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彼女のいる街  作者: しし
3/11

夏休みの予定

家に帰ると、珍しく両親がそろっていた。

「明日から、おばあちゃんの家に行ってくれ」って父さんが言った。

「ひとりでね」って、母さんが言った。


2人は、離婚するんだって。

まだ話し合いがあるから、しばらく会えないらしい。


その日は、お昼ごはんを母さんと食べた。

夜ごはんは、父さんと食べた。


母さんは派手なメイクをして、ヒールの音を立てて玄関に立っていた。

「婚活、行ってくる」って笑ってた。

それを見て、父さんが「お前は馬鹿か」って怒鳴った。


僕は、何も言わずに部屋にこもった。


夜になって、父さんが僕の部屋に来た。

片手にリュックを持ってて、「お菓子と飲み物、入れておいた。夏休みの宿題もな」って言った。

僕は黙って、そのリュックを受け取った。


部屋に置かれたリュックは

もうどこにも、帰る場所はないんだと、告げているようだった。



朝になった。

いつもなら彼女のインスタが更新されている時間。

でも、今日は何も投稿されていなかった

学校も夏休み。

だから今日は、誰からも挨拶を返してもらえない日になるだろう。



そう思いながら階段を降りると、両親が喧嘩をしていた。


僕の切符を、どちらも買ってなかったらしい。

お互いのせいだって、声を荒げて言い合ってる。


僕は、「自分で買えるよ、大丈夫」って言った。

「駅まで一人で歩いていけるから、大丈夫」って。

それから、リュックを背負って家を出た。


 


駅に着いて、おばあちゃんのいる海の近くの街までの切符を買おうとリュックを開いた。

その時に、携帯に通知が来た。

ベンチに座って、携帯を開く。

やっぱり、彼女の更新だった。


わくわくしながら投稿を開いた。

そこには、駅の写真があった。


彼女はいつも、駅名なんて写さないのに。

今日は、はっきりと駅名が写っていた。


──「新しい朝」

──「新しい友達が欲しいかも」


そう書いてあった。


なんだか、びっくりした。

遊びにおいでって言われたみたいだった。

顔も名前も知らない、挨拶と♡のやり取りだけをするインスタの中の彼女。


そんな彼女のいる街に、行ってみようかなって思った。



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