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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
62/248

(包囲網)5

 足利義輝の目に騎馬の一団が映った。

五十騎ほどがこちらに向かって来る。

「あれは誰だ」

「旗印からすると武田信虎殿ですな」

 甲斐武田家の前守護であったが、今は嫡男に追放された身。

とは言っても、ただの素浪人ではない。

収入は保障されていた。

追放した甲斐家からの隠居料。

娘婿の今川家からは給地。

幕府からは奉公衆に任じられて知行。

甲斐時代よりも金満であった。

「今川に戻っていた筈ではないのか」

 六角義賢が薄笑い。

「親しくしている者が知らせたのでしょう。

あの方は戦が大好物ですからな」

「たしかに大好物だな。

食い過ぎて腹ではなく守護の座を失ってしまったがな。

しかし、あれが来てくれるとは心強い」


 軍議が始まった。

足利方と六角方の主立った面々が招集され、床几に腰を下ろした。

物見から戻って来た六角家の武将が、

陣卓子に広げられた地図を指し示して状況を説明した。

「この辺りの国人衆は全て関ケ原城へ入城しました」

 六角義賢は疑問を呈した。

「内応を約束した国人達はどうした」

「彼等も関ケ原城に入りました」

「繋ぎは付けられぬのか」

「蟻一匹通さぬ警戒ぶりです」

 義賢は三雲賢持に目を遣った。

「甲賀衆はどうした」

「腕利き五人ほどを向かわせましたが、一人も戻りません」

「甲賀の裏切り者の仕業か。

あれをどうにかせい、潰せ」

 猪鹿家の事だ。

三雲は首を横にした。

「甲賀の申し合わせには反しておりませんので、手出しできません」


 足利義輝と六角義賢はこの辺りで敵国人衆と小競り合いを起こし、

戦線を膠着させて、明智家の目と軍を引き付けるつもりでいた。

目的は明智家を小谷城に籠城させない、ただその一点。

何とかしてこちらへ誘い出す。

そして小谷城から引き離す。

それを見届けた越前朝倉家と若狭武田家が北から近江に攻め込み、

明智家の背後を襲う。

そう言う陣立てになっていた。

が、肝心の小競り合いする相手がいない。

明智家も姿を見せない。

当初の戦術が脆くも崩れた。


 武田信虎が口を開いた。

物見から戻って来た武将に尋ねた。

「関ケ原城はこの辺りの国人衆全てを入れるほど大きいのか」

「まだ未完成ですが、かなりの広さです」

「そこの主将は」

「明智家の二番隊の隊長・武田貫太郎です。

本来は西濃城勤番なのですが、

関ケ原城も兼ねると聞き及んでいます」

 信虎は苦笑いした。

「武田貫太郎か、良い名だ。

武田に弱い奴はいない。

して、その兵力は」

「おおよそですが、一万を超えています。

近隣の西濃衆も駆け付けていますので、今後も増えると思えます」

「一万か、それでまだ増えるのか。

全てが城に収容できる訳はないな」

「はい、城の後方に陣取っています」

「その配置は」

「大雑把ですが東山道に三千、伊勢街道に三千。

城を盾にして両道を塞ぎ、美濃への侵攻を防ぐつもりと見受けました」

「状況次第では、こちらに出て来る事も有り得るか」

「はい、否定はできません」


 武田信虎は足利義輝に視線を転じた。

「公方様、こちらの策は露見していると考えた方がいいですな」

「朝倉や武田もか」

「そう考えた上で動かれた方がよろしいでしょう」

「内応すると伝えて来た国人衆は」

「本気で内応するのなら、何とかして連絡を寄越すでしょう。

それが全くないと言うことは、欺瞞でしょう」

 義輝は三白眼で信虎を見返した。

「欺瞞だと、許せぬ。

このワシより明智の小僧を選ぶのか。

国人風情が、ワシに盾突くとは・・・、叩き切ってやる」

 信虎は気にもしない。

他人事のように言う。

「しかし困りましたな。

小谷城に立て籠もられては、面倒ですな」

「何か誘い出す手立てはないか」

暑いよ、雨だよ、雷だよ、アップしただね。

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