故郷のある大陸
「ライラ。これでもう着くんだよな?」
エラ・リラと分かれ、俺達は故郷である大陸に戻るために再び船に乗っていた。
その船の中は、元々の人数に加えて数人の頭がまともな、まだ会話のできる数人の獣人が新たに加わっていた。これは今回の貿易の話に獣人たち……というかエラ・リラ達の村も参加することになったからだ。
まあ、港はまだ完成していないけどそのうちできると思うし、移動の間に寄るだけの場所とするのはもったいないからな。
そんなわけで今の俺達は竜国の人間と獣人が混じった混成チームとして貿易の話をすることになったのだ。
「そうね。あれが私たちの大陸よ。と言っても、国についてもまだしばらくは移動の日々でしょうけれどね」
ライラの言葉にうんざりする。確かに港のすぐそばに首都があるわけでもない限り、移動には相応の時間がかかるだろう。
ここまで時間をかけて移動して来たんだから、今更数日延びる程度構わないだろうと思うかもしれないが、ここまで来たからこそその数日が長く感じる。
「移動かぁ……飛んでいったらダメだよな?」
「ダメに決まっているでしょう? そんなことをしたら騒ぎになるに決まっているじゃない。それに、他の人達はどうするのよ。一応竜国と獣人たちからの使節団で、貴方が率いてきたということになるのよ。その手柄をもって王族への復帰をした後の生活を――」
「わかってるよ。言ってみただけだってば」
竜国での最後、ガルにさらわれて二人だけで港に行った時はかなり怒られたからな。あの時は国の最高権力者が一緒にいたからほどほどで済んだけど、今回はそうはいかない。そんな無茶をしたら絶対に問題になること間違いなしだ。
「……はあ。でも気をつけたほうがいいわよ。貴族たちの間では、その〝言ってみただけ〟というのが今後を左右しかねないのよ」
「貴族ってめんどうだよな」
揚げ足取りっていうか言葉尻を捕えて無駄に批判する。そんなことをするくらいなら、自分を高めて目的を達成すればいいのにと思うけど、それができないからこその人間なんだろうな。
「そうね。でも、それが人間の暮らしというものよ。そして、貴方はそれに慣れていかないといけないわ」
「王族として、か……」
これから自分もそんなくだらない世界に踏み込んでいかないといけないと考えると、少しだけ嫌気がさす。第一、父親に会いに行くとは決めたけど、王族として生きていく覚悟があるかと言ったら……正直なところそんな覚悟はない。
「今からでも会いに行くのを止める?」
「国王……父親に? いいよ。一度はあっておかないといけないし、会ってみたいとは思ってたんだから。それに、本当に嫌だったら自分で勝手に出ていくよ。知らないかもしれないけど、ドラゴンって自由なんだよ」
「……知ってるわ。これまでの付き合いで嫌ってくらいにね」
いざとなったら暴れて逃げればいいという俺に、ライラは苦笑いしている。
けど、本当にいざという時はそうするつもりでいるが、逆に言えばいざという時が来なければ逃げるつもりはない。逃げたらライラと……父親にも迷惑がかかるだろうし。
ただ、会った後にどうするかはまだ決めていない。というか、決められるだけの要素がない。
「まあ、正直どうなるかわからないけど、会わない事には始まらないからさ。このまま村に帰ったとしても、ジジイ達に呆れられるだけだろうし。それにほら、エラ・リラやガル達のことについても一応は話を通さないとだろ?」
「それはそうね。あなたがいないと着いてきた獣人たちまでどこかに行ってしまいそうだもの」
まあそうかも。あいつらは俺があいつらの〝ボス〟だからこそ今回の話に乗ったわけだし。俺がいなければすぐに帰るんじゃないだろうか?
そんなことを話しつつ、意味がないと知りながらも今後のことを考えていると港へとたどり着いた。
「久しぶりの陸地だなぁ。これでしばらくは波に揺られないで済むと思うと、嬉しいのか寂しいのか……少し複雑な気持ちになるな」
船での暮らしもかなりのものだ。一月くらいは船の上にいたんだし、いまだに足下が揺れている感覚がする。これからはそんな揺れを感じなくて済むし、トイレや食事だって今までよりまともになるだろうけど、そのまともさに違和感を覚えるんだからどうしようもない。
「でも、ようやくだ。ようやく本来の目的を達成することができる」
呟いてから一度大きく息を吸い、吐き出す。それによって意識を切り替える。
不安はある。でも、好奇心もある。どうなるかわからないけど、とにかく会いに行かなければ始まらないんだから行くとしようか。




