平和な一日
普段はジャージをはいています。バイトもジャージ、家でもジャージ。でも昨日の私はちがった!
お出かけ用のチノパンをはいて、新しいポロシャツ(プレゼントでもらった)を着て、スニーカー(プレゼントでもらった)をはいて完璧な服装で遊びに出かけました! キャップ(プレゼントでもらった)をかぶって日焼け対策も万全です!!
最初の行き先は奈良県の橿原市の河童本舗というラーメン屋さんです。お店にカッパがいるのかなぁ? それともカッパ味のラーメンなのかなぁ?ww 席に案内してくれたバイトの男の子の髪の毛がキレイな緑色! まるでカッパみたい!! そしてTシャツの胸にはデカデカと「河童」の文字が!! キミ、ぜったいに狙ってるやろう!? 奈良県のお笑いギャングか!? ワタクシついにカッパを発見しました!! お店にカッパのいるラーメン屋さんでした! カッパ君が持ってきてくれたのは、そうめんツユみたいな甘いツユのつけ麺! 麺の上にちらしたカイワレの辛味と、ツユに溶かしたワサビの味が良いアクセントです! んまかったです! ごちそうさまでした!
次の行き先は奈良県のおふせ寺。お寺の境内にバラが咲いているというので大好きなバラを見に行った。鉢植えの小さなバラがたくさん並んでいて、とても可愛かったです♪ そよ風で運ばれてくるバラの香りを楽しみながら先に進むと、にごった池がありました。池には30cmくらいのカメがたくさんいて、思いおもいに甲羅干しをしています。大きなカメは、ちょっとこわい……。見ていると一匹のカメが他のカメのように甲羅干しをしたかったらしく、池からあがろうと石に前足をかけた。重いカラダをよいしょと持ち上げるが、そこから上にあがれない。がんばれ~! なんとかツメをひっかけて20cmほどあがったが、石の上まであと10cmある。もう少しだ頑張れ!! 応援しているとカメが自分の体重に耐えかねてプルプルふるえだした!
プルプルプルプル……!! 甲羅から長くのばした首と前足がプルプルふるえている! めっちゃ可愛い!!
そしてプルプルふるえながら前足をのばすと見事に石の上へ登頂成功!! おめでとう! よく頑張った!!
バラを見にいったのにカメに可愛さに目覚めてしまいました☆ カメ、かわいい♡
ラーメンも食べたしバラも見たし、カメは意外とかわいかったし満足です♪ でもまだお昼すぎ。彼のおすすめで紫陽花が綺麗だという矢田寺へ向かいます。遠くから見える矢田寺は、山の中腹に建造された大きなお寺です。山の中腹……。あそこまで歩くのですか? イヤな予感がします。
そうは言っても車を降りるとさわやかな風が頬をなでる。気持ちいい! 今日は行楽日和♪ 元気に坂をのぼりはじめましたけれど、すぐに息が苦しくなった。ちょ、ちょっとこれは……! 道のはしっこをゼエゼエいいながらのぼる。後からきたカップルやご家族にどんどん抜かれていくけれど、どうぞお先に行ってください……。歩幅が5cmもないちっちゃなチワワにチョコチョコと抜かれましたけど平気です。キミはワタシの屍を超えて先へ行ってくれ……。一歩すすむたびに息が上がるのは、きっと空気が薄いせい(←ぜったいちがう)。
なんとか坂をのぼったと喜んでいたら、そこから先は長い長い階段が!! もう帰りたい……。来るんじゃなかった……。彼に日傘とバッグを持ってもらって歩きますが、それでもしんどい……。すみません。このお寺のパンフレットも持ってもらえますか? 2gもないでしょうけれどそれでも重たくて……。
階段の中央にあるステンレス製の手すりを持って息も絶えだえにのぼります。たしか遊びに来たはずなんだが修行みたいだぞ……。それとも何かの罰ゲームなのか……?
