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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
85/248

(交錯)5

 森可成勢五百が先導した。

それに明智家旗本隊四千が続いた。

一組五百で計八組、整然と行進して行く。

最後尾は信長の本隊千。

 明智家の最後尾・第八組に私と信長が馬で並んだ。

これに二つの輿が付き従う。

お絹とお市だ。


 信長は意外と気配りの人だった。

私に色々と問いかけてきた。

「城の門番の詰め所に、斬り捨て御免の免許状とあるそうだな」

「話が通じぬ来客の処遇は門番に任せているのです。

門番も大人ですから、それなりの対応が出来るのですが、

どうしようもない者もたまに現れて手を焼かされるのです。

その時の為の斬り捨て御免の免許状です」

「本当に門番の一存で斬り捨てるのか」

「詰め所の者達が合議の上で斬り捨てます。

斬り捨てたら書類にして上に提出する。

それで一件終わりです」

「公家も斬り捨てたと聞いたが」

「はい、幾人かスパッと。

・・・。

公家は偉い貴し、そう世間や当人が思い込んでいるだけです。

何を持ってして偉い貴しと言うのか・・・。

我々と違って官職や位階なるお飾りを持っている事ですかね。

・・・。

もっとも、お飾りがなければ、ただの人、ただの無礼な奴」

 信長は目を丸くした。

「他人には聞かせられぬ話だな」


 信長は私と話しながら、妹二人にも話を振る。

「お絹、乗っていて腰は疲れぬか」

「ちいと疲れましたけど、我慢だがや」

「お市、お前はどうだ」

「私は若いから大丈夫だがや」

 お絹がお市に言う。

「お市、みゃあ一緒に寝てあげねぇよ」

「聞いてちょ」

「あかんがね」

 二人してケラケラ笑い合う。

 信長が私に右手に見える城を指し示した。

「あれが犬山城だ。

あそこの城主に姉が嫁いでいる」


 予定より早く国境に着いた。

その国境の川を越えた地点に出迎えの者達がいた。

十番隊の隊長・原田佐太郎と参謀・片岡源太郎、そして手勢百。

原田が進み出た。

「お待ちしておりました」

 その原田が鼻高々な顔で川を指し示した。

橋が架けられていた。

私は驚いて尋ねた。

「何時の間に架けたんだ」

「一昨日に取り掛かり、今朝完成しました」

「早いな、突貫工事か。

・・・。

よく見ると、あれは沈下橋だな、誰が考えた」

 沈下橋は洪水対策として堤防より下に設けられる。

そして欄干がない。

「職工の村の者達です」

「よく考えついた、偉い、金一封だな。

それで強度についてはどう言ってる」

「一年持てばと」

 突貫工事の木造橋、一年も持てば十分だ。

この経験を次に活かせばお釣りが来る。


 信長や森も興味津々で前に進み出て来た。

「ワシが渡る」

「それでは某もご一緒します」

 私は置いてきぼりで話が纏まった。

信長と森が騎乗したまま、橋を渡った。

短いので直ぐに戻って来た。

満足せぬのか、再び渡った。

帰りは馬を走らせた。

上機嫌で信長が原田に尋ねた。

「どうやった。

犬山城の者達に見つかったら騒ぎになる筈だが・・・」

「職工の村で一度、完成させております。

・・・。

職工の村で全ての木工作業を行い、一度組み立てて強度を確認し、

それをバラシてここへ荷馬車で運んで来ました。

ここでは最終組み立てだけですから大きな音は出ません。

騒ぎにもなりません。

最後まで犬山城の方々には見つかっておりません」

「なるほど、組み立てただけか。

よく考えたな、当家でも真似るか」

「いいですな。

これなら冬でも渡河が楽になります」

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