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12.お手伝い

 明けましておめでとうございます!

 諸事情で投稿が遅れてしまいすみません、今年もよろしくお願いいたします!

「陛下が女性といらっしゃったことは、一度もなかったはずじゃが……」


「え、そんなッ……!」


 だって、父上はここでフリューゲルと過ごした思い出を話していたんだ。


『お前とオーキッドの花を見て、夜はコテージで互いの似顔絵を書いた……あぁ、あの絵は、今は、どこに、あるのか』


 あの幸せな記憶を思い返す顔は、嘘や記憶違いだとでも言うのか。そんなはず、ない。


「じゃあ、コテージってありますか。陛下が泊まったと聞きました」


「あぁ、それならもう取り壊されてしまったよ。老朽化が酷くてのぉ……」


 コテージは本当にあったんだ。もう中を調べることは出来ないけれど……。


「もしや、先帝陛下のことを調べているのかい? ならば、新しいコテージに行くと良い。取り壊された方からほとんどの物はそのまま移してあるからのぉ」


「ッありがとうございます!」


 当時のものがそのまま残っているならば、何か父上とフリューゲルの痕跡が残っているかもしれない。建物そのものはなくなってしまったけれど、希望はある。


「その代わり、儂の腰が良くなるまで、庭園の手伝いをしてくれんかね」


「はい、よろしくお願いします!」


 次の瞬間、扉がバンと開いた。


「待ってくれッ! オレがいるのに、なんでコイツらに手伝いを頼むんだッ!」


 扉の前にはさっき外で会った少年が立っていた。


「タクラン庭園は広い。お前一人でやるのは大変じゃろう」


「でも、じいちゃん……」


「ジュン、彼らに仕事を教えてやってくれ」


 ジュンと呼ばれた少年は、不満そうに了承した。


「お前ら、名前は?」


「俺はゲンジ。こっちがコルレとフロートだ。三人とも冒険者で、今は旅をしている最中なんだ」


「ふーん、オレはジュン。この庭園の仕事ならオレだけで回せるのに……はぁ、とりあえず仕事を見せるから覚えろよッ!」


 俺たちは外に出て、近くのオーキッドの株の前まで来た。ジュンは腰のバッグからハサミを取り出して、オーキッドを切り始めた。


「な、なにやってるンだよッ、切ったら花が咲かないだろッ!」


 フロートはぎょっとして、声をあげた。

 しかし、ジュンは呆れたように説明を始めた。


「むしろ逆だ。こうやって花芽を間引いてやらないと、栄養が行きとどかなくなって、綺麗な花が咲かなくなっちまう」


 そんなこともわからないのに手伝いなんて大丈夫か、とため息をつくジュン。


「そうなんだなァ……よし、アタシもたくさん切るぞォ!」


「いえ、フロートさんは何かしでかしかねないので……そうですね、水でも汲んできたらどうですか」


「ンなんだとォ?」


 確かにフロートがハサミを持ったら、ろくなことにはならないだろう。コルレの言うことも頷ける。


「お前ら、次行くぞッ!」


 俺たちは、樽が並んでいるところにやってきた。

 樽の中には、さまざまな色の液体が入っていた。この液体は皇宮の温室で見たことがある。


「液体肥料、だよな」


「お前、よく知ってるな。タクラン庭園と他には皇宮庭園くらいでしか使われていないのに……」


 確か、液体肥料はタクランの血筋の冒険者が30年も前に開発したと本に書いてあった気がする。そんな昔の発明だから、もう普及しているのでは……。ああ、ヒステリア公爵家の顔色を窺っている貴族の庭園では使われていないんだ!


「た、たまたま本で読んだんだよ!」


「そうか。ゲンジ、お前はそこの筋肉女と違ってまあまあやるじゃねえか」


 会ったばかりのジュンにまで筋肉呼ばわりされるフロート。まぁ、見るからに筋肉だし、しっかりと鍛え上げられた身体だから仕方がない。


 ジュンは、バケツに液体肥料を入れて混ぜていく。

 なるほど、この黄色の方と青い方を1:2くらいで合わせれば良いのか。こういう分量をはかって混ぜるような作業は、コルレの得意分野だな。


「まぁ、こんな感じで混ぜていくんだ。どうだ、お前らには難しいだろッ!」


「これで合っていますか」


 コルレの方を向くと、もう調合を終えていた。

 いくら得意分野とはいえ、早すぎるだろう……。


「くっ、ま、ま、まあまあだなッ! でも花芽の剪定は…」


「こうですよね。もう教えていただきましたので、見様見真似で」


「完璧だ……いや、まあまあだッ! オレもそれくらい出来るし」


 それはそうだろうなッ! 教えたヤツが出来なくてどうするんだ。


「じゃ、じゃあッ! 葉についた虫を潰すのはどうだッ! へっ、女には出来ねえだろ」


「出来ますよ? 私、専属侍女ですので」


 何の躊躇もなく、素手で虫をプチプチと潰していくコルレ。その手際は最早殺戮者……。


 ジュンは呆然とコルレの流れるような作業を眺めていたが、突然大声を出した。


「おい、そいつは毒がッ!」


 止めに入ったとき、すでにコルレは虫を潰した後だった。


「すぐに手を洗ってこいッ!」


 コルレは水場まで()()()行った。一大事なんだから急げよッ!!


「ちなみに、あの虫は潰したらどうなるんだ」


「触れた部分の皮膚がかぶれて、処置が遅れると毒がそこから全身に回って……死ぬ」


「じゃあコルレは死ぬってことかァッ!? 嘘だろ、嘘だよなッ!」

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