないだろう。だって第一ってことは多分今までの状況では一番王位に近い存在で、十二、三歳だとしても王族として教育を受けているわけだ。それなのにこんな振る舞いをするなんて、ちょっと愚かというか、バカすぎる。

 十二、三歳では中学一年生程度だからまだ高度な政治的判断はできなくても仕方ない。でもこの態度はまずいことくらいわかるべきだろ。


 ただ、そう思いはするけどそれを口にすることはなく、内心で溜息を吐いてから口を開いた。


「なら見終わっただろ。帰ったらどうだ?」

「貴様。先ほどから誰に向かって話しているのか理解しているのか! この下郎が!」

「それは申し訳ない。野生で育った野蛮人なもので、マナーを知らないのです。気に障ったならお帰りください」

「なんだと……?」


 まさか態度を咎めたにもかかわらず、何も変えないどころかより酷くなったことが不思議だったのか、何とも間の抜けた顔を晒している王子様。……くだらない。


「殿下」

「……なるほど。よかろう」


 そんな間抜けに何を吹き込んだのか。そばにいた貴族が王子に耳打ちをすると、王子は自信満々な笑みを浮かべた。


「貴様、剣を使うようだな。一つ私と勝負をしないか?」

「勝負?」

「そうだ。私が勝ったら貴様は二度とこの場所にくるな。他の訓練場の使用も禁ずる」

「そこまでして排除したいのか。……まあいいけど、それで俺が勝ったらどうするんだ?」

「貴様が勝ったらだと? ハッ! そのようなことがあるはずなかろう」

「だとしても、最初に設定しないのはフェアじゃない」

「くだらないな。だがそうだな。もし貴様が勝ったのなら、私に対する不敬を不問としてやろう」

「いや、別に不問にしてくれなくてもいいんだけど……まあいいや。それでいいよもう」


 多分この王子も剣の修練はしてきたんだろう。時間だけで言ったら俺よりもよっぽど長い時間を剣に費やしたはずだ。だからこそ勝てると思い、勝負を仕掛けてきたんだろう。

 邪魔者を排除する、あるいは俺の名前に疵瑕を付けることで俺のことを追い落とそうとしているんじゃないだろうか。


 まあ確かに剣の腕で言ったら向こうの方が上かもしれないけど、経験と頭の差がある以上勝負そのものは負けるとは思えないので受けることにした。


「でも、剣はどうするんだ? 木剣なんて一本しかないけど」

「そうだな。だから私はこれを使わせてもらうとしよう」


 そういいながら王子は騎士が帯びていた剣を受け取り、ニヤリといやな笑みを浮かべた。


「あいにくと刃引きはしていないが、他に剣がないのだから仕方あるまい?」

「……そこまでするのか。ドラゴンがこの世界の人間を嫌うのも理解できる。いや、人間なんてどの世界でも変わらないか」

「なにを言っている。今更臆したか? だが勝負を受けた時点で逃げ出せば貴様の負けだぞ?」


 いや別に逃げないけどさ。でも……はあ。本当に、こんな小物が王族とかどうかしてるよ。


「さあ、剣を構えろ! その結果負けたとしても、死ぬことになったとしても、それは事故であり正式な勝負の結果だ。恨むでないぞ?」


 そう告げてからまるで自慢するかのように自己強化の魔法を施してきた王子。

 ライラからは剣は必修と習ったけど、強化魔法まで必要とは聞いていなかったのに。……まあ、言われなくても最初から使えるからあえて言わなかったのかもしれない。


「魔法はアリなのか。なら」


 体を強化したところで、まともに受ければこっちの剣は真っ二つ。体は無事でも剣が折れれば負けと同義だろう。

 なら、剣が折れる前に……敵の攻撃を受ける前に一撃で終わらせる。


「ふう~……『竜の爪は全てを切り裂く刃である』」


 こっちに向かって剣を向けて笑っている王子ではなく、自身の内側に意識を向け、集中する。


「行くぞ! 王族の名を騙った愚か者め。自身の行いを悔いるがいい!」


 そう叫んでから王子は意気揚々と駆けだしたが、確かに子供にしては速い。そのまま剣を振り下ろされれば向こうの勝ちになるだろう。でも……


「カルダート流剣術、一式……剣竜爪撃」


 ライラから教えてもらった剣の術理を、俺が学んできた竜と人間の魔法で独自の解釈を混ぜて再現する。

 上から下へ。魔力を込め、魔法と共に振り下ろす一撃。だが……


「へ……?」

「あ――」


 俺の振り下ろした一撃は失敗した。

 振りおろしている途中で込めた魔法と振り下ろす勢いに耐えられなかったのだろう。持っていた木剣は途中で砕け衝撃を周囲にまき散らした。


「ぎゃあああああっ!?」

「ぐっ……いってえ……」


 まき散らされた衝撃は、その大半が前方に向かったことで俺は吹き飛ばされずに済んだが、こっちに向かってきていた王子は盛大に吹っ飛ばされていった。


「込めた魔法を制御しきれなかったのか。……これ、あとでライラに怒られるかなぁ?」

「顔がっ……顔がああああっ!?」

「殿下!」


 吹っ飛ばされ、地面に転がったままのたうち回って叫んでいる王子と、そんな王子に駆け寄る貴族と騎士達。


「き、貴様! 自分が何をしたのか理解しているのか!」

「勝負を挑まれたから応えただけですが? まあ、技を失敗して巻き込んでしまったことは情けないとは思いますが……それも結果の一つでしょう。それよりも早く治癒を施した方がよいのでは?」

「はっ! 殿下! すぐにお怪我を治しますので暫しの辛抱を! 貴様、次に会った時は覚えておけよ!」


 騎士に支えられながらの王子を連れて、名前も知らない貴族の男はドシドシと足を鳴らしながら去っていった。


「なんとも古典的な三下のセリフを……いや、あれはあれでロマンかな?」


 なんて呟いてから大きく息を吐き出す。だが、そこに新たに現れた人物がいた。


「――お前の方は怪我をしていないのか?」

「え……あ。と……ち……陛下」


 どうやらまだ終わりではないようだ。



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