後ろのほうから元気な男の子の声がしたかと思うと、軽い足音とともに彼の気配が近づいてきました。でも後ろを見る余裕はないので前だけを向いて階段をのぼる。彼は手すりをポンポンと叩きながらあがってきてワタシのすぐ後ろに来て足を止めた。どうやら彼のルールで手すりを叩きながら上へ行きたいらしい。お、おばちゃんはこの手すりを持ってないと死んじゃうから、ごめんけどおばちゃんを抜かして先へ行ってください……。
「ケンちゃ~ん! 先へ行ってていいよぅ~!」
遠くからお母さんらしき若い女性の声がします。そうか君はケンちゃんというのか……。ケンちゃん、ワタシのせいで君が手すりを叩けないのはあいすまんが、階段は広いからワタシを抜かして先へ行ってくれ……。もし登頂が成功したら頂上で会おう……(← ワタシは死にそうですけれど、山はそんなに高くないです)。するとケンちゃんが言いました。
ケン:でもこのおじいちゃんが(ジャマで先へ進めない)……。
それを聞いた瞬間、ワタシは膝から崩れ落ちました。おじいちゃん……。自分ではおばちゃんだと思っていたが、まさかおじいちゃんだったとは……。そうかワシはおじいちゃんだったのか。さっきのカメは竜宮城のカメだったんじゃろうか……。いつの間にか何十年もたってしまったんじゃろうか……。さっき見たカッパも竜宮城のカッパだったんじゃろうか。バラもキレイだったぞ……。しかし、おじいちゃん……。はじめて言われたぞ……。
あまりのショックにヒザが笑うようになり、歩いていると勝手にヒザがカクンと折れてその場に座り込んでしまいます。それを見た杖をついている本物のおじいさんが気の毒そうにワタシを見ながら階段をおりてくる。そして杖と反対の手で持っていた手すりから手を離して、ワタシに手すりを譲ってくださろうとする。いやワタシが手を離しますから、さすがに手すりはお持ちください。でもおじいさんは登頂に成功したのですね……。尊敬します……。もう帰りたい……。
その後も杖をついたヨボヨボのおばあさんに後ろからゆっくりと抜かれ、何人もの若人たちの背中を見送りながらやっと最後の一段をのぼりました。振り返るとまほろばの里が眼下に一望できます。素晴らしい眺めですがワタシは倒れたい!! ベンチに倒れ込んで息をととのえるワタシ。彼は心配そうで、ワタシがとったキャップでパタパタ風をおくってくれたり飲み物を買ってこようかと言ってくれますけれど、ワタシは飲み物よりも酸素ボンベがほしい(← たいした高さの山ではありません)。
周囲には色とりどりの紫陽花が咲いていますが、美しい花を楽しむ余裕はない!!
なんとか本殿を参拝します。もう少し上へあがると別の建造物があるらしいのですけれど、そこまで行く体力も気力もない。とにかくカラダが動くうちに下山しておうちに帰りたい……。
彼の案内で紫陽花の咲く小道を下ってゆきます。よかった。やっと帰れる。ところが道が上り坂になった。帰りたいのに上り坂ってどうゆうことっ!? 心臓破りの坂(じっさいはゆるやかな坂です)をのぼったりおりたりする間ずっと紫陽花が咲いている。元気なら花の美しさを楽しむけれど、いまのワタシにそんな余裕はない! とにかく帰りたいんだ!!
ウネウネ歩いているとさっき来た道に出た! どういうこと!? こんなことなら本殿からまっすぐこの道に出ればウネウネ歩かずにすんだのに!!
彼 :今の道はですね紫陽花を愛でるための散策コースだったんですよ。きれいだったでしょう?
ソウ:ただの遠回りかい!! ありえへん!
ワタシに綺麗な花を見せて喜ばせてあげようとする彼の好意をブチ壊しにする一言を吐いてしまいました。いまは反省しています。ごめんなさい。でもその時はしんどすぎて、そんな気持ちの余裕がなかったんです。ごめんなさい……。
ヘロヘロで車にたどりついてシートへ倒れ込む。疲れた……。紫陽花を楽しむ余裕なんて1㎜たりともなかった……。死ぬかと思った……。あまりの過酷な行程(← ワタシ以外の方ならぜんぜん楽勝だと思います)に疲れ果てていつの間にか助手席で寝落ちしました。目がさめると月ケ瀬温泉です。今日は滝のような汗を流したからサッパリしよう!! キャップをかぶって車をおります。
女湯へ入るとなぜか入口にいた女性客がワタシをガン見している。気にせず中へ入ると着替えをしていた女性たちがいっせいにワタシを見た! ななな、なんですか? ワタシ、顔になにか付いていますか?
ワケもわからず全員から注目されてボーっと立っていましたけれど、不意に理由がわかった。男性と間違えられてるんだ! キャップをかぶってダボダボのポロシャツにチノパンだから、男性に見えてるんだ!
あわててキャップを取るとビンゴ! 皆さんワタシの顔を見て女だとわかると、安心したのかほっとため息をつきながらそれぞれの着替えに戻った。驚かせてすみません……。でもワタシ女に見えませんか? そうですか見えませんか……(涙)。もしかしたら、おじいちゃんに見えましたか?(涙)。
いろいろとありましたけれど楽しい一日でございました♪
ついにおじいちゃんデビューをしたので、次のお出かけには杖を持っていきたいと思います☆ 思う存分ヨボヨボしてやる!!