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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
87/248

(交錯)7

 土方が部隊編成を終えた。

「弓騎馬二百、槍騎馬二百、鉄砲騎馬百。

精鋭のみを集めました」

 これに私の供周りの騎馬を加えると総勢六百。

十分だ、これで信長を助けられる。

五名の女子を邪魔にならぬように後尾の供周りに配した。

と、私に歎願する視線が向けられた。

蟹海老蔵だ。

公方を討った功で今や百人頭。

出たい、出たい、そんな目色をしていた。

私は尋ねた。

「馬に遅れずに付いてこれるのか」

「当然です。

某共は山窩、山育ちです」

「健脚のみを従え、女衆を守れ。

それが出来るなら許す」

「はい、喜んで」


 先導したのは供周りのうちの十騎を率いた土方。

「者共、遅れるな」

 そう言うと後ろは気にせずに馬を走らせた。

まず槍騎馬二百、続いて弓騎馬二百、鉄砲騎馬百。

最後尾は女子達と私を守る供周り衆。

遅れじと蟹海老蔵が組下の槍足軽を率いて従う。

選ばれた健脚足軽は三十名近い。

何れもが槍を肩に担いでいるのだが、遅れる者は一人もいない。


 沈下橋をドドッと渡って尾張に入った。

射撃音だけでなく、怒号や剣戟の音も聞こえて来た。

暫くすると物見として先行していた沖田達が待ち構えていた。

「信長様はご無事です。

これより先は明智家の手出しは御無用だそうです」

 代表して土方が声を荒げた。

「どういう訳だ、手助けは要らぬと言うのか」

 沖田が困った顔で言う。

「信長様がご説明なされます。

少数で来てくれと言うことです」

「沖田、お前は何か聞かされたのか」

「私が言うより、信長様の口から聞かれた方が宜しいかと」


 少数で信長の下に向かった。

私に土方、沖田、お絹にお市、お宮、そして供周り十名。

途中、信長の近習が出迎えてくれた。

その案内で獣道を進んだ。

 信長は小高い丘に布陣していた。

その丘の上に招かれた。

我々に気付いたのか、信長が振り向いた。

「心配かけたな」

 言い終えるより先に、お絹やお市が駆け出した。

信長に抱きついた。

「心配しましやーた」

「怪我はねぇだがやきゃ」

 信長は嬉しそうに二人の頭を撫で回した。


 私は敵陣を見た。

あの旗印は・・・。

案内してくれた近習が説明してくれた。

「犬山城の城主、織田信清殿です」

 信長の姉の嫁ぎ先だ。

聞こえたのか、お絹が敵陣を睨んだ。

「本当にそうだがやね。

どうして義兄様が裏切ったのだがやきゃ。

兄上、何か心当たりは・・・」

 信長が答えた。

「戦国の習いとしか言えぬな」

 それから信長は私を見た。

「不意を突かれた。

奴等は帰りを待ち構えていた。

それでも先導の森が奮戦してくれた。

お陰でこの地にまで逃れられた」

「我等の参戦が不要と言うのは」

「実はな、信清がワシの首が欲しいように、ワシも信清の首が欲しいのよ。

血筋は怖いな。

息が合ってしまった。

奴はワシの帰りを狙った。

ワシも帰りに奴の城を頂くつもりでいた。

分かってくれるか」


 答えは一つしかない。

「ここに敵を引き付けている間に別の部隊が城を攻めているのですか」

「そうだ、祝い事で人目を惹いて、その隙に別の手勢を動かして置いた。

帰りに双方から攻めるつもりでいた。

ところがこれだ。

天祐。

絶好の機会、そう思わないか。

敵に追い詰められた振りして、ここに引き付ける。

その間、城は裸同然だ」

「間違えたら信長殿の首が飛びましたよ」

 信長は首を摩った。

「まだ大丈夫みたいだ」


 お市が信長の首に手を伸ばした。

「お姉さまはどうなるのだがやきゃ」

「姉は賢い。

無駄死にはせんよ」

 お絹が真摯な顔をした。

「お姉さまに万一の事があにゃ、私は貴方を許しせん」

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― 新着の感想 ―
[一言] おお、史実の「長良川の戦い」に似た展開だったので、ここで信長は死んでしまうのか?と心配しましたが、どうやら生き延びられそうで安心しました。 やはり数年後におそらく起きるであろう「桶狭間の戦い…
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