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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
8/248

(開演)8

     ☆


 明智家の留守を預かる前当主・明智光継は朝食を終えると、

いつも通り執務室に足を運んだ。

斎藤親子で内戦していても領政の書類は提出される。

一つ一つ、目を通して行く。

結果、留守居として裁可できるものが少ないので、

未決書類が積み重ねられる。

 腕を止めて一息いれた。

肩を叩き、首を回す。

はてっ・・・。

城周りで作事を行っている者達の声や音が聞こえてこない。

空堀をより深くし、木柵をより強固に組んでいる筈なのに、

夜の様に静まっていた。

何か出来したのか。

近習に声をかけた。

「作事はしておらぬのか」

「はっ、そう申されますと、はて、聞こえませぬな。

見て参りましょう」


 慌てふためいて近習が戻って来た。

「作事の者達が一人もおりませぬ」

「完了したのか」

「途中で止まっています」

「光国から何か聞いておらぬか」

 作事の者達は光国が銭で雇っていたので、

明智家で口出しできる範疇にはない。

一切の指示は光国からしか出せない。

近習は首を横にした。

「何も聞いておりませぬ」

 そこへスリスリ、スリスリと衣擦れの音。

光国の側仕えの奥女中・お園が現れた。

廊下にゆっくり跪いた。

「作事の者達をお探しとか」

 光継は目をくれた。

「お園、知っておるか」

「はい。

光国様から言伝を預かっております」

「言伝とな」

「ご隠居様がお気づきになられたら伝える様にと」

「聞こう」

「ちょいと戦して来る、そう言伝る様に申されました」


 光継は判断に迷った。

ようようのこと、口を開いた。

「意味が分からん。

ちょいと戦して来る、どこへ」

「西へ向かわれました」

「一人か」

「まさか、大勢です。

銭雇いの者達を引き連れ、昨夜お出かけになりました」

「誰にも気付かれておらぬのか」

「はい、騒ぎになっていないので、その様です」

 光継は平然としているお園に怒りを露わにした。

「馬鹿もん。

勝手するのを止めるのが側仕えの仕事だろう。

・・・。

それにしても光国の奴、戦したいなら最初から言えばいいものを。

すると、道三様の下へ駆け付けておるのだな」

「詳しいことは聞かされておりません」

「むっ、他の側仕えは」

「ご一緒です」

「そうか、兵力は」

「四千。

職人達は残しております」

「四千か、よく隠していたな。

装備を見たか」

「全て揃えられておりました」


 自分の手柄の様な顔をしているお園を見て、光継は呆れ返った。

「それにしても、何故いまなんだ」首を傾げるばかり。

「光国様は、ときは今、と申されました」

「ときは今、わからん、あ奴はいつも訳の分からん事ばかりを」

「敵を欺くにはまず味方から、とも申されました」

「孫子か」

「最後に、お爺様ごめんね、だそうです」

 光継は床を踏み抜かんばかりに、踵でドンッ。

床板をバリッと踏み抜いた。


     ☆

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