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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
9/248

(開演)9

 斎藤義龍は道三軍の真正面に到着した。

移動疲れのところを狙われるかと思いきや、動き出す気配が微塵もない。

全軍の陣組みは長井道利に任せ、本陣を出て道三軍の様子を見た。

 こちらの目算を外し、長良川を渡河して余裕で待ち構えていた。

遠目にだが、無勢にもかかわらず小高い丘に堅陣。

攻め落とせと誘っているのか、あるいは織田軍待ちか。

道三、老いたるとは言え、あっぱれなもの。

踏み潰しがいがある。

味方第一陣から日根野弘就が歩み寄って来た。

「嬉しそうになさいますな。

こちらは手こずるのです、そこはお忘れなく」

「許せ。

これで終わるかと思うと感慨深い。

ここを墓場にしてやろう」

「問題は援軍の織田軍ですな。

すでに木曽川を渡河し、急ぎ向かって来ています」

「それを道三軍は知っておるのか」

「織田軍、道三軍、双方の使番は見つけ次第、切り捨てております。

それでも抜けて来る者は多少はいるかと」

「うむ、少し弄るか。

織田軍には西濃勢を当てる。

こちらからは向かわず、織田軍が走り疲れする辺りに布陣させよう。

道三軍には東濃勢を当てる。

正面から押して押して、浅瀬まで押し戻す。

途中で崩せる様なら殲滅しても構わん。

取り零しは対岸に回り込んでいる竹腰勢に任せればよかろう」

「我等、中濃勢は」

「中濃勢は待ちだ。

双方の様子を見つつ、つぎ込む」


 丘の道三軍に動きは見られない。

織田軍の到着を待っているのだろう。

その織田軍が着々と接近していた。

本陣の斎藤義龍の元に物見から次々と知らせがもたらされた。

 道三軍が渡河した浅瀬の対岸に竹腰勢が布陣した。

与力の土豪や地侍を含めて千五百。

小勢だが、牽制にはなる。

 西濃勢が丘から離れた地点に布陣した。

予想される織田軍の進路の真正面。

多少の誤差があっても充分に対応できるはずだ。

 と、丘の道三軍から鬨の声が上がった。

そこへ物見が本陣に駆け込んで来た。

「織田軍の先鋒千が間近に迫って来ております。

直に西濃勢と会敵します」

 斎藤義龍が即座に問う。

「千とは少ないな」

 物見が応じた。

「信長自ら先鋒を率いている模様。

本来の本隊千、小荷駄隊五百は遅れております」

 斎藤義龍は日根野弘就に目をくれた。

「日根野」

「はっ」

「織田軍の遅れている本隊とやらが気にかからぬか」

「小勢は奇策に頼るものですからな」

「任せてよいか」

「おまかせを」


 二方向から喊声が聞こえてきた。

左耳には織田軍先鋒が西濃勢にぶつかる音。

右耳には道三軍が丘を駆け下り、東濃勢に斬り込む音。

斎藤義龍は長井道利を見た。

「自ら丘から降りて来るとはな」

「何らかの勝算があるのでしょう」

「ここは確実にやる。

長井、迂回して丘を攻め取れ」

「攻め取った後は」

「任せる」


     ☆

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