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レッドパンサー  作者: 檜狐
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第1章 2話

 とあるパート従業員の悲鳴が早朝のビル街に響いた。


 彼女が見たものは真っ赤な血に染められたビルの外壁と無造作に置かれた1つの生首──。

 そう、彼女が見た生首は死彪に食事のために狩られた男だったもの。

 彼女は知識として死彪が狩りを行うため夜に徘徊をするということ知っていたが、自身の目で奴らの狩猟後を見ることないと思っていたのだろう。


 彼女の悲鳴を聞きつけて多くの野次馬が集まってきた。


「あぁ、またやられたのか」


「今回は首をおいていったのか」


 野次馬たちは目の前の光景が、あたかも日常の風景かのような言動を見せていた。彼らは慣れすぎてしまったのだ。

 死彪に食われてきた人達の亡骸、いや断片を……。

 

 しかし、近隣の住人や会社、労働者が移動しないのは理由があった。

 それは『死彪(しひょう)防衛機関(ぼうえいきかん)』通称『NPDI』が近場にあるということ。死彪防衛機関の歴史は実に深く、数多くの事件を解決してきた。ここでいう事件は無論ヒトではなく死彪によるものであるが──。

 この組織があることにより市民は死彪に多く食べられずに済んでいるらしい。

 それに加え、死彪の食事のペースは月に1回ぐらいとされており、殺人事件が月に1回ぐらい起きるるようなものだろう近隣住民は軽く考えている。


 野次馬の後方から騒がしくなってきた。NPDIの職員が到着したのであろう。

 

「皆さんどけてください。死彪防衛機関です」


 そう言いながら和装をした複数の大人が現れ、王冠と刀をあしらった紋章を見せてきた。


 現代社会で会社に勤める者はスーツを着ることが普通となっているが、NPDIだけは和装の着装を命じられている。これは昔の『闇断(あんだん)』という特別職の流れを汲んでいるかららしい。

 決して、NPDIの上層部が着物コス好きだったり、ジャパニーズサブカルチャーが大好きだったりというわけではない……。そう、決して……。

 

 また、彼らは和装以外に普通の社会人と違うところがある。男女構わず、大小の刀を腰の差していることだ。

 それ故に、彼らは『現代の武士』という俗名を持っている。


 彼らは首を囲むように陣取り、持っていたアタッシュケースから複雑な構造をした機械を取り出したり、周辺の血痕を採取したり、辺り一帯を調査し始めた。

 和服をきた大人がハイテクな機械をもって調査するのはかなり目を引く光景だろう。


 5分ほど経過したであろうか。

 1人の青年が息を切らしながら駆けてきた。彼は野次馬の垣根をかき分けて、NPDIが調査している区画に入ろうと試みた。


「ちょっと、君何やっているの。だめだよ、今調査中なのだから」


 青年は区画に入るあと数センチのところで職員に肩をつかまれてしまった。


「なんだよ、てめぇらに関係ねえだろ。その手、放せよ」


 青年は掴まれた手から逃げようと振り払おうとしたが、彼の試みは失敗してしまった。

 青年の肩をつかんでいた職員が、眼も止まらぬ速さで彼を投げ拘束したからだ。


「おい。青年!これ以上邪魔すると法に抵触するぞっ!」


「法なんてそんなもの知らない!!あそこにいるのは俺の父親なんだよっ!!」


 青年は顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら泣け叫び、その間にも拘束から逃げようと必死でもがいた──。

 彼を拘束していた職員は青年の言葉を聞くやいなや、強めていた拘束の手を緩め、彼の体を起こすのを手伝いながらこう言った。


「そうか、君が彼の息子か……。あまりいいアドバイスとは思えないが、今は見ないほうがいいだろう。それより君の住所……、名前を教えてもらえないかな、葬儀の案内をするから。死彪の被害者はNPDIが全費用をだすのが決まりでね」


橋本勝虎(はしもと まさとら)……。住所は今、紙にかいて渡すので紙とペンを貸してもらえますか」


 勝虎は職員から紙とペンを貸してもらい、発狂したい気持ちをなんとか深呼吸で抑え込み、ミミズが這ったような字で紙を濡らしながら住所と名前を書いて職員に渡した。

 職員は紙を受け取り考える仕草をみせた後、勝虎に1枚の名刺を渡した。


「君の父親は不幸にも奴らに殺されてしまったが、心ばかりの謝罪の気持ちだよ。なんかあったらこの電話番号にかけて君の名前を言ってくれ。1回だけなんにでも聞こう」

職員はそう言って頭をペコリと下げ、調査しているところに戻っていった。


 名刺にはこう記載してあった。


死彪防衛機関 特級職員 討伐課 部長 赤城皓士郎(あかぎ こうしろう)

×××―〇〇〇〇―××××


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