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8.農村に到着

今日から農村編です

「なんとか宿が見つかって良かったですね」


「あぁ……」


 俺は、馬車の交渉はしておきながら、寝泊まりする場所という重要事項を完全に忘れていたのだった。

 農村についたのは既に夜。当然だ、帝都を出発したのが夕方で、しかも街で暗殺者引き渡しまでしたのだから。そんな時間に宿を探すのは難しい。結局、一時間ほど歩き回った末に、村はずれの小さな宿を見つけて泊まることになった。


「アタシは野宿でも良かったンだけどなッ!」


「部屋に入ると同時にベッドに飛び込んで、爆睡していた人が言えたことですか……」


 フロートと同室だったコルレは苦言を呈した。

 俺はというと一人部屋で、冒険記録を付けてから眠りについた。冒険記録、とはいっても日記のようなものだ。俺のような新発見を探しているような冒険者は、些細なことでも記録するのが習慣になっている。


 反対にフロートのような、害獣駆除や討伐などの戦闘に重きを置いている冒険者は、冒険記録をつけない場合がほとんどだ。


「さっき、宿の人にプリンが美味しい店を聞いてきたんだ。ここから近いみたいだぞ」


「やったぜッ! プリンッ、プリンーッ!」


 フロートは今朝、大量に食べたばかりだというのに、もう食べる気でいるのか……。

 すぐに食べるかどうかは別として、俺たちはひとまず場所を確認するため、プリンを出すという店にまで歩くことにした。


「にしても、動物がたくさんいるなぁ……」


「流石、帝都の畜産物の半分以上を担うだけのことはありますね」


 豚や牛、鶏に羊……図鑑や書物でしか見たことがなかった動物たちが目の前にいる。

 羊って本当にモコモコしているんだな、あっちで鳴いているのは牛かッ! ……実物はちょっと臭うな。


 第二皇子という身分から、ずっと帝都周辺から出られなかった俺にとって、この農村は全くもって未知の世界だった。昨晩村についたときは暗くてよく見えなかったけれど、草はこんな青々と、遠くまで広がっていたんだな。心なしか空も澄んでいるような気がする。


「そうかァ、ゲンジは動物を見るのが初めてか……じゃあ、アタシが教えてやるッ! あれが馬で……」


「いや、馬は見たことあるぞッ! 帝都でも乗っていたし」


 フロートのやつ、流石に俺を馬鹿にしすぎじゃないか? そもそも、俺たちがここに来られたのは、馬車に乗ったからだぞ。

 ん? でも、あれは俺が知っている馬とは違うような……。


「俺が知っている馬は、頭部に角があったと思うんだが……」


「そうですね、私も原種の馬は初めて見ました。帝都の馬は単角(ユニコーン)種がほとんどですから……」


 なるほど、そういうことか!

 確か、皇宮図書館にあった本にそんなことが書いてあったような気がする。


 帝国の馬は、足が速い単角(ユニコーン)種とそれに劣る速さの原種の二種に大別される。一説によると、単角(ユニコーン)種は、異界からやってきた存在で、原種は元々いた種だという。他の動物も馬と同じように、よく似ているが別の性質をもったものは発見されている。


 異界なんて突飛な話だ、と俺は思ってしまうのだが、帝国の歴史書、特に建国期のものには『異界の門』から人や動物がやってきたという記録がある。だから、冒険者たちの中には、異界の門を探そうとしている人も少なくない。当然ながら、そんなおとぎ話の代物は現在も見つかっていない。


「原種の肉は旨いんだッ! 単角(ユニコーン)種も歯応えがあって悪くないンだが、やっぱりあのとろける肉には勝てねえよなァ……」


 じゅるりとフロートは涎を啜った。

 生きてるご本人……違うな、ご本馬の前でそんなこと言うなッ! 確かに、帝都の馬と違って、柔らかそうな……いやいや、フロートにつられて変なことを考えてしまったじゃないか。


「あれじゃないですか?」


 コルレが指差した方を見ると、一軒の家があった。いや、横にはテーブルとイスが並べられている。飲食店だ。


「えーっと、目印は大きな卵の置物……あったッ! あそこで間違いなさそうだ」


「プリンだァ! あの大きさの卵だったら、どれだけデカイのが出てくるンだろ……」


「あれはただの置物だからな。あの卵を使っているんじゃないぞ」


 俺の腰くらいまでの高さがある卵だ。あれだけ大きな卵はドラゴンの卵くらいだろう。


 店の前まで来ると、なにやら看板が掛かっていた。

 ええっと、何々……。


「臨時休業ッ!?」


「そ、それって、プリンが食べられねェってことかッ!?」


「残念ですね……はぁ、フロートさんが動物の前ではしたないことばかり言っていたから、ばちが当たったんですよ」


 嫌だ嫌だと喚いているフロートに、コルレは毒を吐いた。


「まぁ、急ぐ旅でもないし……明日また出直そう」


 昼に美味しいものを食べようと言ってフロートをなんとか説得し、俺たちはこの場を後にしようとした。その時だった。


「ママとパパなんて、大ッ嫌い!!」


 ドンッと店の扉が開いて、そこから少女が走り去っていった。

 親子喧嘩でもしたのだろう。俺は経験がないから分からないけれど……。


 次の瞬間、フロートが走り出していた。

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